国内景気指標と小売り・外食決算に注目
前週末の米国市場でダウ平均は372ドル高と続伸。ADP雇用レポートの不振で急落した日に空けた窓を埋め、ISM製造業景気指数の悪化で大幅安した水準まで戻した格好だ。9月の雇用統計が警戒したほど悪くないとの見方から景気後退の懸念が和らいだため、と解説されるが、僕の目には弱い雇用統計だったように映る。
賃金の伸び鈍化で追加の米利下げ観測も台頭、とも言われるが、①賃金上昇が鈍ってくるほど雇用情勢が悪化している、②関税による物価上昇が起きているので利下げはそう簡単な話ではない、ことを考えれば賃金上昇率の伸び悩みはネガティブ材料でしかない。
iPhoneの増産報道を受けてアップルが3%近い上昇となった。当然ながら週明けの東京市場ではアップル関連銘柄が物色されるだろう。
今週の主な経済指標は、7日に8月の景気動向指数、8日に9月景気ウオッチャー調査、9日に9月の工作機械受注速報、10日に8月の機械受注と国内景気を探る重要なものが連日発表になる。また小売企業の決算発表も目白押し。8日にJフロント(3086)、9日はローソン(2651)、ファミリーマート(8028)、イオン(8267)、10日にファストリ(9983)、7&iHD(3382)など。但し、ローソンや7&iHDなどは事前の業績観測報道で織り込み済みだろう。
小売り以外では8日の吉野家HD(9861)、10日の安川電機(6506)の決算が注目される。特に吉野家は連日高値追いが続いているトップパーフォーマーのひとつ。決算発表で一段高となる展開がまた見られるか。
米国株は持ち直しに向かう展開だが、その背景は追加緩和期待。ゆえにドルの戻りは鈍く、ゆえに日本株の戻りも鈍いだろう。10日から米中閣僚級通商協議、下旬からの決算発表、そして月末の日米の金融政策会合など相場が上昇するきっかけとなりそうな材料はこの先いくつもある。今は2万1000円台半ばを固めていくことが肝要と思われる。
今週の予想レンジは2万1300~2万1800円とする。
広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術』
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