前週末発表された経済指標として、米・第2四半期GDP(速報値)(前期比年率)が市場予想+1.8%に対して+2.1%、米・第2四半期個人消費(速報値)(前期比)が市場予想+4.0%に対して+4.3%、米・第2四半期GDP価格指数(速報値)(前期比)が+2.0%に対して+2.4%となり、ドル買いを強めました。年初に勢いが弱かった個人消費変化率においても、市場予想を上回る数字を出し、第1四半期に鈍い動きを示した純輸出と在庫が反転したことも成長を支援しました。
ただ、消費需要が堅調だった一方で、企業の設備投資は弱い結果となりました。先行きについては、純輸出と在庫は反転し、経済成長の足かせになると考えられます。国内経済の伸びが鈍化している上、財政面の刺激も効果が薄れつつあり、米中貿易戦争の不確実性も企業の設備投資にとっては逆風になると考えられます。今回のGDPデータは消費需要の強さを示していた一方で、貿易政策の不確実性を映して設備投資は停滞していることを示したため、ドル買い一辺倒の動きには歯止めがかかっています。
引き続き、FOMCが31日の会合でFF金利を0.25%引き下げると考えられますが、FRBは「持続的な景気拡大」を維持する考えを強調する可能性が強そうです。また、具体的な数値に言及することを避けながらも、数ヵ月先の追加利下げの可能性を示唆するのではないでしょうか。ただ、これまでの経済指標の結果を考えると、0.50%の利下げの可能性は大幅に後退したと思われます。
今後の見通し
ドル買いをサポートした要因として、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が「ホワイトハウスはいかなる為替介入も排除した」と述べたことがあります。ただ、「大統領が懸念しているのは、他国が自国通貨を操作して下落させることによって、短期的かつ一時的な貿易上の優位性を得ようとしていることだ」 とも述べています。トランプ大統領が「(ドルについて)行動を起こさないとは言っていなかった」とも述べており、ドル売り介入を積極的に行う可能性は低下しましたが、完全にドル売り介入を排除できたと考えるのは難しいかもしれません。
ジョンソン新英首相は、EUのユンケル欧州委員長と電話会談を行い、有利な条件でのEU離脱協定を求めたものの、ユンケル欧州委員長は、メイ前首相とEUが合意した離脱案が最善で唯一の案であると回答しました。ジョンソン首相は、議会演説の中でEUと合意が成立しようがしまいが、英国は10月31日に必ずEUを離脱すると強調したこともあり、合意なきEU離脱の可能性が高まっています。
ジョンソン首相は、首相就任後の組閣作業で、29名の閣僚のうち、メイ政権で閣僚だった18名が辞任しました。新閣僚の中では、ラーブ氏が外相に就任、2016年の国民投票の際に、ボリス・ジョンソン氏とともにEU離脱キャンペーンを先導したマイケル・ゴーブ氏は内閣府担当大臣となりました。今回の閣僚メンバーはEUとの合意成立あるいは不成立にかかわらず、10月31日のEU離脱を支持する陣容であるため、ポンドのバイアスはショートに傾いているを考えられます。
1.12ドルレジスタンスが続く限りはユーロショート戦略
1.11ドル付近では下値の底堅さが確認されますが、反面、1.12ドルでは上値の重さも確認できます。ただ、テクニカルだけでなく、ファンダメンタルズ要素を加味すると、再度1.11ドル割れの方向に動くと考えています。1.1160ドルでのショート、1.1200ドル上抜けを損切りとし、利食いについては、1.1100ドル下抜けを想定し、1.1060ドル付近に設定します。
海外時間からの流れ
今回のFOMCでの0.50%の利下げの確率は一気に低下していますが、6月のNY連銀米国景気後退確率指数が32.9%まで上昇しており、30%を超えた場合、過去7回のリセッション(景気後退)の先行指標となっていることもあり、今後、リセッション入りの可能性が示唆されれば追加利下げの思惑が強まる点は注意が必要かもしれません。
今日の予定
本日は、主要な経済指標が予定されていません。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。