正しいのはデータより現場を知る店頭スタッフ
しかし、データが大量に収集できるようになったものの、それを使いこなせていない企業も多くあります。
そう言うと、すぐに「データサイエンティストが不足している」という話になりがちなのですが、データを分析して、その結果を鵜呑みにするのは危険です。データが本当の顧客の行動を反映していないことが、往々にしてあるからです。
例えば、私が以前勤めていたキタムラでは、七五三や小学校入学などの記念日に写真を撮影する『スタジオマリオ』を運営しています。その顧客は、Tカードのデータによると、子供の母親である20~40代の女性が中心でした。
では、その人たちを対象にした広告メールを送れば効果的かというと、そんなことはありません。本当にお金を出しているのは、子供の祖父母だからです。広告メールを母親たちに送るにしても、プリントアウトして祖父母に渡してもらえるような体裁にしたり、紙のDMを送るなどの工夫が必要です。
こういったことは、実際に店頭に立っているスタッフにとっては、当然のことです。しかし、オフィスでデータを分析しているだけでは気がつきません。
データが示すものと店頭スタッフの経験知が一致しない場合、正しいのは常に店頭スタッフだと、私は考えています。データをもとに施策を打つときは、現場の声とすり合わせることが不可欠です。
さらに言えば、AIが進化すれば、データ分析の担当者は必要なくなるでしょう。しかし、肌感覚で顧客のことを理解している店頭スタッフの重要性は変わりません。
ネット通販が普及していますが、店舗はこれからも重要な位置を占め続けます。ネットで商品を注文しても、受け取りは、最寄りのコンビニなど、店頭でしたいという人が多いからです。その最大の理由は、受け取るタイミングを自分で決められること。買い物の利便性を上げるためには、顧客の可処分時間の有効活用という点にも着目するべきです。