中古マンションは物件額が新築マンションに比べて低く抑えられる。このため、新築投資よりも高い利回りが期待できると考えてる投資家は少なくない。だが入居者が集まらなければ元も子もない。中古マンションで入居者をしっかり集めるためには、快適な空間を作るリフォームが有効だ。ただしマンションのリフォームは自由にできるわけではなく、意外と制限が多い。投資マンションのリフォームに関して注意しなければならない点はどこなのだろうか。

リフォームが可能な範囲は「専有部分」のみ

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(写真=mojo cp/Shutterstock.com)

まず知っておきたい法律に「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」がある。これは、マンションのように複数の所有権が有されている一棟の建物に対して、その所有権の及ぶ範囲などを規定するものだ。同法は区分マンションの「専有部分」と「共有部分」を定めており、住人が自由にリフォームできる権利を有する部分は、専有部分に限定されている。大まかに言えば、居室は専有部分、廊下やエントランス、エレベーターなどは共有部分に該当する。

判断が難しいリフォーム不可の場所

マンションの中には、一見、専有部分か共有部分かの判別が難しく、リフォームの可否が分かりにくい部分がある。具体例を列挙しよう。

1)玄関ドア ドア前の廊下は共有部分

玄関ドアは居室に面しているので、専有部分ととらえがちだが、正確にはドアの廊下側は共有部分で、居室側が専有部分とされる。そのため、玄関ドアを交換するようなリフォームは難しく、マンションの管理組合との協議が必要になる場合が多い。関連して問題となるのが、玄関ドアのカギだ。旧型のカギは防犯性に劣るため、最新の技術を備えたカギに交換するのが望ましいが、古いドアは最新のカギが取り付けられないケースもある。そうなると、カギ交換のために、ドアごと交換せざるを得ないのだが、この場合も、マンションの管理組合との協議が必要になることが多い。

2)サッシ窓 防犯性を高めるために替えたいところだが……

サッシ窓も居室に取り付けられているので、専有部分と見なしてしまいそうだが、実は共有部分である。玄関ドアと同様、旧型の窓をそのまま使用するのは、防犯の観点から考えると危険な場合も多い。より優れた防犯性能を持つサッシ窓に替えたいところだろうが、これにもマンション管理組合との協議が必要になる。

3)ベランダ 他の部屋の居住者の避難経路にもなる

ベランダは、個々の居住者が専属的に使用しているため、専有部分とも思えるが、法律上は「共有部分」で基本的にリフォームはできない。なぜなら、ベランダは災害時に他の居住者にとっても避難経路となりうる部分だからだ。もし、玄関近くのキッチンで火災が起きて、玄関からの脱出が困難となった場合、居住者はベランダから隣の部屋との間仕切り板を破って脱出しようとするかもしれない。もし、リフォームでその避難に支障をきたせば大問題だろう。

4)管理規約で定められている部分 物件によっては床材など

各マンションで独自に「管理規約」が設けられており、その管理規約でリフォームに関する制限が定められている場合がある。例えば、「階下に音が響く可能性があるため、床材の交換・リフォームすることは禁止」といった具合だ。マンション購入時は、リフォームの制限事項だけでなく全般にわたり、必ず管理規約を確認するようにしよう。

5)構造的に不可能な部分 水まわりなど

最後に、居室内の専有部分であっても、建物の構造的にリフォームが施せない場所がある。特に浴室やキッチンといった水まわりは、水道の配管や電気設備の状況によって、別の場所に移せないことも多い。

中古マンションを割安な価格で購入し、リフォームすることで資産価値を高める方法は、不動産投資で有効な手法の一つ。しかしマンションのリフォームには、今回取り上げたようなさまざまな制限があることも知っておかねばならない。リフォームすることを前提に、投資マンションを購入する方は、事前に可能な範囲を十分確認した上で、具体的な計画を練る必要がある。