「五輪後に不動産価格が暴落する」という見方がありますが、果たして真実なのでしょうか?今回は2012年のロンドンの事例を踏まえながら五輪が不動産価格に与える影響を考察し、20代が持つべき投資への考え方を解説していきます。

ロンドンでは「影響なし」。五輪後に不動産価格が暴落するとは限らない?

五輪,不動産事情
(画像=PIXTA)

開催目前となり、いよいよ盛り上がりを見せる東京五輪。東京五輪後は不動産価格が暴落するという見解があり、「今焦って不動産に手を出すな」と指摘する声も根強くあります。しかし、本当にその噂は正しいのでしょうか。

2012年、イギリスでロンドン五輪が開催されました。その後、イギリス政府は「五輪がイギリスの不動産市場に与える影響はなかった」と発表しており、必ずしも五輪後に不動産市場にマイナスの影響が及ぶとは限らないのです。

五輪後に経済が大きなダメージを受けるというのは、一般的なイメージとして語られますが、それは新興国や発展途上国に限った話だと指摘する専門家もいます。

イギリスや日本のように経済規模の大きな国では、さまざまな要因が景気に影響します。そのため、五輪後に多少景気が減速したとしても、日本経済全体で見れば影響はそれほど大きくないというのです。

先を見通す視点を身につける――不動産価格が下落・上昇する要因

五輪後に不動産価格が下落するという見通しは、そもそもどこから持ち上がった話なのでしょうか。それを知るには、不動産価格が下落・上昇する仕組みを知っておく必要があります。

不動産価格を左右するのは「需給」です。全てのモノに共通することですが、買い手が多ければ価格は上がり、売り手が多ければ価格は下がります。それでは、その需給に影響を与える要素は何でしょうか。

不動産における大きな要素のひとつが「金融機関の貸し出し姿勢」と言われています。一般的に、不動産を現金買いする人に比べて、ローンで購入する人のほうが多いからです。

金融機関の貸し出し姿勢が「積極的(拡大傾向)」であれば、多くの人がローン審査に通る可能性が高まり、不動産価格は上昇しやすいと言えます。反対に、金融機関の貸し出し姿勢が「消極的(引き締め傾向)」であれば、不動産価格は下落しやすいと言えるでしょう。

それでは、「金融機関の貸し出し姿勢」は今後どうなっていくのでしょうか。現在、日本は史上稀に見る大規模金融緩和が続いています。金融政策の方針を決める日銀決定会合(2019年9月実施)後は、さらなる追加緩和の可能性も報道されています。

現在、世界中の中央銀行が金融緩和方向に動いており、少なくとも、日本だけが急激に金融引き締めを実施する可能性は低そうです。これは不動産価格を下支えする大きな要因になり得ます。

また、政府は五輪開催による景気改善が一時的なものにとどまらないよう、さまざまな施策を打っています。たとえば、多言語表記に対応した事業者に補助金を出すなど、事業者のインバウンド対応を後押ししています。

そのため、五輪開催後も観光産業を中心としたさまざまな分野で好景気が継続すると予測する専門家もいます。そもそも日本を訪れる外国人観光客は近年急速に増加しています。

日本政府観光局 (JNTO)の発表によると、2018年のインバウンドは約3,119万人で、これは10年前にあたる2008年の約835万人のおよそ3.7倍です。五輪をきっかけに新たな外国人観光客の流入も見込めるでしょう。こういった日本、東京都を取り巻く状況を加味すれば、五輪開催後に不動産投資家が一斉に東京の不動産を手放すことは考えにくいといえます。

これは東京圏に限った要素ですが、五輪開催に向けて東京都ではインフラ整備が進み、商業施設やオフィスの充実をはじめとした再開発が行われました。その結果、地域によっては魅力が増し、不動産価格が上昇することも想定されます。

一般的にわかりやすい下落要因にだけ目を留めるのではなく、上昇要因も存在することを知ったうえで、総合的に判断することが大切です。噂に左右されて安易な判断をすることは、投資において最も危険な行為です。

20代だからこそ長期的な目線で投資することが大切

日本全体が人口減少に転じて久しいですが、東京都をはじめとした都市部では人口は増加しています。特に東京では、五輪開催後も人口増加が見込まれています。

これから資産形成をしていく20代なら、人口動態や社会の変化を踏まえ、長期的な視点で投資に取り組むことが大切です。目先のイベントに惑わされていては、かえって投資のチャンスを逃し、機会損失を生んでしまう可能性もあります。

不動産投資に正解はありません。しかし、自分なりにキャッチした情報をもとに世の中の動きを推測し、適切なタイミングで投資判断をすることは、自分の人生にとって大きなプラスになるでしょう。(提供:マンション経営ラウンジ

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