税制優遇制度であるNISAの普及拡大が進んでいる。金融庁の「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」によれば、NISAおよびジュニアNISA口座の合計口座数はすでに1,000万口座を突破した。このNISAには、優遇制度をさらに有効活用するために「ロールオーバー」という仕組みがある。今回は、この「ロールオーバー」の仕組みと、そのメリットや注意点について考えてみよう。

そもそもロールオーバーとは

NISA,ロールオーバー
(写真=Rido/Shutterstock.com)

NISAの最大のメリットは、NISA口座を通じて購入した株式や投資信託などの運用益が非課税となることだろう。そして、ロールオーバーとは、この非課税期間(5年)が終了後、NISAを通じて購入していた金融商品を、翌年の非課税投資枠に移管することである。これにより、さらに5年間、非課税枠を利用することが可能となる。

仮に非課税期間の終了時までに、金融商品が値上がりして、NISAの投資上限金額である120万円を上回っていたとしても、ロールオーバーが可能な金額に制限はないため、その全額を翌年の非課税投資枠に移すことが可能となっている。

例えば、NISA口座内で株式を100万円分購入したとしよう。その後、非課税投資期間が終了するまでに、この株式が30万円値上がりしたとする。非課税期間終了時に、この先さらに株価が上昇すると期待できるのであれば、ロールオーバーすることで、運用益に課税されることなく、130万円全額を翌年の非課税投資枠に移すことが可能になる。

なお、ロールオーバーは「一般NISA」と「ジュニアNISA」のみに適用され、非課税投資期間が20年間の「つみたてNISA」は利用できないことに注意したい。

ロールオーバーのメリットと注意点

ロールオーバーすることのメリットは、投資によって得られた利益に課税されることなく、運用益をそのまま再投資に回せる点だろう。すなわち「複利効果」を生かしながら、資産を大きく増やせる可能性が高くなるのだ。複利効果に関しては、さまざまな金融機関がインターネットでシミュレーションツールを用意している。一度、そちらを参照していただきたい。

例:さわかみ投信「複利効果シミュレーション」
https://www.sawakami.co.jp/know/fund/simulation/compound_interest.php

その一方で、注意点もある。ロールオーバーを希望する場合、NISA口座を開設し、投資商品を購入した金融機関で設定されたNISA口座内で行うことになる。つまり、ロールオーバーの仕組みを利用できる金融機関はひとつだけということだ。仮に金融機関の変更を行っている場合は、NISA口座で買い付けた金融機関にNISA口座を戻す手続きをとらなければならない。

ロールオーバーした金額分だけ、翌年の非課税投資枠が削られるため、その分、新規で投資できる枠も少なくなる。例えば、一般NISAを活用するケースにおいて、非課税期間終了時に70万円分の金融商品をロールオーバーした場合、翌年の非課税投資枠は、一般NISAの非課税投資上限金額である120万円からロールオーバー分の70万円を引いた50万円のみが新規投資枠となる。

NISA口座を扱う金融機関によっては、非課税期間終了時にロールオーバーを選択しないと、投資している金融商品が、一般口座や特定口座といった課税口座に自動的に移管される。その時点で、投資の利益が出ていれば、課税される可能性が出てくるので注意しておきたい。

NISAのロールオーバーの仕組みやメリットと注意点について解説した。ロールオーバーのメリットである複利効果を十分に享受することを考えると、投資している金融商品のさらなる価格上昇が期待できる場合や、高配当銘柄を保有しており、安定的に配当金を得られる場合には検討したい。ロールオーバーすることで利益に課税されることなく、より長い期間にわたって再投資を実践できるだろう。NISAを利用していて、非課税期間の終了が迫っている方は、投資戦略のひとつとして、ロールオーバーの活用を検討されてはいかがだろうか。