6月、S&P 500は1955年ぶりの上昇率となる6.9%高を記録した。同じく、ダウ平均株価は1938年ぶりの上昇率となる7.2%高、 ナスダックは2000年ぶりの上昇率となる6.9%高を記録した。
2019年の株式市場は好調となっており、年初来でS&P500は17.4%高、ダウ平均は14.1%高、ナスダックは20.66%高となっている。
ボラティリティ上昇
しかし、過去18か月間で見られた高いボラティリティには警戒すべきである。突然の下落によって、2018年第4四半期は20%安、5月には約7%安となった。
2016年の大統領選から2017年末の間、米主要株式指数がマイナスになったのは1か月のみであった。しかし2018年以降、S&P500とナスダックは計6か月でマイナスとなり、ダウ平均は計5か月でマイナスとなった。
6月末時点におけるS&P500の年初来のパフォーマンスは、4月末時点を下回っていた。今後、さらにボラティリティが高まる可能性も考えられる。
ボラティリティを上昇させる要因として、次のようなものが考えられる。
- 米中貿易摩擦
- 中東情勢の緊迫化
- 北朝鮮の核開発
- アルゴリズム取引
7月においては上述の4つの問題の内3つが一先ず保留となるだろう。その理由は以下の通りだ。
- 米国と中国は貿易協議の継続で合意した。中国製品への追加関税は見送られ、ファーウェイへの禁輸措置は緩和された。
- トランプ大統領は中東における米軍撤退を掲げており、米国はイランへの軍事攻撃を撤回した。
- トランプ大統領と金正日総書記は板門店で会談し、非核化へ向けた協議の再開で合意した。このことから北朝鮮を巡る懸念は弱まっている。
予期外の事象
一見2019年の株式市場は好調であるが、以下のように予想外の事象がいくつかある。
- 2019年第1四半期に比べて、第2四半期は軟調な上昇率となっている。
- 公益事業セクターが常にアウトパフォームしている。利下げ観測によって、同セクターの安定的な配当がより魅力的になったことを背景に、第2四半期のダウ公共株15種は13.7%高となっている。5月にS&P500が6.6%安となる中で、同セクターはわずか0.7%安であった。5月24日から6月26日までの間では5回最高値を更新している。
- マクドナルドは最高値を更新した。同株(NYSE:MCD)は上半期に17%高となった。6月28日は208ドルまで上昇した。
- アップルは年初来で25%高となったものの、2018年第4四半期の30%安を取り戻せてはいない。また、52週高値を15%下回って取引されている。
- 上半期、マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)はダウ平均を牽引した。第2四半期における同社はディズニー(NYSE:DIS)に次ぐパフォーマンスであった。
- マイクロソフトのみが時価総額で1兆ドルを上回っている。しかし、PERは30倍となっており、割高と言える。
好調に見える株式市場
今後の株式市場はどうなるのだろうか。ボラティリティを上昇させる要因(米中貿易や中東情勢、北朝鮮の核開発など)を最小化できるかどうかが重要である。
現在の低金利環境は株式にとって望ましいものである。世界経済減速への懸念から、米10年国債利回りは年初来でマイナス25%の2%となっている。米国経済は年率約3%で成長を続けており、不況は訪れそうもない。
5月の米失業率は3.6%となっており、10%を記録した2009年から64%減少している。米新規失業保険申請件数は、ピーク時の2009年3月から3分の2減となっている。
また、大企業は継続的に自社株買いを行っており、ROEを高めることで株価を下支えしている。2019年第1四半期の自社株買い金額は2058億ドルで、2018年第4四半期から7.7%減となった。しかし、前年同期比では、8.9%高となっている。また、第1四半期にアップルは231億ドルの自社株買いを行った。
しかし、株式市場に対していくつかの逆風もあるだろう。
- 米中貿易摩擦を背景に米製造業は軟調である。
- 小売業者はEコマースの台頭に苦戦している。ノードストローム(NYSE:JWN)は、S&P500は30.5%安、メイシーズ(NYSE:M)とコールズ(NYSE:KSS)は28%安となっている。
- 外需に依存している農業は苦戦を強いられている。大豆は年初来で3%高となっているものの、2012年末から3分の1下落している。(提供:Investing.comより)
著者:Charley Blaine