国債の利回り低下などにより、上場株式や債券といった伝統的資産のみで十分な収益を獲得することは難しくなっている。このような状況で、非上場株式への投資(プライベートエクイティ投資)や不動産投資といった非流動資産投資は有望な投資手法となり得る。非流動資産投資は中長期的に高い収益の獲得が期待できることに加え、伝統的資産との分散投資効果が得られるなどの利点があるためだ。このような非流動資産の特徴や分類を紹介したい。

非流動資産投資
(画像=PIXTA)

まず、代表的な非流動資産投資とその特徴について説明する。非流動資産投資は投資対象とする資産によって「プライベートエクイティ投資」、「不動産投資」、「インフラ投資」に大きく分類することができる(図表1)。

プライベートエクイティ投資には、経営を積極的かつ中長期的にサポートして企業価値の向上に貢献し、株式公開(IPO)、第三者への譲渡、自社株買いなどの方法で最終的に保有株式の売却を行う「バイアウト投資」や立上げ期のベンチャー企業へ投資する「ベンチャー投資」などの投資手法がある。こうしたプライベートエクイティ投資は企業価値の向上などにより上場株式と比較して高い収益が得られる可能性がある。しかしながら、上場に至らない場合など、保有株式の売却ができない場合、資金の回収が困難となるおそれがある。不動産投資は実物不動産に投資し、賃料収入や売却益などから収益を得る。安定的な収益やインフレヘッジ効果が期待できるが、災害などによる物件価値の毀損などのリスクがある。インフラ投資は空港、発電所などのインフラ施設に投資し、その運営収入を得る。こうしたインフラ施設の事業環境は安定的な場合が多く、安定的な収益の獲得が期待できる。

非流動資産投資
(画像=ニッセイ基礎研究所)

次に、非流動資産投資の実績リターンをみてみたい。図表2はリーマンショック直前の2007年12月末から2018年12月末までの非流動資産投資、グローバル株式、ヘッジファンド投資の代表的指数の累積リターンを示したものである。非流動資産投資全体やプライベートエクイティ、インフラ投資はリーマンショック時のドローダウンは小さく、その後も安定して収益を獲得している。不動産投資はリーマンショック時のドローダウンは比較的大きかったものの、その後は安定して収益を獲得している。ヘッジファンドはリーマンショック時のドローダウンも比較的小さく安定的に収益を獲得している。しかし、直近のリターンはやや伸び悩んでいる。

非流動資産投資
(画像=ニッセイ基礎研究所)

非流動資産投資は長期的には安定的な収益が獲得可能であることを示した。しかしながら、非流動資産投資では下記のような伝統的資産と異なる点に留意して投資を行う必要がある。

・長期的な資金管理の必要性

投資先企業の経営に積極的に関与する投資戦略の性質上、投資が完了するまでに10年程度の投資期間を要する。加えて、投資家は原則的に投資期間中の解約はできない。このため、長期的な資金管理が必要となる。また、投資家は一定の投資金額を運用会社と合意した後に、運用会社が資金を必要とするタイミングで資金の払い込みを行う。このため、実際の投資がすぐには開始できない可能性がある。

・リターンの期間構造

ベンチャー投資や開発案件に投資するインフラ投資等では、投資開始から間もない期間はマネージャーへの報酬や失敗案件の償却などによりリターンはマイナスとなる場合がある。しかし、4~5年目以降に企業経営の改善に成功した場合、リターンが改善する。このようなリターンの期間構造を「J カーブ効果」と呼ぶ。稼働済施設に投資するインフラ投資や不動産投資等ではこのような特徴はみられにくい。

・投資対象資産の価格の取り扱い

上場株式などと異なり、非流動資産は日々公表される時価は存在しない。このため、非流動資産投資は投資期間中の短期的な時価変動による影響を受けづらい。ただし、最終的なリターンは投資対象資産の購入・売却時の経済状況や金融市場動向の影響を受ける。

ここまでで説明した通り、非流動資産投資は伝統的資産と異なる収益源泉や特徴を持つ。非流動資産の特徴や投資を行う際の留意点を認識し、適切に非流動資産を組み入れることで収益の獲得や伝統的資産との分散投資効果を得ることができる可能性がある。

原田哲志(はらだ さとし)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員 http://www.nli-research.co.jp/

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