すでに所有しているビルはもちろん、購入を検討している収益不動産等の“評価”について、関心がある投資家の方は多いのではないでしょうか。それぞれの物件を正しく評価することが、メンテナンスや運用、売却などの適切な投資判断につながり、ひいては自らの資産形成にも良い影響をもたらします。その点、不動産の価値を正しく評価できるかどうかは、ビル経営において非常に重要です。
ただ一方で、不動産を正しく評価できている人はそれほど多くありません。多くの投資家は、不動産業者から提示される資料をもとに不動産評価をしているわけですが、それだけで正しい評価ができるのならすべての投資は成功するはずです。しかし、中には投資に失敗してしまう人も存在します。その背景には、ビルをはじめとする収益不動産への正しい評価ができていないという、問題が潜んでいるのです。
評価基準は多角的な視点から行うべき
では、どうすれば不動産を正しく評価できるのでしょうか。最も重要なのは、「複数の評価基準をもとに、多角的な評価を行うこと」に集約されます。つまり、特定の側面からのみ物件を評価するのではなく、複数の視点をベースに、多方面から物件を評価することが重要です。そしてそのためには、市場価値を把握する技術に加えて、オーナー自ら物件評価に対する一定の基準をもつことが求められます。
市場価値を把握する技術がなければ、特定の指標、たとえば物件価格と取引価格(相場)で判断せざるを得ません。たしかに価格は重要な判断指標ですが、それを絶対視してしまうと、差別化を意識した戦略的な投資は難しくなるでしょう。そうではなく、後述するような「立地」「構造」「セキュリティ」、さらには「ESG(環境・社会・ガバナンス)」などに配慮することで、物件評価は多面的になります。
ビル評価に欠かせない3つのポイント
ここであらためて、物件評価に欠かせない「立地」「構造」「セキュリティ」という3つの指標について、その中身を確認しておきましょう。それぞれの項目をきちんと理解し、客観的な評価を蓄積していけば、より正確な物件評価ができるようになります。物件ごとの違いや築年数による評価の変化を比較できるように、簡易的な「物件評価書」を用意しておくなど工夫すれば、いざというときにも役立ちます。
立地
立地と言うと、多くの人は駅からの距離をイメージするかと思います。ただ、マンションなどの実需であれば駅からの距離は重要ですが、都心の商業ビルなどであれば、その多くが駅近くにあります。そのため、単純に駅から近いというだけで評価するのではなく、利用駅や路線の数、周辺環境、町並み、その他のアクセス状況などから総合的に判断することが大切です。
構造(外観、共用部分など)
建物の構造に関して重要なのは、外観と共用部分です。外観に関しては、テナントとして入る企業に大きな影響を与えます。なぜなら、入居する企業のイメージにも直結するためです。同様に共用部分についても、エントランスをはじめとして、企業から好まれるものが求められます。立地を考慮しつつ、入居を希望する企業から選ばれる物件かどうか精査してみましょう。
セキュリティ
セキュリティの高さも、ビルの評価に関係しています。とくに近年では、安心して働けるという意味での警備状況とともに、情報流出を防ぐという観点からもセキュリティへの配慮が求められています。既存設備や構造等はもちろん、委託先のセキュリティ会社なども含めて、どのような対策を講じているのかチェックしておきましょう。
注目されるESGも考慮に入れること
さらにここ数年では、投資家のあいだでESGに関心が高まっています。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を意味する言葉で、機関投資家を中心に、ESGに配慮した投資先を選ぶ傾向が顕著となっています。国土交通省が行った調査でも、ESGに優れた不動産の価値が高まると答えた企業は約8割とされており、ビルの評価に大きな影響を与えています。これらの指標をもとに、適切なビル評価を行っていきましょう。(提供:ビルオーナーズアイ)