駅チカに店舗を構えたいと考えている経営者は多いでしょう。しかし、駅チカ物件は出店コストが高いのが実情です。そこで検討したいのが「いきなり!ステーキ」の大ブレイクで見直される「スタンディング業態」での出店です。はたしてその魅力とメリットは?

革命を起こした「いきなり!ステーキ」

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(写真=SubstanceTproductions/Shutterstock.com)

「スタンディング業態」とは、いわゆる「立ち食い店」のことで、調理スペースからカウンターに直接料理を提供するのが特徴です。回転率を上げて利益を高めるのが戦略のため、これまでは「蕎麦」や「おにぎり」「焼き鳥」など安価なメニューを提供していた店が中心でした。

そこへ革命を起こしたのが「いきなり!ステーキ」です。ステーキは単価が高く、着席でゆっくり食べるのが一般的だったのを、通常のステーキ店の半額程度の価格でスタンディングにしたことにより、急速に店舗数を拡大していったのです。

またメニューを肉、ライス、サラダに絞って、店舗オペレーションを徹底的に簡素化したことで、少ない人員での運営を可能にしました。これはどのようなジャンルであっても、効率の良いオペレーションや仕入れ体制を整えれば、スタンディングでも高業績チェーンを築くことが可能であることを示しています。

スタンディング業態の可能性を拡げた意味でも「いきなり!ステーキ」の功績は大きいといえるでしょう。

スタンディング業態の昔と今

スタンディング業態の歴史は古く、ルーツは江戸時代の「立ち食い蕎麦」といわれています。江戸時代では「うなぎ」「天ぷら」「寿司」なども立ち食いで済ませるのが普通だったようです。

明治後期以降になると、鉄道の発展とともに「駅そば」が人気を集めます。令和の今も鉄道の駅には定番スタイルで、ステーキをはじめさまざまなジャンルの「立ち食い」と、気軽に一杯飲める「立ち飲み」がスタンディング業態の2大潮流になっています。

スタンディング業態はメリットが多い

スタンディング業態全盛ともいえますが、繁栄の理由は以下のような多くのメリットがあるからです。

・出店コストが低い
狭小店舗でも開業が可能で、設備も最小限で済むため、出店コストが抑えられます。初期投資が少ないことから多店舗展開も可能です。

・人件費が少ない
原則、ホールに出る店員が必要なく、人件費を抑えられるのも営業上有利で、夫婦二人でも経営は可能。

・回転率が高い
立ち食いや立ち飲みであることから、滞在時間が少なく高回転率が期待できる。

・一人客を取り込める
家族連れの利用が少ないぶん、一人客が入りやすくデッドスペースが少ない。

以上がおもなメリットですが、カウンターの形は「ストレートタイプ」と「コの字型」がありますが、後者の方がより多くの客を取り込むことができます。

またチケットの自動販売機を導入すれば、飲食代金の未回収や、メニューの渡し間違いも防止できるのです。中規模ビルでまだ空き店舗があるオーナーにとっては、スタンディング業態店を誘致するのも一考の価値がありそうです。

「餃子の王将」も参入!スタンディング業態の最前線

2019年6月に外食業界に衝撃が走りました。「餃子の王将」を展開する王将フードサービスが、オールスタンディングによる新業態「餃子の王将Express」を「アトレ秋葉原1」にオープンしました。これまでスタンディングではあまり馴染みのなかった中華チェーンの出店に業界の注目が集まっています。

王将では餃子と並ぶもう一つの主力メニューが麺類だけに、立ち食いそばチェーンにとっても強力なライバルが出現したことでしょう。

競争激化のスタンディング業態ですが、不動産業界にとっては中規模ビルを中心にテナント入居の需要が増えることで追い風になりそうです。駅チカのビルに出店したいというオーナーの夢も実現できるスタンディング業態は今後ますます注目を集めるのではないでしょうか。(提供:ビルオーナーズアイ