住宅ローン金利が過去最低を更新するなか、住宅ローンの借り換えを検討している人もいるだろう。借り換えの難点は、借り換えコストによっては、単に金利が下がったからといって、メリットがあるとは限らない点だ。どのような条件を満たせば借り換えによるメリットを得られるだろうか。

住宅ローン,借り換え
(画像=Monster Ztudio/Shutterstock.com)

目次

  1. 1.住宅ローン借り換えの5つのメリット
    1. 1-1.メリット1……住宅ローンの返済額を減らせる
    2. 1-2.メリット2……住宅ローンの返済期間を短縮できる
    3. 1-3.メリット3……変動金利から長期固定金利へ切り替えて返済額を確定できる
    4. 1-4.メリット4……団体信用生命保険(団信)の保障内容を変更できる
    5. 1-5.メリット5……リフォーム資金をあわせて借り入れられる
  2. 2.住宅ローン借り換えの2つのデメリット
    1. 2-1.デメリット1……諸費用がかかる
    2. 2-2.デメリット2……手続きに手間がかかる
  3. 3.住宅ローンを借り換えるべきかの判断基準は2つ
    1. 3-1.住宅ローンの返済負担が減るかどうか
    2. 3-2.金銭面以外のメリットもあるか
  4. 4.住宅ローンの借り換え先を選ぶ際の3つのポイント
    1. 4-1.ポイント1……金利の低さ
    2. 4-2.ポイント2……保証料・事務手数料の安さ
    3. 4-3.ポイント3……団体信用生命保険(団信)の保障内容と保険料
  5. 5.住宅ローンの借り換え先候補になる銀行を3つのポイントで比較
    1. 5-1.住信SBIネット銀行……全疾病保障の団信を金利の上乗せなしで基本付帯
    2. 5-2.じぶん銀行……がん50%団信を金利の上乗せなしで付帯可能
    3. 5-3.イオン銀行……住宅ローン利用者にはグループ各店での買い物が5%オフになる特典も
    4. 5-4.ジャパンネット銀行……変動金利と借入期間10年以下の固定金利が業界最低水準
    5. 5-5.りそな銀行……店頭でもWEBでも契約が可能で利便性が高い
  6. 6.住宅ローンは現在利用している銀行と交渉して金利が下がるケースも

1.住宅ローン借り換えの5つのメリット

住宅ローンの借り換えによるメリットとして次の5つがあげられる。

1-1.メリット1……住宅ローンの返済額を減らせる

借り換えの最も大きなメリットは返済額を減らせることだ。今借りている金利よりも低い金利の住宅ローンに借り換えれば、利息負担を抑えて毎月の返済額を減らすことができる。

たとえば借入残高2,500万円、残り返済期間25年、金利年2.2%の住宅ローン(元利均等返済・ボーナス返済なし)を、金利1.2%の住宅ローンに借り換えた場合の負担軽減効果は以下の表のようになる。

借り換えにより毎月の返済額は1万1,916円減り、総返済額は約356万円減少する。諸費用を差し引いても約280万円の負担軽減効果がある。

毎月の返済額を下げる場合
  借り換え前 借り換え後
借入残高 2,500万円 2,500万円 -
借入期間 25年 25年 -
借入金利 (固定)年2.2% (固定)年1.2% ▲年1.0%
毎月返済額 10万8,414円 9万6,498円 ▲1万1,916円
総返済額 3,252万4,230円 2,895万9,357円 ▲356万4,873円
借り換え諸費用 - 76万2,000円 +76万2,000円
諸費用を含めた増減額 ▲280万2,873円

※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算
※借り換えに伴う諸費用は一般的な金額(抵当権設定・抹消費用、事務取扱手数料、その他登記関連費用、印紙税)。金融機関によって現在の住宅ローンを完済(一括繰上返済)するための手数料が別途必要。

1-2.メリット2……住宅ローンの返済期間を短縮できる

月々の返済額を変えずに、返済期間を短縮することもできる。

先ほどと同じ条件で毎月の返済額を減らさず借り換えを行えば、返済期間を3年短縮できる。65歳で完済予定のローンであれば、62歳で完済できる。この年齢での3年は大きい。

総返済額は約405万円減少し、諸費用を差し引いた負担軽減額は約330万円。返済期間を短縮するほうが毎月の返済額を下げるよりも利息軽減効果は高い。

返済期間を短縮する場合
  借り換え前 借り換え後
借入残高 2,500万円 2,500万円 -
借入期間 25年 22年 ▲3年
借入金利 (固定)年2.2% (固定)年1.2% ▲年1.0%
毎月返済額 10万8,414円 10万7,793円 ▲621円
総返済額 3,252万4,230円 2,846万7,197円 ▲405万7,033円
借り換え諸費用 - 76万2,000円 +76万2,000円
諸費用を含めた増減額 ▲329万5,033円

※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算
※借り換えに伴う諸費用は一般的な金額(抵当権設定・抹消費用、事務取扱手数料、その他登記関連費用、印紙税)。金融機関によって現在の住宅ローンを完済(一括繰上返済)するための手数料が別途必要。

1-3.メリット3……変動金利から長期固定金利へ切り替えて返済額を確定できる

現在、変動金利の住宅ローンを利用している人は、長期固定金利の住宅ローンへ借り換えることで返済額を確定できる。将来金利が上昇して返済額が増えてしまうのが不安な人にとっては、変動金利と固定金利の金利差が縮まっている今のタイミングは借り換えのチャンスといえる。

金利タイプの選択は、金利上昇による返済額の増加にどの程度対処できるか(リスク許容度)や、残りの返済期間などを考慮して慎重に判断しなければならない。

固定金利は金利上昇リスクを回避できる、いわば「保険付」の金利。一方で、金利の変動が小さければ固定金利は変動金利に比べ高くついてしまう。

住宅ローン金利は今が底だといわれ続けながら、ここ20年以上ほとんど変化していない。むしろ長引く低金利政策の影響で過去最低を更新し続けている。結果的にみれば30年前にローンを組むなら変動金利を選ぶべきだったといえるのだ。

もちろん今後、金利が上昇する可能性は十分ある。しかしそれがいつなのかはわからない。なるべく低い変動金利で住宅ローンを借りて、余った資金は貯蓄や運用に回し、金利が上昇に転じたタイミングにはその資金を繰上返済に充てて負担を抑えるという方法もある。

1-4.メリット4……団体信用生命保険(団信)の保障内容を変更できる

住宅ローンの借り換えとあわせ、団体信用生命保険(団信)の保障内容を充実させることもできる。原則として、団信の保障内容は一度加入するとローン返済中に変更できないため、借り換えによるメリットのひとつといえるだろう。

団信は住宅ローンの返済期間中に利用者が死亡もしくは高度障害状態となった場合に保険金が支払われ、住宅ローン債務が免除される保険商品だ。最近ではがんと診断された場合や生活習慣病で就業障害などが継続した場合、要介護状態となった場合などにローンが免除される商品も増えている。

団信に加入するには審査があり、健康状態によっては加入できない場合もある。保障内容によって金利が上乗せされる場合もあり、その保障が本当に必要なのかよく考えて判断しなければならない。民間の生命保険に加入している場合には保障内容の重複がないか確認も必要だ。

たとえばフラット35の場合をみてみよう。提示されている金利には、利用者が死亡もしくは身体障害状態になった場合にローンが免除される「新機構団信」の保険料が含まれている。これまでの高度障害保障から身体障害保障になることで、より該当要件が緩くなり、高度障害保障を要件とする一般的な団信より充実した保障となった。

0.24%の金利上乗せにより、さらに保障の充実した「新3大疾病付機構団信」に加入することもできる。新3大疾病付機構団信では、新機構団信の条件に加え、がん・急性心筋梗塞・脳卒中が原因で一定の状態に該当した場合や要介護2以上となった場合にもローンが免除される。

保障内容による上乗せ金利の例 *フラット35(買取型)の場合
加入する団信の種類 保障内容 金利
新機構団信 死亡・身体障害 上乗せなし
デュエット〈夫婦連生団信〉 連帯債務者である夫婦2人いずれかの死亡・身体障害 借入金利
+年0.18%
新3大疾病付機構団信 死亡・身体障害・3大疾病・介護 借入金利
+年0.24%
健康上の理由その他事情により機構団信に加入しない場合 借入金利
▲年0.2%

※住宅金融支援機構ホームページを基に筆者作成

1-5.メリット5……リフォーム資金をあわせて借り入れられる

リフォームを検討しているのなら、もとの住宅ローン残高にリフォーム資金を上乗せした金額で借り換え先の住宅ローンを組むことができる。

リフォームローン単独の金利は一般的に住宅ローンよりも高く、扱う金融機関や借入期間、借入金額などの条件も限られる。借り換えをすることで、住宅ローンと同じ条件で借り入れできるメリットは大きい。

<リフォームローンと住宅ローンの金利を比較(三菱UFJ銀行の場合)>
・リフォームローン(変動金利・保証料込)……年1.99%~年2.875%
・住宅ローン(変動金利・保証料込)……年0.725%

2.住宅ローン借り換えの2つのデメリット

住宅ローンの借り換えはデメリットも考えた上で判断しなければならない。借り換えのデメリットとしては次のようなものがある。

2-1.デメリット1……諸費用がかかる

借り換えでは現在の住宅ローンの完済と新たな住宅ローンの契約手続きに、以下のような費用がかかる。

現在の住宅ローンを完済するために必要な費用
一括繰上返済手数料 現在の住宅ローンを完済するために銀行に支払う手数料。0~5万円程度。
抵当権抹消費用 登録免許税 土地・建物1個あたり1,000円
司法書士報酬 設定済み抵当権1件につき2万円程度

※住信SBIネット銀行のホームページを基に筆者作成

新たに住宅ローンを契約するために必要な費用
保証料・事務手数料
保証会社を利用する金融機関では保証料+数万円程度の事務手数料、利用しない金融機関では事務手数料のみが必要となる。
支払方法には「一括前払い型」と「金利上乗せ型」がある。
一括前払い型の場合、事務取扱手数料の相場は借入金額の2%程度、保証料は借入金額・期間により異なる(借入期間30年で約2%が相場)。
抵当権設定費用 登録免許税 抵当権設定額(借入額)の0.4%
司法書士報酬 6~10万円程度
印紙税 数万円程度。借入金額1,000万円超5,000万円以下の場合は2万円。電子契約利用で無料としている銀行もある。

※住信SBIネット銀行のホームページを基に筆者作成

借り換えにかかる諸費用は銀行や借入金額などによって異なるが、数十万円程度かかるケースが多い。借り換えによるメリットがあるかどうかは、軽減される利息額からこれら諸費用を差し引いて判断しなければならない。

例として、借入金額2,500万円(土地・建物)、みずほ銀行から住信SBIネット銀行へ借り換える場合をみてみよう。

借り換えにかかる諸費用の例(概算・税込)
一括繰上返済手数料 3万2,400円
抵当権抹消費用 登録免許税 土地・建物(各1,000円×2) 2,000円
司法書士報酬 2万円
保証料・事務取扱手数料 事務取扱手数料(借入金額の2.16%) 54万円
抵当権設定費用 登録免許税 抵当権設定額(借入額)の0.4% 10万円
司法書士報酬 6万円
印紙税 2万円
合計 77万4,400円

※司法書士報酬は依頼する司法書士によって差がある
※みずほ銀行・住信SBIネット銀行ホームページを基に筆者作成

借り換えに伴う諸費用をすぐに用意できない場合には、新たに契約する住宅ローンの借入金額に含めて契約する方法や、諸費用ローンを利用する方法などがある。

諸費用ローン単体の金利は、たとえば三菱UFJ銀行の場合で、年4.475%(2019年9月1日現在)と住宅ローンに比べ高い。基本的には住宅ローンに上乗せして借りるほうが有利といえる。借入期間が長くなれば利息が膨らむため注意も必要だ。

2-2.デメリット2……手続きに手間がかかる

住宅ローンの借り換えには、現在の住宅ローンの完済と新規借り入れの手続き、抵当権の抹消、設定に伴う登記手続きなどが必要だ。そのために必要な書類を準備したり、手続きのため関係機関に出向いたりする手間がかかる。

また、借り換えには審査も必要だ。申込から審査、借り換え(融資実行)までに通常は1カ月程度、場合によってはそれ以上かかることもある。

3.住宅ローンを借り換えるべきかの判断基準は2つ

住宅ローンの借り換えでは多少金利が下がったとしても、諸費用も含めた全体でメリットがあるとは限らない。借り換えすべきかの判断基準としては次のようなものがある。

3-1.住宅ローンの返済負担が減るかどうか

借り換えで返済負担が減るかどうかは最も重視すべきポイントだ。次のいずれかの条件を満たしていれば借り換えによる金銭的メリットが期待できる。

⑴金利が1%以上下がる
⑵借入残高が1,000万円以上ある
⑶返済期間が10年以上残っている

⑴~⑶までを、住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて試算し、比較してみよう。(※返済期間中の金利変動はないと仮定)これらはあくまで簡易的な目安であり絶対的な基準ではない。諸費用も含めた返済総額をシミュレーションして実際に自分で確認することが大切だ。

⑴金利差による借り換え効果比較
  借り換え前 借り換え後
▲年0.5% ▲年0.7% ▲年1.0%
借入残高 1,000万円
借入残期間 10年
借入金利 年2.0% 年1.5% 年1.3% 年1.0%
毎月返済額 9万2,013円 89,791円 8万8,912円 8万7,604円
総返済額 1,104万1,557円 1,077万9,853円 1,067万3,693円 1,051万5,719円
借り換え諸費用 36万8,000円
諸費用を含めた増減額 +10万6,296円 +136円 ▲15万7,838円
⑵借入残高による借り換え効果比較
  借り換え前 借り換え後 借り換え前 借り換え後
借入残高 1,000万円 1,500万円
借入残期間 10年
借入金利 年2.0% 年1.3% 年2.0% 年1.3%
毎月返済額 9万2,013円 8万8,912円 13万8,020円 13万3,368円
総返済額 1,104万1,557円 1,067万3,693円 1,656万2,358円 1,601万580円
借り換え諸費用 - 36万8,000円 - 50万6,000円
諸費用を含めた増減額 +136円 ▲4万5,778円
⑶借入期間による借り換え効果比較
  借り換え前 借り換え後 借り換え前 借り換え後
借入残高 1,000万円
借入残期間 10年 20年
借入金利 年2.0% 年1.3% 年2.0% 年1.3%
毎月返済額 9万2,013円 8万8,912円 5万588円 4万7,340円
総返済額 1,104万1,557円 1,067万3,693円 1,214万1,072円 1,136万5,784円
借り換え諸費用 - 36万8,000円 - 36万8,000円
諸費用を含めた増減額 +136円 ▲40万7,288円

※元利均等返済・ボーナス返済なし、借り換えに伴う諸費用は一般的な金額(抵当権設定・抹消費用、事務取扱手数料、その他登記関連費用、印紙税)。金融機関によって現在の住宅ローンを完済(一括繰上返済)するための手数料が別途必要。
※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算

3-2.金銭面以外のメリットもあるか

以下のような希望がある場合、住宅ローンの借り換えと同時に行えばメリットは増す。

・長期固定金利へ切り替えたい
・団信の保障内容を充実させたい
・リフォーム資金を低金利で借りたい

これらの目的のためだけに負担を増やしてまで借り換えを行うのは賢明とはいえない。あくまで借り換えによる金銭的なメリットがあることが前提だ。

現在の金利タイプが変動金利であれば、いつでも固定金利へ変更できるし、保障を充実させるには民間保険に加入する方法もあることは知っておこう。

4.住宅ローンの借り換え先を選ぶ際の3つのポイント

借り換え先となる住宅ローンを選ぶ際のポイントとしては、「金利」「保証料・事務手数料」「団体信用生命保険(団信)」の3つがある。

4-1.ポイント1……金利の低さ

借り換え先としてはなるべく金利の低い住宅ローンを選びたい。金利の低い銀行は借入期間など借り入れ条件によっても違ってくるため、自分の条件にあわせ比較して選ぶことが大切だ。比較、検討する際には次のような点に注意してほしい。

・同じ金利タイプ同士で比較する
金利を比較する際は同じ金利タイプ同士で比較しなければならない。金利は一般的に変動リスクの大きさに応じて、変動型<固定期間選択型金利<全期間固定型の順で高くなる。金利タイプが違えば金利相場も異なるため、希望する金利タイプで条件を揃えて比較しなければ意味がない。

・保証料や団信保険料が金利に含まれているかを確認
保証会社に支払う保証料や団信の保険料は、金利に上乗せされるタイプと別途支払うタイプがある。金利を比較する際には、表示されている金利にこれらが含まれているかを確認した上で、こうした条件も揃えて比較することが大切だ。

・固定型から変動型への借り換えは将来の金利上昇リスクを負うことに注意
固定型から変動型への借り換えでは、固定型から固定型への借り換えに比べて金利が大きく下がり、高い利息軽減効果が期待できる。一方で新たに金利の上昇リスクを負うことになる。目先の金利の低さを優先すれば変動金利のほうが有利だが、リスクが増すことを理解しておかなければならない。

4-2.ポイント2……保証料・事務手数料の安さ

借り換えに必要となる「保証料」「事務手数料」は銀行や支払い方法によって差が出やすい。

・メガバンクや地銀などは保証料がかかる場合が多い
保証料は住宅ローンの返済ができなくなるリスクに備え保証会社に支払うもの。返済不能となった場合には、債務者(住宅ローン利用者)に代わって保証会社が銀行への支払いを行う。債権者が銀行から保証会社に移るだけで、住宅ローンが免除されるわけではない。あくまで銀行の貸し倒れリスクに備えるための保証である。

保証会社を利用するのはメガバンクや地銀など従来型の銀行が中心で、ネット銀行などは保証会社を利用せず保証料を無料にしている銀行が多い。

保証料は借入金額や借入期間によって決まる。契約時に保証料を一括で支払っている場合、繰上返済によって借入期間が短縮されれば短縮された期間に応じた保証料が戻ってくる。

・ネット銀行などは事務手数料が割高な場合が多い
事務手数料は保証料が必要な銀行では数万円程度だが、ネット銀行などでは保証料が不要である代わりに借入金額の2%程度かかるのが一般的だ。

事務手数料が借入金額の2%とすると、借入金額3,000万円に対し60万円。保証料が不要とはいえ負担は大きい。

一方、一度支払った事務手数料は保証料と違い、繰上返済しても戻ってこない。

・借入期間が短いと保証料よりも事務手数料が割高になりやすい
借入金額と借入期間に応じて決まる保証料に対し、事務手数料は借入期間によらず借入金額のみで決まる。借り入れ条件が同じであれば、借入期間が短いほど事務手数料は割高になりやすい。

事務手数料が必要となる銀行では、借入期間によっては借り換えコストがかさむこともあり注意が必要だ。

借入金額1,000万円、元利金等返済(返済期間中の金利変動なし、ボーナス返済なし)の場合の保証料、事務手数料を具体的にみてみよう。たとえばメガバンクであるみずほ銀行では、以下の保証料のほか、3万2,400円の事務手数料が必要になる。ネットバンクである住信SBIネット銀行の場合は保証料不要で、以下の事務手数料のみがかかる。

保証料・事務手数料の例
保証料(みずほ銀行の場合)
返済期間 前払い方式*1 金利上乗せ方式
借入金利
+年0.2%
返済額の増加 *2
(年1%→1.2%の場合)
5年 4万5,800円~16万0,290円 5万2,412円
10年 8万5,440円~29万9,090円 10万5,159円
15年 11万9,820円~41万9,450円 15万9,724円
20年 14万8,340円~51万9,280円 21万6,113円
25年 17万2,540円~60万4,060円 27万4,352円
30年 19万1,370円~66万9,820円 33万4,348円
事務手数料(住信SBIネット銀行の場合)
21万6,000円
(借入金額の2.16%)

*1 審査結果によって保証料は異なる(みずほ銀行のホームページ)
*2 住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が増加額を試算

・手数料の定額型と定率型の選択は、利息と手数料をあわせた額で判断
手数料の計算方法には借入金額に一定の手数料率をかけて手数料を計算する「定率型」と、借入金額によらず一定の少額の手数料となる「定額型」がある。手数料タイプを自分で選択できる銀行もある。

定率型では借入金額が大きいほど手数料が多くなる。金利は定率型のほうが定額型よりも低く設定されるため、定額型のほうが利息は多くなる。どちらの手数料タイプが有利かは利息と手数料をあわせた全体の負担の大きさで判断しなければならない。

たとえばイオン銀行の住宅ローンの場合、手数料定額型の金利は手数料定率型に比べ年0.2%高く設定されている。借入金額が2,000万円(返済期間中の金利変動なし、元利均等返済、ボーナス返済なし)であれば、借入期間16年以上の場合には定率型が、借入期間15年以下の場合には定額型が有利になる。

手数料定額型・定率型比較(イオン銀行の場合)
借入期間 (A)手数料定率型
(金利年0.47%・変動)
(B)手数料定額型
(金利年0.67%・変動)
差額
(A−B)
事務手数料(税込)
 43万2,000円
(借入金額の2.16%)
10万8,000円
支払総額(元金+利息+事務手数料)
10年 2,091万2,622円
(内利息 48万622円)
2,079万5,406円
(内利息 68万7,406円)
+11万7,216円
16年 2,120万328円
(内利息 76万8,328円)
2,120万9,034円
(内利息 110万1,034円)
▲8,706円
20年 2,139万3,611円
(内利息 96万1,611円)
2,148万7,772円
(内利息 137万9,772円)
▲9万4,161円

*イオン銀行のホームページと、住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算

4-3.ポイント3……団体信用生命保険(団信)の保障内容と保険料

団信の保障内容や保険料負担の有無も重要な比較ポイントだ。

死亡・高度障害の保障にかかる団信保険料は、通常は銀行が提示する金利に含まれ(団信保険料を銀行が負担する)、保障を充実させるには年0.1%~0.3%程度金利が上乗せされるのが一般的だ。しかし、全疾病保障が基本付帯される住信SBIネット銀行など、保障の充実した団信を金利の上乗せなしで提供している銀行もある。

・金利上乗せ型の団信は負担がどのくらいになるか確認
金利上乗せ型の団信は借入金額や借入期間が長くなるほど負担は大きくなる。団信に加入してからでは変更できないため、加入前に負担を確認しておかなければならない。

下の表をみると、借入金額2,000万円・借入期間20年・借入金利年1.0%の住宅ローン(返済期間中の金利変動なし、元利均等返済、ボーナス返済なし)の場合、金利が年0.3%上乗せされると総返済額は65万340円(月額換算で2,702円)増えることがわかる。

金利上乗せによる負担増加額の比較
借入金額 借入期間 金利
年1.0% 年1.1%
(+0.1%)
年1.3%
(+0.3%)
1,000万円 10年 1,051万5,719円 1,056万8,211円
(+5万2,492円)
1,067万3,693円
(+15万7,974円)
20年 1,104万636円 1,114万8,364円
(10万7,728円)
1,136万5,784円
(+32万5,148円)
2,000万円 20年 2,208万1,390円 2,229万6,849円
(+21万5,459円)
2,273万1,730円
(+65万340円)

※カッコ内は金利年1.0%の場合と比較した増加額
※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算

・保険料支払型の団信もある
三菱UFJ銀行「7大疾病保障付住宅ローン(保険料支払型)」のように、保険料を金利に上乗せするのではなく別途支払うタイプの商品もある。借入金額2,000万円(元利均等返済・ボーナス返済なし)、借入金利1.5%、返済期間35年、30歳男性の場合、月額保険料は以下のように推移する。

三菱UFJ銀行「7大疾病保障付住宅ローン」(保険料支払型)
加入時
(30歳)
5年後
(35歳)
10年後
(40歳)
15年後
(45歳)
20年後
(50歳)
25年後
(55歳)
30年後
(60歳)
144円 281円 573円 1,092円 1,731円 2,387円 2,279円

5.住宅ローンの借り換え先候補になる銀行を3つのポイントで比較

各銀行の住宅ローンを上記の3つのポイント(「金利」「手数料」「団信」)で実際に比較してみよう。

5-1.住信SBIネット銀行……全疾病保障の団信を金利の上乗せなしで基本付帯

住信SBIネット銀行では、「住宅ローンWEB申込コース」「ミスター住宅ローンREAL(対面)」「フラット35」の3種類の住宅ローンを取り扱う。ネット銀行でありながら対面で相談できるのが特徴だ。

「住宅ローンWEB申込コース」「ミスター住宅ローンREAL(対面)」には、新規借り入れに比べ低い借り換え金利が設定されている。団信には病気やけがで働けなくなった場合まで保障する全疾病保障が金利の上乗せなく基本付帯されている。

住信SBIネット銀行「住宅ローンWEB申込コース」
「ミスター住宅ローンREAL(対面)」
金利 変動(通期引下げプラン) 年0.428%
固定10年(当初引下げプラン) 年0.660%
固定20年(当初引下げプラン) 年1.210%
保証料 不要
事務手数料(税込) 借入金額の2.16%
団信 保障内容 上乗せ金利
死亡・高度障害・全疾病保障 上記金利に含む
住信SBIネット銀行「フラット35」
金利 フラット35 借り換え
(借入期間20年)
【買取型】年1.05%
【保証型】年0.92%
保証料 不要
事務手数料(税込) 【買取型】借入金額の0.972%
【保証型】借入金額の2.16%
団信
(買取型の場合)
保障内容 上乗せ金利
死亡・身体障害 上記金利に含む
連帯債務者である夫婦2人いずれかの死亡・身体障害 上記金利+0.18%
死亡・身体障害・3大疾病・介護 上記金利+0.24%

※住信SBIネット銀行のホームページを基に筆者が作成、2019年9月10日時点

5-2.じぶん銀行……がん50%団信を金利の上乗せなしで付帯可能

じぶん銀行の住宅ローンは変動金利だけでなく、固定10年や固定20年の金利にも競争力がある。がんと診断された場合に住宅ローン残高の50%が免除される「がん50%団信」を金利の上乗せなしで付帯できるのも特徴だ。

じぶん銀行は三菱UFJ銀行とKDDIが共同出資してできた銀行。auユーザーは「au住宅ローン」経由でじぶん銀行の住宅ローンに申し込むことで、最大4万円相当の特典を受けられる(auスマホ:毎月500円のキャッシュバック×最大60カ月、auでんき:1万円相当のポイント還元)。

じぶん銀行「住宅ローン」
金利 変動(全期間引下げプラン) 年0.457%
固定10年(当初期間引下げプラン) 年0.590%
固定20年(当初期間引下げプラン) 年0.841%
保証料 不要
事務手数料(税込) 借入金額の2.16%
団信 保障内容 上乗せ金利
死亡・高度障害(一般団信) 上記金利に含む
死亡・高度障害・がん・すべてのけが・病気で入院継続180日以上で
ローン残高の50%免除(がん50%団信)
上記金利に含む
死亡・高度障害・がん・すべてのけが・病気で入院継続180日以上(がん100%団信) 上記金利+0.2%
死亡・高度障害・がん・10種の生活習慣病で入院継続180日以上、
がん診断・入院一時金(11疾病保障団信)
上記金利+0.3%

※じぶん銀行のホームページを基に筆者が作成、2019年9月10日時点

5-3.イオン銀行……住宅ローン利用者にはグループ各店での買い物が5%オフになる特典も

イオン銀行では変動金利に借り換え専用金利が設定されている。事務手数料は定額型を選択でき、借入金額や借入期間によっては有利になる可能性がある。

イオン銀行の住宅ローン利用者はイオンやマックスバリューなどイオングループ各店での買い物金額が最長5年間毎日5%オフとなる特典などもある。

イオン銀行「住宅ローン」
金利 変動(通期引下げプラン) 年0.47%
固定10年(当初引下げプラン) 年0.69%
保証料 不要
事務手数料(税込) 【定額型】10万8,000円
(金利は上記+年0.2%)
【定率型】借入金額の2.16%
(最低手数料21万6,000円)
団信 保障内容 上乗せ金利
死亡・高度障害 上記金利に含む
死亡・高度障害・がん 上記金利+0.1%
死亡・高度障害・8大疾病 上記金利+0.3%

※イオン銀行のホームページを基に筆者が作成、2019年9月10日時点

5-4.ジャパンネット銀行……変動金利と借入期間10年以下の固定金利が業界最低水準

ジャパンネット銀行では2019年7月から新たに住宅ローンの取り扱いを開始した。変動や借入期間10年以下の固定金利は、業界最低水準を打ち出している。

団信はじぶん銀行と同じような保障内容を選択できる(引受保険会社が同じ)。ただしじぶん銀行では「がん50%団信」に金利上乗せは不要だが、ジャパンネット銀行では0.1%の金利上乗せが必要になる。

ジャパンネット銀行「住宅ローン」
金利 変動(全期間引下げプラン) 年0.415%
固定10年(当初期間引下げプラン) 年0.580%
固定20年(当初期間引下げプラン) 年1.240%
保証料 不要
事務手数料(税込) 借入金額の2.16%
団信 保障内容 上乗せ金利
死亡・高度障害(一般団信) 上記金利に含む
死亡・高度障害・がんと診断された場合・余命6カ月以内と診断された場合に
ローン残高の50%免除(がん50%団信)
上記金利+0.1%
死亡・高度障害・がんと診断された場合・余命6カ月以内と診断された場合にローン残高全額免除。
がん診断給付金あり。(がん100%団信)
上記金利+0.2%
死亡・高度障害・がんと診断された場合・余命6カ月以内と診断された場合・
10種の生活習慣病で入院継続180日となった以上にローン残高免除。
がん診断確定・入院で一時金給付。(11疾病保障団信)
上記金利+0.3%

※ジャパンネットのホームページを基に筆者が作成、2019年9月10日時点

5-5.りそな銀行……店頭でもWEBでも契約が可能で利便性が高い

りそな銀行の「りそな借りかえローン(WEB申込限定プラン)」は変動金利、固定10年・20年で高い競争力を持つ。WEB申込限定プランとなってはいるものの、WEBでみたと店頭で伝えれば同じ金利が適用される。近くに店舗があり対面で相談したいという人のニーズにも対応している。抵当権設定以外の手続きはWEBと電話のみで完結させることもできる。

りそな銀行「住宅ローン」
金利 変動(全期間型) 年0.429%
固定10年(当初型) 年0.550%
固定20年(当初型) 年0.850%
保証料 【融資手数料型】
不要
【保証料一括前払い型】
借入期間・借入金額により決まる
【金利上乗せ型】
上記金利+0.2%
事務手数料(税込) 【共通】
不要
【融資手数料型】
借入金額の2.16%
団信 保障内容 上乗せ金利
死亡・高度障害(一般団信) 上記金利に含む
死亡・高度障害・3大疾病 上記金利+0.25%
死亡・高度障害・3大疾病・病気・けがによる16の状態・要介護状態(団信革命) 上記金利+0.30%
(所定の条件*1を満たす場合には+0.25%)

※りそな銀行のホームページを基に筆者が作成、2019年9月10日時点
*1融資手数料型を選択・団信革命に加入・マイゲート(個人向けネットバンキング)利用のすべてを満たす場合

6.住宅ローンは現在利用している銀行と交渉して金利が下がるケースも

金利を下げるには現在利用している銀行と直接交渉する方法もある。金利条件の変更であればローンの完済や新規契約が必要なく、コストはほとんどかからない。

金利を下げてもらえるかは銀行の判断によるが、これまでの返済実績などが評価されれば可能性はゼロではない。他行へ借り換えた場合の見積もりや仮審査の結果などを持参すると交渉がスムーズだ。現在の銀行で金利の引下げが難しいようなら、改めて借り換えを検討すればよい。

住宅ローンは金額が大きいだけにちょっとした条件の違いが大きな差になる。借り換えや交渉によって必ずしもメリットが得られるとは限らないが、定期的に見直すことでその可能性は高まる。借り換えのシミュレーションをするだけならお金はかからない。住宅ローンを返済中の人は、今一度住宅ローンを見直してみてはどうだろうか。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

【関連記事 MONEY TIMES】
iDeCo(イデコ)を40代から始めるのは遅いのか
iDeCo(イデコ)をSBI証券で始める場合の手数料は?他の証券会社と比較
楽天証券でiDeCo(イデコ)を始めるメリット
クレジットカード「VISA」はどんなブランドなのか?
ポイント還元率の高いクレジットカード11選