どんな社員を評価するか。人事制度もマーケティングの一部

顧客一人ひとりの行動がわかるようになったことで、購買を促す施策の打ち方も変わりました。すべての顧客に対して同じ施策を打つのではなく、個々の顧客に対して最適な施策を打てるようになったのです。

これも、店頭スタッフが常連客と初めての顧客とで対応を変えるのと同じことです。ただ、データによって、「○度目に購入する顧客」「○年ぶりに購入する顧客」などと、より細かく購買行動を把握できるようになったわけです。

性別や年齢などの属性によって顧客を区分することがよくありますが、属性よりも過去の購買行動によって区分したほうが効果的であることもわかっています。

何度も頻繁に買ってくれる顧客に対して販促をかけたり、感謝を込めて特典を設けたりするほうが、新規顧客を開拓するよりも効率が良いですし、ロイヤルカスタマーに手厚い還元をするのは理に適ってもいます。

どういう顧客に対して、どのような対応をすべきかがわかれば、商品開発も、それに合わせて行なわなければなりません。

生産部門にも、昔のように「ロットを大きくして商品1個当たりの原価を減らす」という考え方をするのではなく、エリアごとの顧客に合わせて必要な数だけを供給することが求められます。

人事部も、マーケティングと関係します。

例えば、店舗ごとに競わせ、売上げの高い店舗を高く評価する制度にしていると、顧客が求める商品が店頭にないとき、他の店舗の在庫を調べずに、自店にある別の商品を勧めるということが起こってしまいます。良い商品は、お互い、渡したくなくなるからです。

顧客が繰り返し自社の商品を購入する、つまり、「LTV(Life Time Value)」を最大化するためには、他の店舗の在庫も調べて顧客に伝え、希望すれば取り寄せもするべき。そうした対応をしているかどうかを、評価のポイントにするべきなのです。

データは、顧客についてだけでなく、スタッフについても取れますから、売上げだけでなく、顧客満足を上げてLTVを上げたことを、データに基づいてきちんと評価すること。スタッフの管理を強めるためにデータを使うのではなく、評価するために使うのだということを丁寧に説明することも欠かせません。

このように、マーケティングとは、企業の内部の組織と一体になった戦略なのです。あなたがどんな部署にいようと、マーケティングの視点を持って仕事をすることは欠かせません。

逸見光次郎(へんみ・こうじろう)
オムニチャネルコンサルタント
1970年、東京都生まれ。学習院大学卒業後、〔株〕三省堂書店を経て、99年にソフトバンク〔株〕に入社、イー・ショッピング・ブックス〔株〕(のちの〔株〕セブンネットショッピング)立ち上げに参画。2006年、アマゾンジャパン入社。07年、イオン〔株〕入社。11年、〔株〕キタムラに入社し、オムニチャネル推進に従事。その後、〔株〕ローソンを経て、独立。著書に『デジタル時代の基礎知識「マーケティング」』(翔泳社)がある。《取材・構成:林 加愛》(『THE21オンライン』2019年6月号より)

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