クレカではなく現金、ゴルフではなくジョギング

ここからは、1,000万円プレーヤーの行動や思考のパターンを見ていこう。まずは、「お金」について。お金持ちといえばクレジットカードでお買い物、というイメージがあるかもしれないが、平均年収層(年収400万~500万円未満)と1,000万円プレーヤー(年収1,000万~1,100万円未満)を対象にしたiXの調査では、そうではないという結果が出た。

「平均年収層の方389名と1,000万円プレーヤーの方394名に調査した結果、現金を持ち歩いていない人は、平均年収層で2.8%なのに対して、1,000万円プレーヤーでは、さらに低い1.4%でした。

1,000万円プレーヤーには、支出をきちんと管理する堅実な方が多いのだと思います。年齢的にお子さんのいる方も多いですし、所得が1,000万円を超えると納税額も上がって、可処分所得はそれほど増えないことを実感されている影響もあるでしょう。

カードを使うにしても、浪費をしてしまいがちなクレジットカードよりも、プリペイドカードを多く使われる印象があります」

次に、「時間」について。1,000万円プレーヤーの大きな特徴は、起床や出社が早いことだ。

「平均年収層400名と1,000万円プレーヤー400名に調査すると、平均年収層の起床時間として多かったのは『6時台 38.1%』『7時台 31.9%』『5時台 10.4%』という順だったのに対し、1,000万円プレーヤーは『6時台 41.0%』『5時台 21.9%』『7時台 20.7%』でした。1,000万円プレーヤーのほうが早いのですが、かといって、就寝時間が早いというわけではありません。1,000万円プレーヤーの約3割は睡眠時間が5時間以下で、ショートスリーパーの傾向があるようです。

出社時間についても、平均年収層が『9時台 32.2%』『8時台 31.9%』『7時台 16.8%』の順なのに対して、1,000万円プレーヤーは『8時台 37.4%』『9時台 31.7%』『7時台 22.2%』と、1,000万円プレーヤーのほうが早いという結果が出ました」

また、同様に「趣味」についても調査をした結果、平均年収層と1,000万円プレーヤーで顕著な差が出たのは「スポーツ・運動をする」という回答だった。

「平均年収層では8.5%でしたが、1,000万円プレーヤーでは20.3%にも上りました。『平日にリフレッシュしたい際に何をしていますか』という質問に対して『散歩・ランニングなど体を動かす』と回答した割合も、平均年収層は13.9%でしたが、1,000万円プレーヤーでは22.9%ありました。

1,000万円プレーヤーには、お金をかけずに長く続けられる運動で、仕事のストレスを解消する習慣を身につけている方が多いのでしょう。運動を続けることは、仕事に必要な体力を養うことにもなります」

お金持ちの運動というと、ゴルフというイメージもあるが……。

「ゴルフは、運動のためというよりも、人脈のためにされる方が多いですね。1日中、同じ相手と行動をともにするので、濃い時間を持つことができますから。同じ目的で、ヨットを楽しまれる方もいます。

1,000万円プレーヤーは、自分の仕事について高い専門性を持ち、業界についてもよく知っていますから、人脈を広げる目的は、他業界の人たちから色々なことを学んで、新しい発想を得ることです。一緒に仕事をした方の紹介で人脈が広がっていくケースが多いようです。

また、役職が高くなればなるほど、自分の仕事について意見をしてくれる人が減っていきますから、転職をするつもりがなくても、定期的にヘッドハンターに会って、仕事やキャリアについて客観的に評価してもらっている方もいます」

1,000万円プレーヤーには人づきあいを大切にする人が多いと、清水氏は実感も交えて話す。

「仕事は一人ではできません。チームに動いてもらわなければならない。冒頭で、1,000万円プレーヤーには『企画職』と『専門職』の2タイプがいるとお話ししましたが、特に企画職はそうです。ですから、リーダーシップやカリスマ性のある方が多い。

具体的には、他人に対する気づかいができる方が多いですね。記憶力もよくて、久しぶりにお会いしても、前にお会いしたときの話がすぐに出てきます。そうしたことが、人がついてくる魅力になっているのだと思います」

清水宏昭(しみず・ひろあき)
パーソルキャリア〔株〕iX統括編集長
1973年、千葉県生まれ。98年、立教大学社会学部観光学科を卒業し、〔株〕オリエンタルランドに入社。東京ディズニーランドのスーパーバイザーを経て、マーケティング部へ異動。東京ディズニーリゾートの事業戦略およびマーケティング戦略の責任者として、企画立案から実行までを統括。在任中に、東京ディズニーシー限定キャラクター「ダッフィー」のブランドマネージャーとして、関連売上げを2倍に引き上げる。2015年、〔株〕インテリジェンス(現・パーソルキャリア〔株〕)入社。転職サービス「DODA」(現・「doda」)のブランド力向上や戦略課題の解決を目的としたリブランディング計画の立案・実行・推進と同時に、広報部の立ち上げにも従事。広報部長として戦略的PRに取り組む。18年より新規事業開発責任者に就任。ハイクラス人材のキャリア戦略プラットフォーム「iX(アイエックス)」を立ち上げる。(『THE21オンライン』2019年08月21日 公開)

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