住宅ローンを組むにあたっては、事前に綿密な返済シミュレーションを行うべきだ。シミュレーションによってさまざまな計画を比較検討し、その中から無理なく返済できる計画を選び、くれぐれもローン事故などが発生しないようにしたい。そのためには、各種シミュレーションサイトを利用し、少しでも得になる返済方法を考える必要がある。

住宅ローンのシミュレーションを行う理由とは

住宅ローン,返済シミュレーション
(画像=PIXTA)

住宅ローンには金利タイプ、返済期間などさまざまな可変要素がある。どんなローンを利用して、どのように返済していくのがいいのか、事前に十分検討しておきたい。その際に活用したいのが、各種シミュレーションサイトだ。それぞれの条件に合わせて返済額や借入可能額などを試算でき、将来の繰り上げ返済でいくら得になるかなどもわかる。

金融機関をはじめ、多くの企業が独自のシミュレーションサイトを運営しているが、それぞれ試算できる内容が異なる。利用しやすいサイトを見つけて、上手に活用してほしい。

シミュレーションでは返済額の内訳も分かる

住宅ローンの返済額は元金分と利息分で構成されるが、多くの人が利用する「元利均等返済」だと、当初は返済額に占める利息の割合が大きく、元金の割合が小さい。返済が進むと利息の割合は減少し、元金割合が大きくなる。

変動金利型の住宅ローンでは、金利が高いときは利息分の割合が大きく元金の割合は小さいので、元金の減り方が遅い。逆に金利が低くなると、利息分の割合が減って元金の割合が増えるので、元金の減り方が早くなる。

各種金融機関のシミュレーションサイトを利用すれば、借入額や金利、返済期間などの条件に応じて毎月の返済額を算出できるが、元金と利息の割合もわかるようになっているものが多い。

最適な繰り上げ返済のタイミングを把握できる

シミュレーターを利用して、繰り上げ返済時期を1年後、2年後、3年後と設定して試算すると、できるだけ早い時期に実行するのが得策であることがわかる。たとえば、1年後なら総返済額を50万円減らせるが、3年後だと40万円しか減らせないといった具合だ。

また複数のローンを利用する場合、金利の高い借入のほうから繰り上げ返済すべきであることがわかる。シミュレーションサイトを利用して繰り上げ返済計画を立てておくことは、総返済額をできるだけ少なくすることがつながるはずだ。

無理のない返済計画を立てる

繰り上げ返済に活用するほか、ローンシミュレーションは資金計画作りにも活用できる。住宅ローンはしばしば「いくら借りられるか」ではなく、「いくらまで返済できるか」で返済計画を立てるべきだと言われている。

実際に購入したい物件が見つかれば、価格に合わせて必要な住宅ローンの借入額が出てくるだろう。各種シミュレーションサイトを利用し、借入額や金利、返済期間などの条件を入力すると、毎月の返済額がわかる。

その結果と現在の家計を照らし合わせて、マイホームを買っても問題がないか確認する必要がある。銀行の審査基準では、年収400万円以上の場合、年間返済額が年収に占める割合を示す返済負担率が35%までとなっている。つまり、銀行は返済負担率が35%以下なら、ローン事故などが起こる確率が低いと考えているわけだ。

返済負担率は25%までが安全

ただし、より安心して暮らすためには、返済負担率は25%までに抑えおきたい。年収1,000万円を超えるような高所得者であれば35%でも問題はないだろうが、それ以下の人なら30%、できれば25%以下に抑えておくと安心だ。

いずれにしても、シミュレーションで算出した毎月の返済額から年間返済額を算出し、それが年収の何%になるか(返済負担率)を確認し、実際の家計のやりくりと照らして安全性を確認しておこう。

用意すべき頭金を逆算できる

ほとんどのシミュレーションサイトでは、条件に応じた返済額の試算だけではなく、年収などの条件に応じた借入可能額の試算もできる。借入可能額が4,000万円で、購入したい物件の価格が5,000万円なら、差し引き1,000万円の頭金が必要になる。住宅ローンのシミュレーターでは、用意すべき頭金の金額も知ることができるのだ。

なお、マイホームの取得にあたっては、物件の価格以外にも各種諸費用が必要になる。各種税金やローン利用時の手数料などが発生するのだ。諸費用は一般的に、仲介手数料のかからない新築住宅で購入価格の3%程度、仲介手数料のかかる中古だとリフォーム費用などを含めて5~10%程度かかる。この諸費用を忘れていると資金計画が狂ってしまうので、十分な注意してほしい。

住宅ローンのシミュレーションを行う際の注意点

住宅ローンのシミュレーションサイトでは、借入額に応じて毎月の返済額を算出できるので、それに合わせて資金計画を立てて、マイホーム取得に役立てることができる。大変便利だが、注意すべきことがいくつかある。最も注意すべきポイントは、住宅ローンの金利タイプだ。

金利の変動リスクを考慮する

住宅ローンには、市中の金利動向によって適用金利が変化し返済額が増減する変動金利型と、金利が変わらない固定金利型がある。固定金利型ならシミュレーションで出てきた返済額が変わることはないが、変動金利型では適用金利が変われば返済額が増えてしまい、当初のシミュレーションとは大きな違いが出てくる可能性がある。

変動金利型では、市中の金利が変われば半年に1回金利を見直すことになっている。ただし、頻繁に返済額が変わると資金計画を立てにくいので、返済額の見直しは5年に1回だ。5年の間に金利が上がった場合は、同じ返済額の中で利息と元金の割合を調整する。金利が上がれば、返済額に占める利息の割合が増えて、元金分が減る。

したがって、変動金利型の住宅ローンを利用する場合は、当初の適用金利だけではなく、当初金利より0.5%、1%、1.5%、2%などの高い金利でも試算しておき、金利が上がった場合の返済額の変化を想定しておくといいだろう。

毎月のキャッシュフローをイメージする

それと同時に、毎回の返済額が実際の家計のキャッシュフローのなかで問題ないかどうかをチェックしておくことも重要だ。金融機関の審査基準が返済負担率35%までなら安全としていても、家計で問題がないとは言い切れない。あくまでも、「自分たちの家計からどれだけ返済できるか」を確認しておかなければならない。

できれば過去1年程度の家計を振り返り、食費など毎月欠かせない出費や、ある程度削減できる交際費などを鑑みて、いくらまで住宅ローン返済に回せるかを計算し、シミュレーションに問題がないことを確認しておきたい。

おすすめの住宅ローンシミュレーションサイト

住宅ローンを取り扱う金融機関は、住宅ローン返済のシミュレーションサイトを用意しているところが多い。また、住宅金融支援機構や日本銀行の「知るぽると」など、公的機関でもシミュレーションサイトを運営しているところがある。それらのほとんどは無料で利用でき、入会手続きなども不要なので気軽に利用できる。おすすめのサイトをいくつか紹介しよう。

JAバンク

新規借入に関する条件別返済額の試算のほか、借り換えについても現在の条件に比べてどれくらいのメリットがあるのかを試算できる。また、繰り上げ返済のシミュレーターもある。これから借り入れる住宅ローンで、何年後にいくら繰り上げ返済をすれば、どれくらい得になるかなどを計算できるわけだ。

ELOAN

借入予定額や金利、返済期間などの条件を入力すれば、返済額を算出できる。返済期間などの条件を変更しながら、さまざまな試算ができるので便利だ。また、年収条件などに応じた借入可能額の試算もでき、繰り上げ返済のシミュレーターも用意されている。

みずほ銀行

借入希望額、返済期間などに応じて返済額を試算できる。金利タイプと金利を、みずほ銀行のローンの中から選択できる。シミュレーターで金利タイプを指定すれば、調べることなく自動的に金利が入力される。また、借入年次や生年月日を入力すれば毎年の誕生日時点の残高がわかるので、借入後の残高の推移を確認できる。

住宅保証機構

条件に応じた返済額の試算や借入可能額、繰り上げ返済の条件と結果のほか、金利タイプ別の試算、複数のローンがある場合の組合せの試算もできる。さらに、住宅取得時の諸費用の試算もできるので何かと便利だ。

最適なサイトを利用して住宅ローンのシミュレーションを

住宅ローンの利用は一生に何度もあることではないので、多くの人があまり知識のない状態でお金を借りることになる。しかし、選択を間違えると不利な条件で返済を続けなければならなくなり、家計が苦しくなってしまう可能性が高い。

それを避けるには、慎重な資金計画が欠かせない。その際心強い味方になってくれるのが、住宅ローンシミュレーションサイトだ。基本的に無料で、誰でも利用できる。いろんなサイトをチェックし、自分たちがやりたいシミュレーションができるサイトを見つけて、フル活用してほしい。  

各種のシミュレーションサイトの特徴

  特徴
JAバンク ・新規借入だけでなく借り換えにも対応
・返済可能額の算出や繰り上げ返済効果も試算できる
ELOAN ・新規借入だけでなく、借り換えした場合の効果も試算できる
・返済可能額の算出もOK
みずほ銀行 ・借入金額などの条件に応じて返済額を算出できる
・残高推移表で一定期間後の残高なもわかる
住宅保証機構 ・返済額の試算のほか、借入可能額、繰り上げ返済の試算もできる
・返済プランの比較、複数ローンの組合せの試算もできる