昨日の海外市場では、トランプ大統領が中国との通商協議に関する合意までにはまだ相当の時間が必要であることを示唆し、必要となれば、残りの3,000億ドル相当の中国製品に対する輸入関税を課す用意がある、との見解を示したことにより、米長期金利が低下したことにより、ドル円は108円を下抜ける動きとなりました。また、ベージュブックでは、「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」と記されており、米中貿易摩擦が解決していない中でも、全般的な見通しはおおむね明るいとしています。ただ、このベージュブックの内容でも、昨日に関しては、米長期金利の低下を止めることができませんでした。

米国の債務上限問題では、ムニューシン米財務長官がペロシ米下院議長に対して、7月26日の米議会夏季休会入りの前の引き上げを要請していたものの、米下院が、トランプ大統領が民主党の非白人下院議員4人に対して「人種差別的な発言」をしたと非難する決議を可決したことで、難航する可能性が高まっています。ムニューシン米財務長官は、米国政府が9月初めにはデフォルトに陥るリスクがあるとの認識を示しており、状況によっては、ドル売り材料として意識されてくるかもしれません。

英国の保守党党首は、ほぼジョンソン前外相が勝利を収めそうですが、欧州市場では英国の「合意なき離脱」を巡る懸念からポンド売りが優勢となり、一時1.23831ドルまで下落し、2017年4月以来約2年3カ月ぶりの安値を付けました。ジョンソン前外相は、EUとの合意があろうがなかろうが、10月31日に離脱する構えを崩していません。既に安値圏まで下落しているポンドですが、ジョンソン前外相の見解次第ではまだまだ下値を模索する動きになりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

IMF(国際通貨基金)が年次報告書の中で「ドルは6.0~12.0%程度過大評価されている」との判断を示したことで、トランプ大統領がドル高抑制をアピールするツイートが懸念されており、25bpの利下げがほぼコンセンサスになっている次回FOMCの見解が50bpになるのではないかとの思惑が強まれば、一気にドル売りに傾斜する可能性がありますが、21日の参議院選挙の投開票に向けて本邦勢は当然のことながら、海外勢も取引を手控えており、余程のことがない限りは、値動きは限定的なものになりそうです。

英国の保守党党首選の予定としては、7/23に党首が決定し、7/26-9/2まで議会が夏季休会に入ります。9/21-25が労働党党大会となり、10/17-18がEU首脳会議、英国のEU離脱期限前の最後の会議となり、このEU首脳会議が重要なポイントになりそうです。依然として、離脱期限を再度延長したうえで、総選挙あるいは再度の国民投票となる可能性はありますが、ジョンソン前外相が「合意なき離脱」ありきで物事を進めているため、状況次第では再度ポンド急落の可能性がありそうです。

ユーロドル、方向性は下落だが、短期的には買い戻しが強まりそう

決してユーロの基調が強いわけではないですが、それ以上に調整のドル売りが入っていることで、目先ユーロドルが反発しています。1.1200ドル付近では、一定の底堅さが確認できることも、上昇をサポートする要因になっています。引き続き、1.1210ドルでのロングは継続、利食い幅は小さいですが1.1250ドルでの利食い、損切りは1.1190ドルに設定します。

海外時間からの流れ

注目されていた豪雇用統計では、雇用者数変化が前回の4.23万人増、予想9,000人増に対し、結果は500人増となり、一見悪い内容に見えますが、正規雇用者数変化が前回の2,400人増から2.11万人増になっていたこともあり、どちらかというとポジティブに捉えられました。ただ、年内の利下げを覆すような内容には至っておらず、大きな動きには発展していません。

今日の予定

本日は、英・6月小売売上高指数、米・7月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数、南ア中銀政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。