効率的な資産形成のために、さまざまな税制優遇があるiDeCo(イデコ)への加入を検討している人や、あるいは、すでに実践している人は少なくないだろう。一方、iDeCoを活用していても、必要な申告業務を確実に行わなければ、節税効果は得られない。iDeCoの税制メリットのひとつである「所得控除」を取り上げて、その具体的な申告方法について説明する。

iDeCoの大きなメリット「所得控除」とは

iDeCo
(画像=beeboys/Shutterstock.com)

iDeCoは「個人型確定拠出年金」という老後資金を効率的につくるために有効な制度である。60歳になるまでの間に、一定の掛け金を拠出して金融商品を運用し、60歳以降に運用した資産を受け取るというものだ。iDeCoを利用する最大のメリットは、大きな「節税効果」にある。

特に注目すべきメリットが、「所得控除」だ。iDeCoのための拠出金額がすべて所得控除の対象になり、所得税と翌年度の住民税が軽減される。自営業者など掛け金を全額負担している加入者にとって、節税効果はより大きなものになるだろう。

iDeCoで年末調整・確定申告が必要なケース

iDeCoに加入し、掛け金を拠出しているだけでは、所得控除の節税メリットを享受できない。所定のルールにしたがって年末調整や確定申告手続きを行う必要がある。iDeCoを利用して所得控除を受けようとする際に、年末調整や確定申告が必要なケースは2つだ。

まず、会社員や公務員がiDeCoに加入し、自ら掛け金を拠出している場合だ。企業側は従業員のiDeCo加入状況を把握できていないため、年末調整で従業員自身が掛け金の申告を行う必要がある。

もうひとつは、自営業の人がiDeCoに加入している場合だ。会社員と違って年末調整がないため、自分自身で確定申告手続きを行わねばならない。

年末調整・確定申告の具体的な手続き方法

それでは、具体的な確定申告の方法を2つの場合に分けてお伝えしよう。

会社員・公務員の年末調整3ステップ

・ステップ1:「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管
会社員や公務員がiDeCoの掛け金を自ら拠出している際には、iDeCo制度の実施主体である国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が郵送されてくる。これを年末調整まで大切に保管しておく必要がある。

・ステップ2:企業・団体から渡される「保険料控除申告書」を記入
年末調整の時期に企業から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」の必要事項を記載する。具体的には、同申告書の右下に設けられている小規模企業共済等掛金控除欄の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」項目内に、その年にiDeCoで拠出した掛け金額合計を記入する。

・ステップ3:上記2つのステップの書類を企業・団体に提出
「給与所得者の保険料控除申告書」と「小規模企業共済等掛金払込証明書」を企業に提出する。

以上の年末調整手続きを的確に行うことで、iDeCoの拠出金額の全額が所得控除の対象となり、その年の所得税と翌年度分の住民税が軽減されることになる。

自営業者の確定申告3ステップ

・ステップ1:「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管
国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が郵送されてくるので保管しておく。

・ステップ2:税務署で「確定申告書B」を取り寄せ記入
最寄りの税務署で「確定申告書B」を取り寄せ、必要事項を記載する。具体的には、確定申告書B第一表の左下にある「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、その年にiDeCoで拠出した掛け金合計額を記載する。次に、確定申告書B第二表の右上の箇所にある「小規模企業共済等掛金控除」欄で、掛け金の種類を「個人型確定拠出年金」とし、支払掛金と合計欄に、その年にiDeCoで拠出した掛け金合計金額を記入する。所得税の申告は、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を通じて、インターネット上で完結させることも可能だ。

・ステップ3:上記2つのステップの書類を税務署に提出
「小規模企業共済等掛金払込証明書」と「確定申告書B」を税務署に提出して手続きは終了である。

なお、会社員や公務員が、年末調整でiDeCoの拠出金を申告し忘れた場合や、「小規模企業共済等掛金払込証明書」が、年末調整終了後の翌年1月末以降に届いた場合でも、同証明書と「確定申告書A」を税務署に提出することで節税できる。「確定申告書A」の記入方法は、先ほどお伝えした「確定申告書B」とさほど変わらない。

iDeCoを少しでも有効活用するためには、年末調整や確定申告を通じて、しっかりと申告手続きを行うことを忘れないようにしたい。