今週の総括
★円高・金利安・原油安・金上昇のリスクオフのまま、米利下げ期待進行で少しだけ回復
今週の日経平均は、小動きの展開が続いたが、前週末比では232円高で引けた。
7日夜発表の米雇用統計が市場予想を下回ったことで、米利下げへの期待が高まり、米株価が少し上昇したものの、米中貿易摩擦を始めとする不透明感がくすぶる中では、こう着感が感じられた。先週に進行した円高、金利安、原油安、金高値という典型的なリスクオフの状況にも変化が見られず。
そんな中、日経平均もNYダウにつられて少し上昇したが、東証1部売買代金が6日から13日まで6取引日連続で2兆円を下回るなど、売買に手詰まり感が感じられる1週間だった。
業種別にみると、電気機器、鉄・非鉄、化学、精密などが強めの推移の一方、海運、石油、銀行、不動産、建設、電力・ガスなどが低迷した。円高が続く中でも輸出関連株が底堅い一方で、内需株は振るわず。TOPIXのグロース指数+1.3%に対し、バリュー指数+0.5%と、引き続き今週も、リスクオフモードの中でもディフェンシブ指向は感じられない。
来週以降の見通し
★米FOMC後に注目も、ジリ貧リスクに留意
日経平均想定レンジ 20,000~21,500円
来週の日経平均は、米利下げ動向次第で短期的に動くかもしれないが、再びジリ貧となる可能性がある。
目先の最大の注目材料は19日夜の米FOMC後のFRB議長会見だろう。利下げ実施もしくは利下げに対する前向きな発言があると、市場は好感する可能性が高い。しかし、金融市場は既に米利下げをかなり織り込んでいると考えられるため、上昇幅も限定的に留まる可能性が高い。そして忘れてはならないのは、利下げをするということは、以前よりも米景気が減速しているサインであることだ。
米景気が減速すれば、輸出関連産業は従来想定よりも業績が悪化する可能性があることになり、日米の金利差が縮小すれば円高もさらに進行する可能性がある。本来は株価は下落方向に圧力がかかりやすい。短期的に株価が上昇しても、すぐに再びジリ貧となる可能性が高いことに留意すべきだろう。
ホルムズ海峡でタンカー襲撃があり、懸念材料としてのイラン動向が再びクローズアップされている。月末にはOPEC総会もあり、原油価格が乱高下するリスクがある。原油価格は日本経済にも市場心理にも影響を及ぼすため、普段以上に注目しておく必要があろう。また、月末にG20があり、主要各国の駆け引きから関連報道が増え、株価が一喜一憂する可能性も高まっている。
コラム:徒然なるままに
「老後資産2,000万円」が事実と本来の趣旨から離れて独り歩きし、問題化している。
報告書は金融審議会市場ワーキンググループが3日に公表したもので、金融庁のサイトで閲覧できる。少子高齢化、核家族化・未婚率上昇による単身世帯増加、認知症の人の増加やライフスタイルの多様化といった社会の変化を解説し、家計調査などの既存の統計資料から、65歳世帯の平均値について試算している。
65歳の無職世帯では月5万円の赤字と試算しているが、次に65~69歳では男性の55%、女性の34%が働いている事実を示し、平均貯蓄額が2,129万円あり、その上で、働かずに30年生活するなら約2,000万円取り崩す必要があると試算している。
現時点の65歳は退職金などで貯蓄があり、働いている人も多いことを示していて、65歳全員が2,000万円不足して困っているとは書いていない。しかも、この数字は10年、20年前から大きくは変わらない既存の統計である。現状を説明しただけだ。
政府が「100年安心の年金」と言ったのは、高齢者世帯の収入の一部をカバーする現在の年金制度が100年持つことを言っていて(本当かは別にして)、国民の100歳までの生活を全額カバーするとは言っていないだろう。野党は、報告書も年金制度も理解せずに、問題を履き違えてトンチンカンなことを言っているように見える。
政府の「受け取らない」対応も、何年も前からみんなが知っている事実を否定する態度であり、お粗末に見える。この報告書は、生活スタイルの多様化や雇用流動化で退職金をもらう人も減る可能性もあげた上で、従来の標準化モデルの空洞化を指摘している。
多様化している以上、個人それぞれが自分のことを把握し、場合によっては資産形成も自発的にするよう、自助努力が必要であるとし、政府も制度をさらに整え、金融機関にもさらなる努力を促す。これが報告書の主旨だ。報告書を受け取らず、「無かった」ことにするなら、こうした制度改善方針も棄却することになる。
かなりまともな報告書だが欠点もある。平均値を使っていることだ。平均では60歳以上の平均貯蓄額は2,000万円超だが、人数別では1,000万円未満が多数を占める。しかもどの年代も一定割合の貯金ゼロがいる。これらの人に試算は当てはまらない。
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