住宅ローンの契約をする際には通常、保険に加入する必要がある。その代表的なものが団体信用保険だ。しかし、団体信用保険について詳しく理解している人は少ないだろう。そこで、ここでは住宅ローンを組む際の団体信用保険の注意点や必要性について詳しく解説する。

住宅ローンを借りる際の団体信用生命保険とは?

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(画像=PIXTA)

住宅ローンとは、マイホームを購入する際に金融機関から融資を受ける制度、またはその融資のことである。住宅ローンの融資を受けると通常35年など長期にわたって返済をしていくことが必要だ。一般的に購入したマイホームが担保となる。では住宅ローンの契約者(例えば世帯主)が死亡したり、大きなケガを負って障害が残り働けなくなったりした場合、どうなるのだろうか。

住宅ローンの返済ができなければ、住宅が差し押さえられ残された家族は最終的に自宅を失うことになってしまう。そうならないために考えられたのが、団体信用生命保険である。団体信用生命保険(一般的に団体信用保険または団信と呼ばれる)は、その名の通り生命保険だ。団体信用生命保険に加入していると住宅ローン契約者が死亡・高度障害状態になったときに住宅ローンの残高分の保険が下り、住宅ローンの返済に充当される。

残された家族は、住宅ローンの返済をすることなく自宅に住み続けることができるので安心して生活していくことが可能だ。そのため住宅ローンを借りる際には、団体信用生命保険に加入するのが一般的である。

一般の生命保険との違いは?

保険会社などに加入する一般の生命保険と団体信用生命保険には、「どのような違いがあるのか」について見ていこう。一般の生命保険には、「契約者」「被保険者」「受取人」の3者が存在する。契約者は生命保険を契約して保険料を支払う人、被保険者は保険の対象となる人、受取人は保険金を受け取る人のことだ。

契約者が毎月保険料を支払い、被保険者に万が一のことがあった場合には受取人が保険金を受け取る。契約者、被保険者が世帯主、受取人が家族というケースは多い。一方、団体信用生命保険の場合は、少し仕組みが異なる。契約者・被保険者は住宅ローン契約者、受取人は住宅ローンの融資をした金融機関となるのだ。

団体信用生命保険の保険料は、通常住宅ローンの金利に含まれているため、毎月の保険料の支払いはない。また被保険者に万が一のことがあった場合に、家族に保険金がわたることもない。住宅ローンの残高分のみ保険金が下り、住宅ローンの返済にのみ使われる。つまり住宅ローンの残額の返済は、すべて団体信用生命保険で賄えるのだ。

一般の生命保険に加入する場合には、住宅ローンの返済以外に残された家族に必要な生活費のことを考えて、加入したほうが良いだろう。

団体信用生命保険の注意点

団体信用生命保険は契約者やその家族にとって有利な制度であるが、いくつか気を付けるべき点がある。

健康状態次第では、加入できない場合がある

団体信用生命保険は、あくまで生命保険である。そのため加入の際には審査が必要だ。もちろん契約者の健康状態の告知も必要で、その告知は保険に加入できるかどうかの判断基準となる。団体信用生命保険の場合、一般的な生命保険に比べて告知項目は少ない傾向だ。しかし契約者の健康状態(病気の種類や症状など)によっては加入できないこともあるので注意しておこう。

健康状態によって団体信用生命保険に加入できない場合は、後述する「フラット35」など、団体信用生命保険への加入が借り入れ条件になっていない住宅ローンの利用も検討しておくことが必要だ。

団体信用保険で賄えないリスクとは?

団体信用生命保険に加入できたら、契約者に万が一のことがあっても必ず安心というわけではない。なぜなら団体信用生命保険で保険金が支払われるのは原則、死亡・高度障害状態のときだからだ。特約を付けてもガンの場合など特定の場合しか賄うことができない。

それ以外の病気やケガなどで仕事ができない場合や収入が減少した場合は、保険金は支払われないので支払いが困難になることもある。団体信用生命保険に加入する場合は、「どこまでを保障の対象としているのか」「それ以外に生命保険に加入する必要があるのか」について検討する必要があるだろう。

住宅ローンの団体信用保険の種類

上述した通り、団体信用生命保険では賄えないリスクもあるため、他の生命保険への加入を検討する必要がある。しかしその前に住宅ローンの団体信用保険には「どのような種類があるか」「どこまでを保障の対象にしているのか」を知っておく必要があるだろう。ここでは、住宅ローンの団体信用保険の種類と内容について見ていこう。

通常の団体信用生命保険

通常の団体信用生命保険は、住宅ローン契約者が死亡、または高度障害状態になったときに、その後の住宅ローンの支払いを免除するものだ。高度障害状態とは、一般的に次の状態になった場合のことである。

・両眼の視力を全く永久に失ったもの
・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
・中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
・両上肢とも手関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
・両下肢とも足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢を手関節以上で失い、かつ1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢の用を全く永久に失い、かつ1下肢を足関節以上で失ったもの

一般的に死亡以外で通常の団体信用生命保険の保障を受けるケースは少ないだろう。

3大疾病特約付団体信用生命保険

「3大疾病特約付団体信用生命保険」とは、死亡または高度障害状態という通常の団体信用生命保険の保障に加え、3大疾病の場合にも保障がある団体信用生命保険である。3大疾病とは、「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」といった3つの疾病のことだ。団体信用生命保険によって、3大疾病の場合にローン残高全額が返済免除になる場合と、その後一定期間の返済が必要(一定期間経過後は免除)となる場合がある。

8大疾病特約付団体信用生命保険

「8大疾病特約付団体信用生命保険」とは、死亡または高度障害状態という通常の団体信用生命保険の保障に加え、8大疾病の場合にも保障のある団体信用生命保険のことである。8大疾病とは、「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」といった3つの疾病のほかに「糖尿病」「高血圧症」「肝硬変」「慢性膵炎」「慢性腎不全」の5つの疾患を加えたものだ。

こちらも団体信用生命保険によって8大疾病の場合にローン残高全額が返済免除になる場合と、その後、一定期間の返済が必要(一定期間経過後は免除)な場合がある。3大疾病特約付団体信用生命保険や8大疾病特約付団体信用生命保険は、保険商品ごとに保障が異なる場合も少なくない。そのため加入する場合には、あらかじめ該当する症状があらわれた後の保障やローンの返済がどうなっているのか、必ず確認しておく必要がある。

住宅ローン【フラット35】の場合は団体信用保険か民間の保険に入ろう

住宅ローンの融資を考えたことのある人の中には、「フラット35」の名前を聞いたことがある人も少なくないだろう。「フラット35」は、他の住宅ローンと違いがある。ここでは、フラット35について見ていこう。

フラット35とは?

フラット35は「独立行政法人 住宅金融支援機構」が提供する住宅ローンである。住宅金融支援機構は、国土交通省と財務省が管轄している組織のため、公的な意味合いが強い。民間の金融機関を窓口として融資を受けることができる。フラット35の特徴としては、返済期間中ずっと固定金利であることや、保証人や繰り上げ手数料が不要であること、団体信用生命保険の加入の義務がないことが挙げられる。

これらの特徴は、貸す側にとっても借りる側にとっても高いリスクを伴う。そのため一般の金融機関では取り扱うことが難しく公的な住宅金融支援機構が提供しているというわけである。金利が固定されているため、景気に伴う金利変動の影響を受けにくく安定志向の人には好まれる傾向だ。ただし、団体信用生命保険の加入の義務がない点は注意が必要である。

住宅ローンは返済期間が長いため、リスク回避のためには団体信用生命保険に入っておいたほうが賢明だ。フラット35でも別に「新機構団体信用生命保険制度」を用意しているので、それを利用するか、民間の生命保険に加入しておいたほうが良いだろう。

住宅ローンに団信以外の付帯オプションは必要か

住宅ローンの融資を受ける際には、一般的には団体信用生命保険に加入が必要だ。しかし通常のもの以外に3大疾病特約付や8大疾病特約付など特約付のものがある。3大疾病特約では金利+年0.25%程度、8大疾病特約では金利+年0.30%程度の支払いが必要だ。単純計算すると、8大疾病特約を付けると、ローン残高3,000万円×年0.30%=9万円となり、1年間に9万円を余分に支払う必要がある。

ローン残高が減っていくので単純に「この金額×返済期間」とはならないが、住宅ローンの完済までとなると、決して安くない保険料となるだろう。では、これらの特約は必要であろうか。3大疾病や8大疾病のリスクが高まる中、何の保障もないのはやはり不安だ。そこで考えたいのが保険の見直しである。住宅ローンの融資を受ける前、または受けている最中に一般の生命保険に加入している場合は多い。

実は一般の生命保険で3大疾病特約や8大疾病特約をカバーできている場合も少なくないのだ。この場合は、どちらか一方の保険に絞ることを考えるべきだろう。もしも一般の生命保険の保障に住宅資金の金額分も含まれているのであれば、3大疾病特約や8大疾病特約に加入する必要はない。あるいは、一般の生命保険の掛け金を減らし、3大疾病特約や8大疾病特約の団体信用生命保険に加入することを考えたほうが良い場合もある

住宅ローンに合わせて保険選びを

現在は社会情勢の変化が激しい時代である。そのため今の状態がずっと続くかどうかは誰も分からない。将来の不安を解消するためには、保険は重要である。また、住宅ローンの加入には原則、団体信用生命保険の加入が必要だ。しかし、保険にはさまざまな種類があり、選択を間違えると保険料の払いすぎになりかねない。

住宅ローンに加入する場合は現在加入している保険や、これから加入する団体信用生命保険の内容をきちんと確認し、住宅ローンに合わせた保険選びをすることが大切である。

文・長谷川よう