贈与税の非課税枠を利用して毎年、孫の銀行口座に振り込みを続けた。節税のつもりでやったことが思わぬ落とし穴になることがあります。「連年贈与」とみなされることがあるからです。普段あまり聞かない「連年贈与」とはいったい何でしょうか。

単年で110万円以下なら非課税

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(画像=Sunny studio/Shutterstock.com)

贈与税を節税するためのオーソドックスな方法は、「暦年贈与」における非課税枠を利用することです。贈与税には暦年(1月1日~12月31日)で110万円の基礎控除があります。したがって、贈与される金額が年間110万円以下であれば贈与税を納める必要はありません。

ただし、これは贈られる人1人に対する控除額ですので、贈る人が複数いて、基礎控除内に抑えたい場合は、合わせて110万円以内に収めなければなりません。もし非課税枠を超えて、例えば1,000万円を一度に贈与すると、基礎控除を受けたのちの890万円に対して贈与税が掛かります。贈与額によっては、高額になってしまいます。

そこで節税するには、一度に贈らずに暦年ごとに110万円以下に抑えて贈与する必要がありますが、それには注意しなければならない点があります。

おじいちゃんが贈ってくれたと思われたいために……

例えば、1,000万円を孫に贈与する場合、せっかく贈るのだから、おじいちゃんやおばあちゃんが贈ってくれたことをわかってもらうため、孫の誕生日に毎年100万円ずつ贈与していこうと考える方がおられるかもしれません。これなら非課税枠の110万円以内に収まっているので、節税にもなりそうです。

誕生日に孫の銀行口座に振り込めば、通帳にも振り込みの日付と金額が記録されるため、孫や子どもに祖父母から贈られたことを覚えてもらえます。

ところが、この節税対策が問題になることがあるのです。そのネックになるのが、「連年贈与」という定義です。

毎年同じ金額、時期なら同一贈与とみなされる

上記のように、毎年同じ時期に同じ金額を振り込むと、1,000万円を10回に分けて贈っただけの同一の贈与とみなされてしまいます。

国税庁ホームページのタックスアンサーにも「毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に関わる権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります」と記載されています。これが「連年贈与」と呼ばれる定義です。

つまり、1,000万円の贈与を分割で受ける権利を贈られたと解釈されるわけです。しかも銀行振り込みであれば、記録が残るだけに「連年贈与」の確固たる証明になってしまいます。

税務署に誤解されないための工夫とは

では、税務署に同一贈与と誤解されないためには、どうすればよいのでしょうか。
一番有効なのは贈与契約書を交わすことです。「家族の間で契約書なんて」と違和感を覚える方もおられるかもしれませんが、あとで贈与された人が困らないためにも必要なことです。

孫への贈与であれば、幼稚園入園や小学校の卒業祝い、高校の入学金など暦年ごとのイベントに合わせて契約書に記載すれば、1,000万円を意図的に分けて贈与したと誤解されずに済むはずです。もちろん、金額や贈与時期もその都度変える必要があります。

もう一点は孫のために祖父母が通帳を作ったとしても、印鑑とともに孫に渡して自由に使える状態にしておくことです。もし、通帳と印鑑を祖父母が保管し、振り込みだけを行った場合は「名義預金」とみなされる恐れがあります。孫が必要な時にすぐ使えてこそ贈与の意味があるということを心得ておかなければなりません。

可愛い孫の将来のために役に立ちたいという祖父母の思いが生かされるよう、「連年贈与」に注意しながら、家族に喜ばれる贈与を実現していただくことを願っています。(提供:相続MEMO


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