今週の総括
★NY市場にリスクオン傾向も感じられる中、売買も低水準のまま一進一退の展開
今週の日経平均は、狭い範囲での一進一退の動きに留まり、先週末比ほぼ横ばいで引けた。
先週末の米雇用統計が比較的強めの数字となったことで、一旦は米利下げ期待が後退し、米長期金利が上昇して2%台を回復し、ドル円レートも円安方向に動いた。その後、米FRB議長の議会証言を経て、米利下げ期待が再び高まり、株式市場ではNYダウが史上最高値を更新、ドル円も1ドル108円近辺の円高に戻った。ただし、米長期金利は2.1%台にさらに上昇、NY市場は原油価格も上昇するなどリスクオン傾向が感じられた。しかし日経平均は一進一退の動きのままで、東証1部売買代金も7月2日以降9取引日連続の2兆円割れとなるなど、NY市場の活気に付いていけない展開が続いている。
業種別には、原油価格上昇を受けて資源株が上昇、精密機器や、任天堂の影響が大きいその他製品も上昇した。一方で、運輸、機械、鉄・非鉄、電気機器、化学、建設、自動車、医薬品など内需・外需と関係なく幅広い業種が下落している。先週の上昇幅が大きい業種の下落幅が大きい印象も感じられた。
来週以降の見通し
★様子見が続きそう
日経平均想定レンジ 20,500~21,800円
来週の日経平均は、もうしばらく様子見かつジリ貧の展開が続く可能性がある。
市場の最大の材料となってきた米利下げ動向は、次回の米FOMC発表が31日であり、それまでは結論が見えてこない。今週までに小売を主体とした2月/8月期決算企業の決算発表が一巡したが、主要企業が数多く含まれる3月/12月期の1Q決算発表は24日頃からである。気になる米中通商摩擦も協議が再開されたばかりで、大きな動きはすぐには出てこないだろう。来週は米企業の決算発表が始まり、NY株式市場が動く可能性はあるが、国内株式市場全体としては、材料不足で様子見モードが続く可能性が高い。
先週の繰り返しだが、米国市場で期待されている利下げは米国景気が減速しているサインである。もちろん、利下げによる景気浮揚効果は期待できるが、そうなるには数ヶ月~半年のタイムラグが必要であり、その前に利下げが必要なほど減速していることを示す指標が先に出てきて、それがしばらく続く可能性の方が高い。今週の米国金融市場はリスクオン傾向が感じられたが、一方でリスクオフ時に上昇しやすい金価格が再び上昇しており、米市場はオンオフ両にらみながら、短期的に投機色が強めなだけな気もする。要注意な展開と感じる。
コラム:徒然なるままに
長野県諏訪に、今となっては世界でも数少ないオルゴール工場がある。90年代には世界シェア90%を占めたこともあるほどの名門である。現在は、低価格品の生産を中国に移管したりしたようだが、高級品は今も諏訪で作り続けているそうだ。
TVで紹介されたこともあるから、ご存じの方もいるだろう。この高級オルゴールの生産は、基本的には手作業である。しかも重要な工程は、経験年数10~20年を超えるベテラン職人が担当している。機械ではムリだそうだ。
例えば音源となる振動板にズラリと並ぶ櫛の歯のような弁と呼ばれる部分。これをミクロン単位で削って調律するのだが、音程はオシロスコープという測定器の表示を見れば簡単に分かるものの、「音色」は数字には表示できないそうだ。この音色を揃えるのが職人さんの技。この音色をつかむのに10年かかったそう。そうして出来上がった振動板を組み立てるのにも微調整が必要で、この作業は調律担当とは別のベテラン職人が担当しているそうだ。
このような事例は他にもある。今も生産されているアナログレコード用のレコード針。 針先の研磨や貼り付けは、顕微鏡を見ながらベテラン職人が手作業で行っている。ちなみにオルゴール職人もレコード針職人も女性がほとんどだそうだ。そういえば、食品工場での不良品引き抜き作業も女性が多かった気がする。
半導体製造装置などではミクロンよりさらに小さいナノメートル単位での加工をしており、さすがに人間にはムリだと思うが、一方で「音色」などの微調整などは機械ではマネできないという事実は興味深いと思う。「AIは人間の仕事を奪う」とよく言われているが、こういう話を聞くとそうではない気がして仕方がない。
観点は違うが、飲食店でタブレット端末で顧客が入力する方式にすると、オペレーションが効率化されて少ない人員でも運営できるようになるが、実は売上は減少することが多いそうだ。店員さんとの会話がなくなり、「もう1杯」という注文が激減するらしい。人間のできることと機械にできることは違うということだろうと思う。
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