前日については、注目されていたECB政策金利では、大方の予想通り据え置きとなりましたが、近い将来の利下げを示唆したこともあり、9月のECB理事会では利下げに踏み切るのでないかと考えられます。ただ、マーケットでは7月の利下げを40%程度織り込んでいたこともあり、ファーストアクションとしては、ユーロ買いで反応しました。声明文では、政策金利を来年半ばまで現行水準に据え置くというこれまでの方針を撤回し、政策金利を2020年半ばまで、現行水準またはそれを下回る水準にする、と言明しました。
ドラギECB総裁の定例会見では、「ユーロ圏経済は依然強さが残っているものの、先行きの見通しは製造業を中心に悪化の一途を辿っている。製造業中心の国の経済見通しも悪化に歯止めがかかっていない。」と発言しています。独・IFO期待指数は92.2となり、2009年以来の低水準となり、景況感指数も95.7に悪化しているため、ドイツ経済が景気後退に陥るリスクが依然として根強く、ドイツ経済が著しく回復しない限りは、ECBの利下げ路線は継続するかもしれません。
また、トルコ中銀政策金利においては、現行24.00%から250bp利下げ予想でしたが、結果は425bp利下げの19.75%になりました。400bp以上の利下げはネガティブサプライズではありましたが、声明内容は経済見通しに対して非常にポジティブなものであり、今回の利下げはインフレの改善によるものとし、国内景気を押し上げるとの見解を示すとマーケットはすぐさまリラを買い戻す動きが強まり、さらに今後の利下げに言及したなかったことも、マーケットのリラ買いを誘発したと考えられます。利下げ幅自体はサプライズではありましたが、景気後退・インフレ高というスタグフレーション状態における利下げ措置ではなく、インフレの改善により景気をさらに押し上げるための緩和措置と捉えられたようです。
今後の見通し
英議会で行われたジョンソン英首相のBrexitへの見解、および、質疑応答については、引き続きEU離脱に関する公約を厳守すると強調したものの、EUとの合意が成立しようがしまいが離脱を実行すると明言しました。また、合意が成立しない場合の状況に備えて、「ターボ・エンジン」の準備をしておくとも発言しており、この「ターボ・エンジン」が何を指すのかは不明ですが、推測では「合意なき離脱」ではないかと考えられます。
ジョンソン英首相が就任して以来、メイ政権で閣僚となっていた29名のうち、すでに18名が辞任しています。当初の6-7名予想を大きく上回る数字です。新閣僚は、明確にハード・ブレグジット寄りの布陣となっており、ジョンソン英首相が暴走気味に物事を進めても、歯止めをかける人がいないという点が気がかりではあります。EU側はジョンソン英首相の要求を早々に一蹴しており、EUとの合意の可能性は低いと考えた方がよさそうです。また、組閣は着々と進んではいますが、総選挙となる可能性も十分考えらえます。
昨日発表された米・耐久財受注は市場予想+0.7%に対して+2.0%と大幅に改善が見られています。企業心理が最近の数ヵ月で悪化していたため、不安視されていましたが、非常に強い数字をはじき出しました。小売売上高が堅調に推移し、労働市場も強い現状を踏まえると、国内最終需要は貿易面の不確実性に直面いますが、来週のFOMCでは保険的な意味合いでの25bp利下げが落としどころになりそうです。
ECB理事会ではユーロドル1.11ドル割れならず
注目のECB理事会後の声明では、ファーストアクションは1.11ドル割れを試す動きがありましたが、その後はユーロが買い戻され、1.1160ドルショートは、依然として保持のままです。ただ、1.12ドルがレジスタンスとして機能していることもあり、再度1.11ドル割れの方向に動くと考えています。1.1160ドルでのショート、1.1200ドル上抜けを損切りとし、利食いについては、1.1100ドル下抜けを想定し、1.1060ドル付近に設定します。
海外時間からの流れ
ユーロが買い戻された一番の要因は、「今日は利下げについて議論しなかった」「利下げなら影響を緩和する措置も同時に打ち出す」「利下げの場合の利下げ幅や資産購入について議論せず」とドラギECB総裁が発言したことが全てです。過度な早期利下げ観測が後退しましたが、利下げ路線が打ち消しになったわけではなく、あくまで先延ばしになったというのが重要な点かもしれません。当面、ユーロの買い戻し場面は戻り売り戦略が機能しそうです。
今日の予定
本日は、米・第2四半期GDP(速報値)/第2四半期個人消費(速報値)/第2四半期GDP価格指数(速報値)/第2四半期コアPCE(速報値)などが予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。