空室が出たときのテナント募集には力を入れても、「現在入居しているテナントを維持する対策はあまり考えていない」というオーナーは多いかもしれません。テナントの退去を防止することが、安定した経営を続けるポイントです。そこで、本記事では安定したビル経営を行うためにテナント退去を防止する方法を6つ紹介します。
新規顧客の獲得は既存顧客の5倍コストがかかる
マーケティングの分野では、「新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかる」という「1:5の法則」が知られています。オフィスビルや店舗などの事業用物件にとっては、これから入居するテナントが新規顧客で、現在入居してもらっているテナントが既存顧客です。コストが5倍かどうかは状況によって異なります。
しかし、空室を新規テナントで埋めるよりも、既存のテナントに居続けてもらう方が、気苦労なく安定した経営ができることは確かでしょう。では、既存のテナントに長く継続して入居してもらうために、何ができるのでしょうか。具体的に、次の6つの方法を確認してみましょう。
1.物件の実態に合った清掃回数を設定
2.物件運営に関するルールをテナントに徹底させる
3.日常のクレームには素早く対処
4.周辺ビルの状況を把握して適切な賃料設定をする
5.入居審査で優良テナントを選ぶ
6.顧客満足度調査など、当たり前のことをやる
1.物件の実態に合った清掃回数を設定
たとえば、オフィスビルを経営しているとしたら、管理状態を良好に保つのは当然のことといえます。そのためには、掃除を適切な回数で実施することが重要です。掃除の回数は、コストを大きく左右しますから、できるだけ減らしたいと考えてしまうオーナーもいるかもしれません。しかし、掃除の回数を減らせばゴミがあちらこちらに落ちていても、そのまましばらく放置されている状態になりがちです。
そのような建物ではテナントも使っていて気持ちのいいものではありません。適切な頻度で掃除を実施することが大切です。
2.物件運営に関するルールをテナントに徹底させる
物件運営に関するルールを、全テナントにきちんと徹底してもらうことも大切です。なぜなら、「全館禁煙なのに、非常階段でタバコを吸っている」「決められた入退館時間を守っていない」など、ルールが守らない利用者がいると、ルールを守っている他のテナントが嫌な思いをするからです。館内規則や注意事項を紙に書いて貼り出したりテナントに配布したりするだけでは、きちんと実行されるかどうかはわかりません。
物件の管理を委託している管理会社とも協力しながら、ルールを守ってもらえる仕組みづくりに取り組む必要があります。
3.日常のクレームには素早く対処
日常のクレームには素早く対処する……これは当たり前のことといえますが、なかなか実行できないオーナーもいます。たとえば、何らかの設備の故障が発生したときに、少しでも修理費を安く済ませようと、何社にも見積もりを取るオーナーもいるかもしれません。たとえ、実際にコスト削減になったとしても修理を待っている間、テナントに不便を強いることになるため利用者の不満が高まります。
そのようなことが連続すれば、退去の原因にもなりかねません。クレームの内容にもよりますが、できるだけ素早く対処するよう心掛けたいところです。
4.周辺ビルの状況を把握して適切な賃料設定をする
長く入居しているテナントから値下げ交渉があった場合などに、かたくなに値下げを拒んでいるだけでは、自ら退去を促しているようなものです。周辺の賃料相場を把握して、適切な賃料で借りてもらうようにすることも、テナントを維持するためには大切になります。
5.入居審査で優良テナントを選ぶ
入居審査の際に、きちんとしたテナントを選ぶことも大切です。どんなテナントが出入りしているかで、その物件の価値が決まります。たとえば、お堅い会社が多いなら同じような傾向の会社を入居させることが無難です。他のテナントの利用者にとって、あまりにも違和感のあるテナントが入居してくれば、お互いに居心地が悪くなってしまいます。
快適に違和感なく施設を利用してもらうためにも、テナント選びは思っている以上に重要です。
6.顧客満足度調査など、当たり前のことをやる
サービス業などでは、既存顧客に対して、自社のサービスの「どのような点に満足しているか」「不満に感じているか」を定期的に調査することがあります。そのような顧客満足度調査を、あなたのテナントに対しても実施してみてはいかがでしょうか。難しく考える必要はなく、簡単なアンケートに記入してもらう程度です。普段はわからなかった不満や要望が吸い上げられるかもしれません。
それを改善すれば、簡単に満足度が向上するのです。やってみない手はありません。以上いくつかの対策を考えてみましたが、どれも特別な対策ではありません。しかし、当たり前のことを当たり前にやることが難しいともいえます。できることから一つずつ始めてみてください。(提供:ビルオーナーズアイ)