前日については、主要な経済指標が予定されておらず、イベント待ちの動きが主導しました。黒田日銀総裁が、ワシントンでの講演で「しっかり強力な金融緩和を続けていく」「世界経済の不確実性が日本の経済や物価に及ぼす影響を十分注視」などと述べたものの、影響が限定的であったことも、マーケットが明確にイベントを待っていることを示唆しているのだと考えられます。本日は、英保守党党首選の党首の発表、25日にはECB理事会、30日の日銀金融政策決定会合や31日のFOMC結果公表など、あまりにもイベントが控えていることで、上下に動きづらい地合いになっています。
米国の債務上限問題については、ぺロシ下院議長とムニューシン財務長官が、週末を挟んで協議を行い、本日の東京時間に、トランプ大統領が債務上限問題で合意したと発表したことを受け、ドル円は108円台を回復しています。先週の時点でも、両者は合意がほぼ近いと述べていたこともあり、一定の期待感はありましたが、明確に合意したとの報道を受け、マーケットに安心感が広がっています。また、中国国営の新華社の報道によると、米国と中国の政府間協議がまもなく再開される見通しとのこともあり、ドル円については底堅い動きが期待できそうです。
トランプ大統領は、自身のツイッターを通じて、「インフレが存在しないにも関わらず、見当違いのFRBのせいで、米国は他国に比べ高い金利の支払いを強いられている。FRBのこれまでの利上げは行き過ぎだった。FRBは政策運営に大きな失敗をおかした。二度と失敗するな。」と述べており、月末のFOMCにおける更なる利下げを求めました。ただ、ブラックアウト期間(金融政策に関する発言を控える期間)前に、25bpの利下げの可能性を多くのFRB高官が示唆していたこともあり、50bpの利下げにはならない公算です。
今後の見通し
本日は、英国の保守党党首選の結果が発表される予定になっており、事前予想通り、ジョンソン前外相が勝利するものと思われます。既に、ジョンソン前外相が次期首相になるというところまでは織り込まれていると思われますが、「合意なき離脱」に関する発言、今後のブレグジット交渉での見通しなどを発表する機会があれば、ポンドは乱高下するものと思われます。ダンカン外務担当閣外相は既に辞任し、ハモンド財務相はジョンソン氏が首相に選ばれた場合には辞任すると表明しています。その他にも、6-7名辞任するのではないかと言われており、組閣人事にも注目が集まります。
英国立経済社会研究所(NIESR)は、報告書の中で、英国経済が低迷しており、景気後退に陥る確率が25%あるとの見方を示しました。また、NIESRは、「合意なき離脱」の可能性がおよそ40%であることを考慮すると、英国の経済成長に対するリスクは下方に大きく傾斜しているとも指摘しています。既に下落バイアスがかかっているポンドの状況を鑑みると、次期首相発言で「合意なき離脱」への織り込み度が高まれば高まるほど、ポンドは下値を模索する動きを強めそうです。
1.2500ドルを割り込んだ以上、ポンドは下落速度を速めそうだ
ポンドドルについては、1.2560ドルが戻り目途として意識されていたため、この水準まで戻りを待ちたいところでしたが、大きな戻りなく下落してしまったこともあり、1.2500ドルを割り込んでしまった時点で成行のショート戦略です。利食いについては、1.2420ドル付近、損きりについては、従来の戻り目途である1.2560ドル上抜けに設定します。
海外時間からの流れ
これまで底堅い動きを見せてきた南ランドですが、本日から開催される国会にて2019-20年、2020-21年の会計年度の予算を立てる予定になっています。ムボウェニ財務相は、国営企業エスコムに対して、特別政府歳出予算を決定すると発言しており、救済策の内容次第ではランドが上下どちらかに振れる可能性がありそうです。
今日の予定
本日は、米・6月中古住宅販売件数などの経済指標が予定されております。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。