今年10月から、今まで8%だった消費税が10%へと増税されます。家計への負担は確実に重くなりますが、増税分はどのように使われるのでしょうか。増税がもたらす影響をはじめ、消費者にとってのメリットや自衛策などについて解説します。

消費税は国税の3大柱のひとつ

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(画像=PIXTA)

税金には、国が徴収する国税と地方自治体が徴収する地方税があります。今年10月から増税される消費税は所得税や法人税と並ぶ国税の3大柱であり、国の大きな財源です。

消費税は「消費税」と「地方消費税」を合わせた総称のため、「消費税等」とも呼ばれます。今年10月からの消費税10%は、「消費税(国税)7.8%と地方消費税(地方税)2.2%」で成り立っているのです。

消費税増税の目的と使い道

消費税を上げる最大の目的は、「社会保障制度の充実やそれにかかわる財源の安定」といえます。不景気の際に税収が変動する所得税や法人税に比べ、買い物時に課せられる消費税は景気に左右されにくいので安定した税収をもたらしてくれます。その場で徴収できることから脱税などの心配もなく、確実な財源となります。

また、「現役世代への税負担の集中」を避けるという狙いもあります。今後は少子高齢化により現役世代が急速に減少することが予想されます。一方で高齢者は増加していくことから、所得税や法人税を引き上げると現役世代の税負担がより重くなってしまいます。

消費税であれば、特定の世代に負担を集中させることなく高齢者も含め国民全体が負担することになります。そのため、高齢化社会における社会保障の財源には消費税がふさわしいとの考え方が増税の基本です。

消費税増税による国民のメリットは?

消費税増税によってまず挙げられる最大のメリットは、前項でも触れたように社会保障制度の充実と安定です。年金をはじめ介護や医療、子育て支援など、社会保障にかかる費用は今後も増加の一途をたどることが予想されますが、消費税増税によりこれら多額の社会保障費用を確保することが可能です。

具体的な内容としては、介護職員の処遇改善などに充てて医療・介護サービスの提供体制の改革を進めたり、将来にわたる国民健康保険の支援を拡充したりという費用に増税分の財源を活用します。遺族基礎年金の対象を父子家庭へも拡大するなど、幅広い世代への施策を発表しています。

中でも恩恵が受けられそうなのは子育て世代で、幼児教育・保育の無償化や、大学など高等教育費用支援の財源に増税収入を充てることが閣議決定しています。幼児教育・保育は0~2歳児については住民税非課税世帯で、3~5歳児は全世帯で幼稚園や保育所、認定こども園などの利用料が10月から原則無料となります。

高等教育では住民税非課税世帯やそれに準じる世帯を対象に、来年4月から大学や短期大学、専門学校などの授業料減免や給付型奨学金の拡充を実施します。

現役世代の負担を軽減し世代間格差を是正できることも、メリットのひとつです。高齢者を支える公的年金や健康保険などの社会保障は現役世代の負担により成り立っているため、全世代に及ぶ消費税増税によって現役世代の負担軽減につながります。

消費税増税により増える税金は地方自治体にも分配されるので、地方税収入が安定するメリットもあります。税収は道路や橋、河川、下水道などの整備や災害による被災地の復旧・復興といった公共事業の充実に役立つため、中でも税収入が少なく財政難の自治体には恩恵をもたらします。

個人で可能な増税自衛策で少しでもお得に

増税はある程度仕方がないことですが、個人でも可能な工夫で少しでも自己防衛をしてみましょう。

まずは増税と同時に適用される「軽減税率」を上手に活用することをおすすめします。酒類を除く飲食料品などの消費税を8%のまま据え置きにする制度で、もともとは家計に占める食費の割合が高い低所得者への負担軽減措置ですが、誰にでも適用されます。

この制度で注目すべきは、「外食」は増税になるものの「持ち帰り」は8%のままで済むという点です。ファストフードやコンビニのイートイン、フードコート、屋台での飲食は「外食」で、テイクアウトや宅配・出前は「持ち帰り」と線引きされています。レストラン以外ならばテイクアウトを利用し、自宅や公園などで飲食する方がお得となります。

また、増税が始まる10月から来年6月までの半年間に限り、電子マネーやスマホ決済、クレジットカード、デビットカードなどのキャッシュレス決済をした場合はポイントが還元されます。オリンピックなどに向けた政府のキャッシュレス拡大施策で、中小規模の小売店舗では5%、個人経営が多いコンビニや外食などのフランチャイズ店では2%のポイント還元を実施します。

これら対象店舗にはロゴ入りポスターが貼られ経済産業省のサイトでも対象店舗を公開するので、なるべくポイントが還元される店舗を選ぶようにしましょう。対象ではない大手直営のコンビニや外食産業系の企業でも、自社の負担で2%のポイント還元を実施する可能性がありそうです。

金額が大きい住宅や自動車についても、増税の軽減措置が盛り込まれます。10月以降に自動車を購入すると自動車税が毎年減税されたり「自動車取得税」が廃止されたりというメリットがあり、燃費がよい自動車ほど税が軽減される環境性能からの割引も実施されます。

住宅の購入にも消費税が8%に上がった時と同様に今回も軽減措置が導入されます。消費税10%が適用される住宅を購入した場合は住宅ローン控除を受ける期間が従来の10年から13年へと3年間延長されます。増税前と増税後とどちらがお得かは個々のケースによると思いますが、こういった軽減措置があることを知っておけば増税前に焦って購入せずに済むでしょう。

デメリットもあるが次世代への負担先送りを軽減

増税によって家計の負担は増えることになり、国内消費全体が落ち込むことも予想されています。飲食料品への軽減税率やキャッシュレス支払いによるポイント還元もずっと続くわけではなくあくまでも経過措置のため、消費者の不安解消には至りません。

ただ、膨張する社会保障費用などを次世代に先送りせず、できるだけ全世代で負担していくことは重要といえます。痛みは伴いますが、これ以上国の借金を増やさないために未来への投資と考えることが大切ではないでしょうか。

文・渡辺友絵(ライター・編集者)/fuelle

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