マイホームの購入は大きな出費となり毎月の住宅ローンの支払いは家計に大きな影響を与えるものだ。しかし「住宅ローン控除」という制度で所得から差し引く制度があることをご存じだろうか。住宅ローンの控除というのは自分の所得から住宅ローンにかかった費用を差し引くことで課税所得を減らして最終的に還付金を受け取ることが出来る仕組みだ。
つまり住宅ローンの控除を受ければ節税になるため結果的に手取りが増えるのだ。今回は住宅ローン控除の概要から条件、必要書類などを解説する。住宅ローンの控除についてしっかり勉強することで賢く節税をするために勉強をしていこう。
住宅ローン控除(減税)とは?
控除とは?
そもそも税金というのは所得から課税所得となった後に所得税や住民税が算出される。一般的なサラリーマンの方は「給与所得」を得ているが給与所得から「経費」や「控除」といったものを差し引いたものが課税所得になる。
従って「控除」とは所得から差し引くことができる制度となっており自身が支払う税金を抑える性質を持つ。控除には様々な種類があり基礎控除や給与所得控除は自分が申請しなくても勝手に差し引かれている。
そのため普段は意識しないかもしれないが自分の収入は様々な要因が絡んで決まっていると覚えておこう。余談だが住宅ローンの控除以外にも控除や経費として使用できるものが実はたくさんあるため今回は住宅ローンの控除制度について解説していくが興味があったら他の控除や経費について勉強するのもおすすめだ。
最新の住宅ローンの控除制度
住宅ローンの控除制度は正式名称を「住宅借入金特別控除」という。住宅ローンの控除制度の制度は何回か変更されているため、最新のものを確認する必要がある。控除制度内容としては自身が購入した物件を住宅ローンでまかなっている場合、一定の割合の金額を所得税から控除控除されるというものだ。
そもそも住宅ローンは借金だ。毎年利子を付けて払っている負担もさることながら、毎月支払わなければいけないため家計に大きな負担を与える。そんな住宅ローンのダメージを少しでも和らげるのが「住宅ローンの控除」なのだ。
住宅ローン控除(減税)の対象は新築・中古・リフォームの3つ
住宅ローンの控除と一口にいってもケースによって控除される金額はまちまちだ。
大別すると以下の3つのケースに分かれる
・新築物件の住宅ローンの控除を受けるための必要な条件
・中古物件の住宅ローンの控除を受けるための必要な条件
・リフォーム物件の住宅ローンの控除を受けるための必要な条件
以上の3つとなる。
自分が新築物件をたてるのか、中古物件をリノベーションするのかでは受けれる住宅ローン控除が異なってくるのでそれぞれ住宅ローンの控除に関する戦略をたてていくことが重要だ。各物件において控除を受ける条件が異なるためそれぞれ確認していこう。
新築物件の住宅ローンの控除を受けるための必要な条件
・新築もしくは取得日から6か月以内で入居 ・住宅ローンを組んだ人の合計所得が3千万円以下 ・住宅ローン返済期間が10年以上 ・登記簿記載の床面積が50㎡以上 ・床面積の二分の一が自身の居住用スペース |
住宅ローンの規定もそうだが床面積にも条件があるので、住宅ローンの控除を検討しているのであれば購入時から住宅ローンの控除の条件をクリアした家を建築、または購入しよう。
中古物件の住宅ローンの控除を受けるための必要な条件
・新築住宅の条件全部 ・耐火建築物なのであれば築25年以内 ・耐火建築物以外であれば築20年以内もしくは耐震基準の通過 ・生計を同一にする親族は購入には認められない ・贈与された住宅は認められない |
新築の住宅ローンの控除を受けるための必要な条件へ更に条件が追加されたものが「中古物件の住宅のローン控除を受けるための必要な条件」だ。築20年以内や築25年以内といった条件が設定されているため、中古物件購入の際は築年数の確認をしっかり行おう。当たり前だが親族からの贈与といった形では住宅ローンの控除は申請できないため注意だ。
リフォーム物件の住宅ローンの控除を受けるための必要な条件
・新築住宅の条件全部 ・自所有かつ居住するためのリフォーム ・大規模な修繕またはリフォーム ・100万円を超える工事費用の場合 ・店舗併用住宅では居住スペースのリフォーム費用が二分の一以上 |
新築の住宅ローンの控除を受けるための必要な条件へ更に条件が追加された形だ。注意点としては小規模なリフォームでは住宅ローンの控除が適用されないことだ。例えば、自身購入で住宅ローンを組んでおり、100万円を超えるリフォームを行った。
その際に発生した新なリフォーム費用を現在の住宅ローンと合算。合算後にかかる費用を控除申請といったものだ。
・省エネリフォーム
・バリアフリーリフォーム
・耐震リフォーム
といった大規模リフォームでは問題なく控除申請できるので確認しておこう。また入居前後2年で「長期譲渡所得の課税特例」を使用している場合は控除を使用できないのも注意しよう。
住宅控除を受けられる対象のローンは?
各住宅ローン控除の条件を確認してきたが住宅ローンの控除対象となるローンの種類も決まっているため確認が必要だ。
・民間や独立行政法人住宅引用支援機構、地方公共団体、公務員共済組合、勤務先 ・事業団体からの住宅ローンは金利0.2%以上のものに限定(給与所得者に限る) ・事業団体からの補助を受け取る場合は控除した後利息が0.2%以上 ・個人的な借入金がない ・前物件所有者から債務を引き継いでいない |
住宅ローンの代表的なものであるフラット35(長期固定金利住宅ローン)を始め民間や財形住宅融資などの多くは住宅ローンの控除の対象となる。従ってあまり考えずとも大体の人は自分が住宅ローンの控除を受けられる場合が多い。対象外となるのは支払い時期が不明なものだけなので一般的なものであればそうはじかれるものではない。
住宅ローン控除の計算シュミレーション
住宅ローン控除を受ける様々な条件をみてきたが、今度は実際いくら控除できるのかをみていこう。
まず住宅ローン控除の体系を解説するが、居住開始が「~平成26年3月」の区分と「平成26年4月~令和3年12月」、「令和元年10月~令和2年12月」において区別される。
~平成26年3月に居住開始した場合 |
10年間の控除期間 |
控除率1% |
所得税の最大控除額は200万円 |
住民税の最大控除額は9.75万円 |
平成26年4月~令和3年12月 |
10年間の控除期間 |
控除率1% |
所得税の最大控除額は400万円 |
住民税の最大控除額は13.65万円 |
令和元年10月~令和2年12月 |
13年間の控除期間 |
控除率1% |
1年から10年までは所得税の最大控除額は400万円、11年から13年までは住宅ローンの残りもしくは住宅取得単価×1%または建物取得単価×2%÷3 |
住民税の最大控除額は13.65万円 |
年収が500万円、年末に残っている住宅ローンが3000万円だとすると住宅ローンの控除はいくらになるのか。まずは自分の源泉徴収がいくらなのか源泉徴収票で確認しよう。年収500万円であれば約18万円前後。住宅ローンの控除において最大20万円控除される場合でも自分の所得税が18万円なら最大の控除は18万円となる。残りは住民税から控除する形となりその上限は上記した表の通りだ。
また「結婚しているのか」や「独身なのか」でも控除額は変わってくる。
共働きで年収が500万円、年末に残っている住宅ローンが3千万円 | 10年間261.6万円の控除 |
独身で年収が500万円、年末に残っている住宅ローンが3千万円 | 10年間236.55万円の控除 |
結婚している方が住宅ローン控除が大きい結果となる。また自身の給料によって所得税や住民税がことなってくるので最大控除額が変わる。
従って住宅ローン控除がどの様な要因で決定するのかというと以下の3点である。
・年収
・住宅ローン残債
・家族構成
これらによって決定されることを覚えておこう。
住宅ローン控除を受けるために必要な手続き
住宅ローンの控除をうけるにはどのような手続きをしたらよいのか。税金を含めお金に関係する部分は会社が行ってくれているため控除申請等もやったことがないサラリーマンは多い。
しかし住宅ローンの控除をはじめ経費の概念や控除の概念を知っておくと節税もでき、自分で経営のことを学ぶ良い機会にもなるので仕事にもいかせる。なにより節税して手残りをふやすことができたり還付金をもらうことができたりとメリットしかない。確定申告のための必要書類は考えていたよりも多いかもしれないが、しっかり把握しておこう。
翌年から所得税の確定申告を
確定申告は自分が「いくら稼いだか」や「経費」、「控除」を申請するもの。確定申告は国税庁から行うことが可能だ。確定申告の期間は翌年2月中旬から3月中旬にかけて前年1年分の収入に関して申告を行う。
例えば2019年における収入の確定申告は2020年の2月中旬から3月中旬に行うのだ。事業者や二つ以上の給与所得を得ている方ならば確定申告をしなければいけないが、一般的なサラリーマンは確定申告をするための書類等にすら触れたことがない人が多いだろう。次項で確定申告に必要な書類をあげたので確認しておこう。
必要な書類一覧
住宅ローンの控除に必要な書類を以下の表に記した。
確定申告書(A) | 会社員はの用紙を選択、税務署から入手 |
住宅借入金特別控除額の計算明細書 | 国税庁もしくは税務署から入手 |
本人確認書類 | ・マイナンバーカード ・マイナンバー通知カード ・マイナンバーが記載してある住民票 上記二つは運転免許証またはパスポートと一緒に提出する |
登記事項証明書 | 法務局から入手 |
不動産売買契約書(請負契約書)の写し | 不動産会社から入手 |
源泉徴収票 | 勤務先から入手 |
残高証明書 | 住宅ローンを組んだ機関から入手 |
耐震基準適合証明書または住宅性能評価書の写し | 不動産会社から入入手 |
認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の認定書の写し | 不動産会社から入手 |
用意する書類は非常に多いが、年間数十万円の控除が受けられれば大きい金額が還付されるのでしっかり用意しよう。多くは自身が契約した不動産会社から入手できるため購入時に住宅ローンの控除のことも頭にいれておき入手しておくのがベストだ。
その他の書類は自身が務める会社や国税庁のホームページから入手できる。大体がすぐもらえる書類だが源泉徴収票だけは会社に申請してすぐもらえるもではないため早めの申請を心がけよう。
納めた税金はいつ戻ってくるのか
住宅ローンの控除の書類を用意した後に無事確定申告を終了したら、はたして税金の還付はいつ行われるのだろうか。還付金は約1か月後に自身が決めた金融機関に振り込まれるため1か月過ぎたあたりで確認が必要だ。忘れたことに還付金が振り込まれるためびっくりする方も多い。しかし忘れてしまう頃というのは申請が却下された場合に気づきにくいため、もし申請が却下された場合は自宅に書類が届くので確認はおこたらないようにしよう。
住宅ローン控除を利用して税金対策を
今回は住宅ローン控除の概要から条件、必要書類などを解説してきた。住宅ローンの控除の条件には様々な種類があり必要書類も多いが、初年度に確定申告を行えば次年度からは年末調整のみで還付される仕組みとなっているので必ず行ったほうが良い。
中でも住宅ローンの控除は年間で数十万円以上の控除になるばかりか、自分の年収が高ければ高いほど控除できる金額は上がってくため非常にお得な制度だ。また住宅ローンの控除以外にも多くの控除や経費といった形で自分の所得を圧縮する方法があるので今回の住宅ローンの控除申請を機に他のも申請や勉強してみるのも良いだろう。
確定申告時期は少し面倒ではあるが住宅ローンの控除をしっかり申請して節税効果を体験してはいかがだろうか。特に住宅ローンの控除申請は初年度に控除申請を行えば次年度からは年末調整を行えば控除をおこなうことができるのでしっかり行おう。