住宅ローンにはさまざまな種類があり特徴やメリット・デメリットが異なるため、どの住宅ローンを選べばよいか迷う人も少なくない。今回は、住宅ローンの選び方について金利タイプ・ローンの種類を分かりやすくまとめた。また、住宅ローンを選ぶ際、特に気を付けたいポイントについても解説しているので住宅ローン選びに悩んでいる人はぜひ確認してほしい。

住宅ローンは、3つの金利タイプから選ぶ

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(画像=PIXTA)

住宅ローンを選ぶ際に、まずチェックしたいのは金利タイプだ。住宅ローンの金利タイプは主に以下の3タイプに分かれる。これらの金利タイプの特徴について説明しよう。

・全期間固定金利型
・固定期間選択型
・変動金利型

全期間固定金利型の特徴

全期間固定金利型の住宅ローンは、その名の通り、全期間で固定金利が採用される住宅ローンだ。3種類の中では金利が最も高く設定される。ただ将来的に金利が高くなるリスクは抑えられるため、金利変動リスクの心配はない。この金利タイプの代表例は「フラット35」だ。返済期間中に金利が変わることがないため、ライフプランが立てやすい点が大きな特徴である。

2019年8月現在の全期間固定金利型のフラット35は、固定金利が1.170%(借入期間21~35年、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)だ。固定金利は、2004年8月に3.17%をつけたこともあり、2019年時点は比較的低金利で住宅ローンを組める状態といえる。

固定期間選択型の特徴

固定期間選択型の住宅ローンは、指定の期間を固定金利で残りの期間を変動金利とするタイプだ。一定期間の固定金利部分が、固定する期間に応じて変化する点が特徴である。固定金利の期間を長くすればするほど、全期間固定金利型とあまり変わらない金利が採用される。固定金利期間が終了したとき、再度固定金利にするか変動金利にするかを選べるタイプも多い。

しばらくは同じ支払額で固定したい場合や、全期間固定金利型より安い金利にしたいがいきなり変動金利にするのもためらわれる場合などに選ばれるタイプだ。ただし将来のライフステージで考えられる大きな変動を織り込んでいないと、固定金利期間終了後にかなり金利が上昇した場合に困るケースが出てくる。

例えば、住宅ローンの増加と教育費など家計の負担が大きくなる時期が重なると、教育費の捻出に困ることにもなりかねない。また、固定金利期間が15年以上になってくると全期間固定金利型と金利差がなくなってくるため、期間の設定はかなり慎重に検討する必要がある。例えば、あと5年で子どもが独立して家計の支出が減ることが明確に分かっている場合などに使いやすいタイプだ。

変動金利型の特徴

変動金利型は、住宅ローンの返済期間中に金利や返済額の見直しが入るタイプの住宅ローンだ。金利は3タイプの中で最も低く設定されている点が大きなメリットである。金利の低いうちに元本を減らせる点も変動金利型を選ぶメリットだ。ただし金利上昇リスクがある点には注意する必要がある。金利は半年に1度、返済額は5年に1度のペースで見直しが入り、金利が上昇する場合は返済額も増加する仕組みである。

つまり金利は半年に1度見直しても、返済額に反映できるタイミングは5年に1度。その期間に見直した返済額は、これまで払ってきた返済額の1.25倍以内というルールもある。ただし、これらのルールは法律で決まっているわけではない。そのため、このルールを採用していない銀行もある点には注意したい。

住宅ローンの種類を選ぶ

金利タイプが理解できたら、次は住宅ローンの種類を選ぼう。住宅ローンの種類には主に以下の3つだ。これらの住宅ローンについて詳しく解説する。

・フラット35
・民間ローン
・上記に当てはまらない住宅ローン(財形融資や自治体融資など)

全期間固定型の【フラット35】

住宅ローン返済期間中ずっと金利がフラット(固定)となる住宅ローン。住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供している。年収400万円未満の場合は、住宅ローンを含むローン全体の年間総返済額が年収の30%以下、年収400万円以上の場合は、年収の35%以下であることが借り入れの条件だ。フラット35を利用した住宅ローンの一種に「ダブルフラット」という種類もある。

ダブルフラットは、返済期間の違う2つの全期間固定型住宅ローンを組み合わせたもの。「若いうちに多くのローンを返済し、定年後には返済額が減るようにしたい」というニーズにこたえた住宅ローンだ。例えば、「フラット20」(20年以内に返済する全期間固定金利型住宅ローン)と、「フラット35」を組み合わせると、フラット20を返済し終わったタイミングで毎月の返済額が少なくなる。

将来のリスクを減らすという点ではメリットがあるが、2種類の住宅ローンを借りるため、抵当権設定の登録免許税など、諸費用が多くかかるというデメリットもある点に注意したい。

変動型、固定期間選択型が多い【民間ローン】

民間金融機関が用意している住宅ローンは、変動型や固定期間選択型の住宅ローンが多い。フラット35を取り扱っている金融機関の中には、フラット35と組み合わせで変動型や固定期間選択型の住宅ローンも使いたい人のために、セットプランを用意しているところもある。不動産会社の「提携ローン」も民間ローンの一種として分類される。

その他住宅ローン

その他の住宅ローンとして有名なものには、5年固定型の「財形融資」や「自治体」の融資制度がある。財形住宅融資は、財形貯蓄を1年以上継続していて残高が50万円以上あるなど、諸条件を満たした人に貸し出す住宅ローンだ。金利は5年ごとに見直すというシステムである。自治体の住宅融資は、独自の施策として展開している住宅ローンの一つである。

一般の金融機関が提供しているよりも有利な条件で借り入れができるように融資をあっせんするタイプと、借り入れた住宅ローンの利子分を支給する利子補給制度の2パターンがある。

リフォーム専用ローン

住宅ローンは、新規住宅購入だけではない。自宅をリフォームする場合や、中古住宅を購入してリノベーションする場合に使える住宅ローンもある。リフォーム専用ローンには、公的融資のものと民間融資のものがあり、いずれも住居面積や耐震構造など、一定の要件を満たすことが必要だ。

住宅ローン選びに気を付けたいポイント

最後に住宅ローン選びに気を付けたいポイントとして、残金決済と融資実行日のタイミングがある。具体的にどういう点に注意すべきなのかについて詳しく見ていこう。

残金決済と融資実行日のタイミングを合わせること!

住宅ローンを組んで住宅を購入する場合は、売買契約を締結して手付金を支払った後、物件引き渡しのタイミングで残金を決済しなければならない。この残金決済日に融資実行してもらえるように調整する必要があるが、一般的には銀行側で調整してくれる。もし残金決済日までに融資実行に至らなければ、「つなぎ融資」が必要になり、利息分の負担が増えてしまう点には注意したい。

しかし、「フラット35」は、中古住宅を購入してリフォームする場合、どうしてもつなぎ融資が必要になる。なぜなら購入物件の残金決済をするタイミングでは融資が実行されず、その後にリフォーム工事が完成した後に融資が実行されるからだ。中古住宅を安く購入してリフォームする場合は、つなぎ融資の利息分は負担が増えることを計算に入れておこう。

土地を買って家を建てるときのローン選びにも似たようなことがいえる。土地の購入代金を支払う際融資が実行されればよいが、家の俊工時まで融資が実行されない場合、数ヵ月のつなぎ融資が必要になるかもしれない。フラット35の場合はつなぎ融資が必要になるが、民間の住宅ローンの場合は、お金を支払うタイミングで数回に分けて融資を実行してくれる場合もあるので確認しておこう。

また、自宅をリフォームする場合の住宅ローンにも注意が必要だ。高額のリフォーム代金を支払う場合、数回に分けて代金を支払わなくてはならないことが多い。リフォーム専用ローンの場合も、支払いが必要な時期に融資を実行してもらえるかどうかを必ず確認しておきたい。

安心のために団信の加入を

「団信」とは、団体信用生命保険の略語で住宅ローン専用の生命保険であり、加入するかしないかは任意で決められる。住宅ローンを借りた人が病気や事故などで死亡あるいは高度障害状態になった場合、保険会社から金融機関に直接住宅ローン残高分の保険金がおりて、住宅ローンの残金が清算される仕組みだ。

近年では、死亡や高度障害状態だけでなく「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」といった3大疾病になった場合の特約が付いた商品もある。さらに高血圧症などの病気で就業不能な状態が1年を超えて続いた場合の特約を付けられる「8疾病保障」など種類は豊富だ。健康なうちは保険金がもったいないと感じるかもしれないが、将来何かあった場合のリスクを減らすためにも団信はぜひ加入しておきたい。

団信は、融資の手続きタイミングまでに加入しないとあとから入り直すことはできない点も要注意だ。

ご自身にあった最適な住宅ローン選びを

住宅ローンの選び方は、その人の年収・家族の状況や購入する住宅の状況などによって大きく異なる。自分の状況を考えて金利タイプやローンの種類を選ぶようにしよう。無理のない範囲で返済できる住宅ローンを選び、安心して支払いを開始できるようにしたい。

文・藤森みすず