賃貸住宅のオーナーにとって入居者の募集は大事な仕事です。空室を減らすために、チラシを自作する人も少なくありません。賃料を確保するために力を注ぐのはよいことですが、なかにはルール違反をしてしまう人もいる少なくありません。そこで本稿では不動産広告に関する規制や賃貸管理、表示例などについて解説していきます。

アウトかセーフか微妙な表示の例

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(写真=fizkes/Shutterstock.com)

不動産広告には細かなルールが定められています。「一般的な商品の広告にはよくあるものの、不動産で書くとNG」という文言がたくさんあるのです。

ナンバーワンや唯一無二の表現

ナンバーワンや唯一無二といった表現は基本的にアウトです。客観的に根拠が定かではない言葉で誤解を招くような書き方は禁止されます。ほかにも「完全」「絶対」「最高」「ここだけ」「格安」「完売」などもNGです。ただし客観的かつ信ぴょう性の高いデータや合理的な根拠があれば使っても構いません。

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二重表示はアウトです。スーパーや家電量販店ではよく「大セール!1万円→5,000円」のような書き方をされますが、このように過去と現在の価格を並べる二重表示は禁止されています。なお割引表示は禁止されていません。例えば「家賃を一括前払いするなら5%割引」といった表示はセーフです。

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セーフです。前述した二重表示の禁止ルールがあるため分かりにくいのですが、割引の条件を明確にすれば、異なる価格を記載することが認められます。

ルームシェア物件なのにそのことをあえて書かない

アウトです。ルームシェアや相部屋の物件は、人数や性別を書かなければなりません。「安くて広い物件にひとりで住めると思ったら、同居人がいた」という事態を防ぐためです。

宅建業法上のルール

宅建業法上の広告規制は、大きく分けて「誇大広告の禁止」「広告開始時期の制限」「取引態様の明示」の3つです。

・誇大広告の禁止
誇大広告の禁止は、嘘をついたり誤解されるような書き方をしたりしてはいけないということだと考えてください。具体例としておとり広告が挙げられます。すでに契約済みの物件を引き続きインターネット広告などに載せて興味を持って連絡をくれた人に別の物件を紹介するような行為のことです。これは虚偽表示にあたります。

・広告開始時期の制限
建築確認申請中の物件を募集することにも制限があります。契約そのものはできますが、募集広告を打つことはできません。

・取引態様の明示
取引態様の明示は「代理なのか」「仲介なのか」「直接契約なのか」という区別を書かなければならないということです。

不動産の表示に関する公正競争規約施行規則

不当景品類および不当表示防止法(景品表示法)は業界で自主規制ルール(公正競争規約)を作ることを認めています。宅建業法の規制は「嘘や不確実なことを書くな」というざっくりしたものです。しかしこちらはより細かく、表示すべき項目について定めています。冒頭の4つの表示例は、この自主規制ルールにもとづいて述べました。ほかにも次のような決まりがあります。

よく見かける「〇〇駅徒歩◯分」という表示は、80メートルを1分として換算したものです。最寄りのバス停を書く場合には、最寄り駅からバスに乗る時間と、バス停から徒歩でかかる分数を記載しなければなりません。中古物件の場合は築年月も書く必要があります。「広い」「明るい」「スーパーが近い」などの主観的な表現はNGです。

チラシの文字サイズは基本的に7ポイント(約2.5ミリメートル四方)という決まりまであります。ほかにも細かいルールが山ほどあるため、不動産広告は検討している人を誤解させないよう明確に表示しなければなりません。

募集広告の作成には細心の注意を

賃貸募集の広告は、宅建業法と景品表示法によって細かなルールが定められています。例えば賃料の値下げをうたう内容は、二重表示の禁止に抵触するおそれがあります。違反広告とならないよう細心の注意を払って募集しなければなりません。(提供:ビルオーナーズアイ