不動産業界の中で注目を集めているのが、コワーキングスペースです。2018年にコワーキングスペース世界最大手のWeWorkが上陸したことも、コワーキングスペースの注目度をさらに高める一因となりました。働き方改革が叫ばれる中、今後、コワーキングスペースはどのように成長していくのでしょうか。ビジネスモデルの観点から解説します。

拡大するコワーキングスペース市場

WeWork,コワーキングスペース
(写真=Jacob Lund/Shutterstock.com)

不動産の活用方法として、コワーキングスペースが注目されています。世界的に市場規模は拡大しており、2017年時点で全世界にあるコワーキングスペースの数は約1万3,800人です。背景には、ギグ・エコノミー(フリーランスや短期契約などによる働き方)の増加やスタートアップ企業の増加、Wi-Fiさえあればどこでも働けるといったノマドワーカーの登場などがあります。

もちろん、日本でも市場は拡大しており2018年6月末時点で都心5区のコワーキングスペースの累計面積は3万2624平方メートルと、2017年の1万6902平方メートルに対し、約2倍に増えています。WeWorkの上陸もあり、コワーキングスペースの市場は、日本でも急速に拡大しているのです。今や、最も注目度が高い不動産の活用方法の一つだといえるでしょう。

コワーキングスペースは景気に敏感?

今後もコワーキングスペースは拡大していくのでしょうか。コワーキングスペースのビジネスモデルの観点から考えていきましょう。コワーキングスペースのビジネスモデルは、「不動産を借り(もしくは買い)、それを所有者に貸す」ということです。提供しているのがワーキングスペース、対象が法人(もしくはそれに準ずる個人)というだけで、流動化ビジネスには変わりありません。

借りる側のメリットを考えてみましょう。不動産を借りる側は、固定費を払わずビジネスを行うスペースを確保することができるため、一番のメリットになります。逆にいうと、こういった人たちは「固定費を払うほどは稼げていない人・法人」です。こういった人たちは、景気が悪くなり仕事が少なくなったときに、まず変動費を削ります。

オフィスを借りていた場合、オフィスを解約するのは景気が悪くなってもなかなか難しいものがありますが、「コワーキングスペースを利用しない」ということは簡単です。つまり、コワーキングスペース事業自体は、非常に景気に左右されやすいものであるといえるでしょう。今は、景気はまだ過熱傾向ですが、今後の状況次第では一気に悪化する可能性があることも考慮しておかなければいけません。

コワーキングスペースは投資対象として最適か?

コワーキングスペースやコワーキングスペースを運営する企業は、投資対象として適切でしょうか。上記のように、コワーキングスペースは景気の波を受ける可能性が高いといえるでしょう。そのため、景気上昇期には、高いリターンを得ることができるかもしれません。しかし、景気が悪いときにそのコワーキングスペース運営企業が不動産を取得して事業を行っていたとしたらどうでしょうか。

その時点では、厳しい経営を強いられる可能性もあります。短期で投資し、回収するのにはいいかもしれません。しかし、長期投資という観点で見ると厳しい期間があることをリスクとして認識しておくことが必要です。

コワーキングスペースは、景気が悪化したときに注意が必要

コワーキングスペースは、「新しい働き方」が叫ばれる中で急速に市場を拡大しています。しかし、世界的に景気がいいことが背景になっていることを忘れてはいけません。逆にいえば、景気が悪化し短期契約やフリーランスなどの仕事が少なくなったときに、本当にコワーキングスペースが生き残っていけるかが試されるのではないでしょうか。(提供:ビルオーナーズアイ