2018年4月1日に改正宅建業法が施行されました。

改正のポイントは、既存(中古)住宅を売買する際、媒介契約を受託する宅建業者が売主・買主に対して、ホームインスペクション(住宅診断・条文では「建物状況調査」)についての説明することが義務化されたことです。中古住宅の購入を検討している人にとっては、非常に重要な法改正と言えるでしょう。

日本の不動産は新築偏重であり、優良な中古物件が流通する環境が確立していないことや、空き家対策が今後の住宅政策として最重要課題となっていることが法改正の背景にあります。新築から中古へのシフトを促す住宅政策の中で、中古住宅を安全に売買できる環境をつくるために定められたのが、ホームインスペクションについての説明義務なのです。

ただし、ホームインスペクションの実施自体が義務なのではなく、売買を仲介する宅建業者がそれについて説明する義務があるという点に注意が必要です。

ホームインスペクションの概要

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(画像=jeffy11390/Shutterstock.com)

ホームインスペクションは売主、買主のどちらが実施しても構いませんが、買主が行う場合は売主の了解が必要です。

売主側が実施する場合は、物件の瑕疵担保責任を問われないようにする目的や、保証を付けることで売りやすくする目的が考えられます。

①:売主に対してホームインスペクションをするかどうかを確認し、実施する場合は専門業者を斡旋するかどうかを伝える。

②:対象物件が過去にホームインスペクションを実施したことがあるかどうかを説明する。実施している場合は調査結果の概要も説明する。

③:建物の構造上の主要部分の調査結果について、売主と買主双方が確認し、確認した事項について書面に記載して交付する。

上記の3点が義務化されたことで、売主・買主は専門家による建物の調査報告を確認することができ、お互い納得した上で中古物件を売買できるようになりました。

ホームインスペクションのポイント

建物状況調査は一定の講習を修了した建築士だけが担当できることになりましたが、建築士にとっても未経験の新業務であり、現時点ではスキルに差があるようです。したがって、建物状況調査の依頼先は十分に比較検討して選ぶ必要があります。

国土交通省のガイドラインでは、「建物状況調査を実施する調査員は仲介業者と資本関係などがある場合は、中立性の確保のためにその事実を依頼者に説明して了解を得なければならない」とされています。

実際は、仲介業者と何らかの関係がある調査員が多く、その場合は調査結果の信憑性に疑問が残ります。ちなみに、欧米では中立的第三者の調査員が実施しています。

現時点でホームインスペクションには、以下の4種類があります。それぞれ調査範囲が微妙に異なるので注意してください。

①:民間検査会社が実施するホームインスペクション
最も広い範囲を調査しますが、調査範囲や調査方法、使用する検査機器は調査会社によって異なるので比較検討が必要です。

②:建物状況調査
宅建業法で定められたホームインスペクションで、定められた範囲を調査します。

③:既存住宅売買瑕疵保険の現場検査
既存住宅の売買について、引き渡し後に雨漏れなどが発見された場合に保険金が支払われますが、この保険を利用するためには一定の現場検査を受けて適合判定を得る必要があります。

既存住宅売買瑕疵保険が付保された既存住宅については、築年数にかかわらず新築住宅並みの各種減税が利用できます(登録免許税・住宅ローン控除・住宅取得資金等贈与の特例等)。

また、この現場検査に適合することは2018年4月に開始された「安心R住宅」の要件になっています。「安心R住宅」とは、一定要件を満たした既存住宅を国が定めた標章(ロゴマーク)を使用し、良質な住宅として広告活動ができる制度です。

④:長期優良住宅化リフォームのための現場検査
既存住宅に長期優良住宅化リフォームを施して補助金を受け取ろうとする場合は、事前に現場検査を受けなければなりません。

ホームインスペクションの実施状況

前項の①から④のうち、③と④には金銭的なメリットがあるので、このメリットを享受したい人はホームインスペクションを実施する可能性があります。

②建物状況調査は、単に取引の安全性・透明性を確保するものであって金銭的メリットはありませんし、不動産業者にとっても説明事項が増えるだけでメリットはありません。よって、不動産業者は建物状況調査を積極的には推奨していないのが現状です。

実際は、①のホームインスペクションの依頼が増えています。「建物状況調査をするなら、もっと広範囲を診断してもらったほうがいい」と考える人が多いのでしょう。

いずれにしても始まったばかりの制度であり、今後少しずつ使い勝手が良くなっていくと思われます。4つのホームインスペクションの違いを理解した上で、安心して中古住宅を売買できるよう、うまく活用していきましょう。(提供:YANUSY

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