今回のFOMC最大のポイントは、メンバーによる投票結果と、パウエル氏の記者会見となる。
シナリオ1
もし25ベーシスポイントの利下げが満場一致となり、パウエル氏が更なる利下げについて何も言及しないこととなれば、ドルは急騰するだろう。最大の恩恵を受けるのは USD/JPY、 USD/CHF 、 EUR/USDの3つとなるだろう。このシナリオ通りに進んだ場合、ドル円が109.50円を超えることも十分に考えられる。
シナリオ2
もし2人以上のFOMCメンバーが更なる金融緩和を主張し、パウエル氏が利下げの余地を残すという結果となれば、ドルは急落し、ドル円は107.50円を割る事となるだろう。
シナリオ3
もし今回の利下げ幅に対して異議を唱える人間がいるにも関わらず、パウエル氏が更なる利下げについて言及しない場合、その異議が利下げ反対のものなのか、更なる利下げを求めるものなのかによってドルの反応は変わってくるだろう。また経済見通しが不確実で、FRBが今後の方針を固めていないため、2日に発表される米非農業部門雇用者数(7月)も、市場に大きな影響を与えることとなるだろう。
世界的金融危機となったリーマンショック以来初めて、FRBは25ベーシスポイントの利下げを行うことになる。6月の金融政策発表後、市場は利下げ観測を後退させたものの、利下げそのものは想定通り行われるだろう。25ベーシスポイントの利下げは既に確実視されているため、仮にそのような結果が発表されたとしても、市場の反応は小さいものとなるだろう。それよりも注目するべきは、メンバーの投票結果とフォワード・ガイダンスだ。今回行われるであろう利下げが、今年行われる最後のものなる可能性は十分存在する。6月のFOMCでは、金利政策は今後の経済指標の結果によって左右するだろうとされた。下表を見れば明らかな通り、製造業及びサービス業は減速したものの、6月の非農業部門雇用者数は大きく反発した。またコア小売売上高も上昇しており、米株価は史上最高値を更新している。米国の多くのFOMCメンバーは25ベーシスポイントの利下げに対する支持を表明しているものの、同時に今回の利下げが予防及び保険であるという見方をする者も多数存在する。もし利下げの意図が保険としてのみであるのであれば、現在FRBが利下げの必要性を確信する段階に至っていない以上、追加の利下げが行われる蓋然性は低いと言えるだろう。
ただしFRBが更なる利下げが行う余地を残す可能性も十分に存在する。先月のドットプロットによると、少なくとも7人のFOMCメンバーが50ベーシスポイントの利下げを支持したことが明らかになっている。6月の消費者物価指数が1.6%であったこと、また7月の雇用者数の鈍化が見込まれていることを踏まえると、25ベーシスポイントの利下げが必須であることは明らかだ。ただこのような事態が起こる原因となった不確実性は、今後も経済に悪影響を与える可能性がある。米中貿易協議に大きな進展は見られず、事業投資は減速を続けている。特に中国の対外直接投資は90%もの減少を見せている。また需要の減少やサービス業の低迷の中、米製造業景気指数は2年8ヶ月ぶりの低水準となっている。米中貿易戦争において、今後2-3ヶ月の内に両国が合意に至る可能性は極めて低く、依然として続く不確実性は今後も貿易及び投資活動の抑制を続けることが予想される。貿易交渉が完全に破綻することとなれば、更なる利下げが必要となってくるだろうが、停滞する状況が続くこともまた更なる利下げへと繋がる可能性がある。従ってFRBが更なる利下げの余地を残す必要性は高く、また今回のFOMCでパウエル議長がそのような方針を明らかにすることも十分に考えられる。(提供:Investing.comより)
著者:キャシー リアン