「確定拠出年金制度」といわれるものの中には、個人型確定拠出年金「iDeCo」(イデコ)と企業型確定拠出年金(企業型DC)の2つがあることをご存じだろうか。どちらかというと、一般的になじみが深いのは前者ではないかと思うが、この2つの制度には共通点と相違点がある。両制度の違いを明確にしながら、あまり知られていない企業型DCの特徴を解説する。

企業型DCとは?

iDeCo
(画像=yokoken / Shutterstock.com)

企業型DCとは、企業が運営主体となって掛け金を拠出し、加入者となる従業員本人が自己責任で運用し、原則60歳以降に、従業員がそれまで積み立ててきた資産を受け取るという仕組みだ。

企業型DCもiDeCo同様に、運用時と受取時に優遇税制が受けられる。会社が拠出してくれた掛け金の運用時に利益が出た場合、通常は20.315%の税金がかかるが、企業型DCでは非課税となる。このため、本来税金として差し引かれていたはずのお金をそのまま再投資に回せるため、より複利効果の高い資産形成が望めるだろう。受取時には、年金形式を選択した場合、公的年金等控除の対象になり、一時金形式を選んだ場合は、退職所得控除の対象になる。つまり、どちらの場合でも優遇税制が受けられるのだ。

さらに企業型DCには「マッチング拠出」という制度がある。これは会社のDC規約で利用が認められている場合に限り、従業員自身も掛け金の拠出ができる仕組みだ。この場合、従業員が拠出する拠出金の全額が所得控除の対象になる。企業型DCの税制メリットを存分に発揮できる制度なので、会社員の方々は、自社で企業型DCが導入されていたら、マッチング拠出制度を利用できるかどうか、担当部署に確認しよう。

なお、企業型DCとiDeCoに共通する留意事項は以下の通り。

・公的年金(国民年金や厚生年金など)のように、国や企業が代行して資産運用してくれるわけではない
・積み立てた拠出金は、原則60歳まで引き出すことができない

いずれにせよ「将来受け取る年金の一部を自分自身が運用している」ということを念頭に置き、安定的な投資実績をあげるためにも、投資や経済について、ある程度の知識を身につけることは重要だろう。

企業型DCとiDeCoの相違点

次に企業型DCとiDeCoの相違点を明確にしたい。上述した通り、両制度における最も大きな違いは「掛け金の出し手」である。企業型DCは勤務先の会社が掛け金を拠出するのに対し、iDeCoでは加入者本人が負担する。企業型DCを導入する企業では、経済的な負担は会社が担い、従業員は投資の経験を積む機会を得られることになる。

iDeCoでは職業などで拠出限度額が異なっていたが、企業型DCでは拠出限度額で以下の4パターンに分類される。企業型DCに加入している人は、自分がどのケースに当てはまるかを確認しておこう。

  1. 厚生年金基金などの「確定給付型年金」を実施していない場合は月額5万5,000円
  2. 確定給付型年金を実施しておらず、かつDC規約でiDeCoへの加入を認めている場合は月額3万5,000円
  3. 確定給付型年金を実施している場合は月額2万7,500円
  4. 確定給付型年金を実施しており、かつDC規約でiDeCoへの加入を認めている場合は月額1万5,500円

さらに、iDeCoは加入者本人が上限の範囲内で拠出金額を決められるのに対し、企業型DCは制度を運営する会社が、従業員の役職や勤続年数などに応じて、拠出金額を決める仕組みになっているという違いがある。

企業型DCを活用し、効率的な老後資金の準備を

企業型DCを導入する企業は年々増えている。勤務先が導入しているという会社員の方は、ぜひ積極的な活用を検討されたい。iDeCo、企業型DCのいずれにおいても、さまざまな優遇税制が受けられる。資産形成で、大きなメリットになるだろう。優遇税制の有無は、長期の運用成績を大きく左右する要因のひとつでもある。豊かな老後生活を送るためにも、企業型DCとiDeCoの制度の特徴を把握した上で、効率的に老後のための資産形成に取り組むべきだろう。