要旨
東京は地方に比べて多くの商店街や小売店舗が存在する。中小企業庁の「商店街実態調査」によると、東京都の商店街に属する店舗の数は全国で18.4万店あり、面積1km2あたりの店舗数を見ても22.6店と、他県を圧倒する数値となっている。商店街は街づくりや賑わいの創出にも貢献し、街づくりのソフトインフラ としての役割を果たしている。
一方、同調査によると商店街の課題として、「経営者の高齢化による後継者問題(64.5%)」が指摘され、多くは廃業の可能性を考えていると思われる。実際に、東京都によると商店街の数は2001年度から2016年度までの15年間で1割強減少している。
近年マンションは立地の良さや駅への至近性が重視されており、現存する商店街が多い駅前は容積率が高く、マンション適地となることが多い。
デベロッパーから見ると、商店街の店舗跡地に建てるマンションは高い収益性を見込むことができる。その理由の一つとして、エントランスホール等の共用部は容積率に算入されず、ほとんど全ての容積対象面積をマンションの各戸専用部分に使えることがある。
店舗の連続性は、法的規制の緩和により維持できる可能性がある。高層階のマンション部分が削られることがなければ、収支上は収益を生まないエントランスではなく、店舗にした方がよいと判断するケースも増えるであろう。
新たなマンション建設によるエリア人口の増加そのものは歓迎すべきことであり、培われてきた街づくりや賑わいの創出へと受け繋ぐことができれば街の活力はさらに高まると思われる。下町情緒ある商店街の活気が維持されることは新しい住人にとっても喜ばしいことであり、マンション価値の向上にもつながるだろう。