不動産投資はレバレッジが効く投資とよくいわれる。この「レバレッジ」とはいったいどういうことなのだろうか?また、レバレッジを効かせるにあたり、大切なのはリターンとリスクをコントロールすること。この意識が抜け落ちると、思わぬ失敗を招きかねない。その内容を詳しく見てみよう。

レバレッジ投資は効率的に資産形成したい人向けの仕組み

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(画像=iQoncept/Shutterstock.com)

レバレッジとは「テコの原理」のことをいう。投資においては、限られた元手でハイリターンを生み出すことを指す。レバレッジ投資のメリットは、ハイリターンによって資産形成のスピードを早められることだ。一方で、ハイリターンの裏にはハイリスクが潜んでいることも忘れてはならない。

こういったレバレッジ投資の性格を考えると、ある程度のリスクをとっても、効率的に資産形成したい人向けの選択といえる。

不動産投資のレバレッジとは 融資額に対する自己資金の割合

レバレッジ効果のある投資例としては、株式・FX・仮想通貨FX・不動産投資などが挙げられる。

同じレバレッジ投資でも、「株式・FX・仮想通貨FX」と「不動産投資」は少し仕組みが違う。前者は証券会社などに預けた保証金にレバレッジが効く仕組みだ。保証金の×倍とあらかじめ保証金率が決まっていてその範囲内で投資を行える。

不動産投資の場合は、自己資金(頭金や初期費用)に対する融資額がレバレッジとなる。自己資金が500万円で、2,500万円を金融機関から融資してもらって収益物件を購入した場合、レバレッジ率は5倍になる。

レバレッジを効かせる理由 投資効率を上げるため

不動産投資において、レバレッジをかけた場合、かけない場合の投資効率を見てみよう。

自己資金1,000万円のレバレッジをかけない場合

・購入価格1,000万円の収益物件
・年間の賃料収入48万円(家賃4万円)
・物件利回りは4.8%

自己資金1,000万円に3倍のレバレッジをかけた場合

・購入価格3,000万円の収益物件
・賃料収入144万円(家賃12万円)
・物件利回り4.8%

物件利回りは同じ4.8%だが、自己資金に対する利回りで考えると、

・レバレッジをかけていない場合の4.8%(48万円÷1,000万円)
・レバレッジをかけた場合は14.4%(144万円÷1,000万円)

となる。つまりレバレッジをかけた場合と、かけていない場合では投資効率は約3倍に異なってくるということだ。

不動産投資の3種類のローン どれを選択するかでリスクは変わる

不動産投資はローリスクまたはミドルリスクの投資とよく言われるが、レバレッジ率を高めるとハイリスクな投資になる点には注意が必要だ。不動産投資のローンには一部ローン、フルローン、オーバーローンの3種類があり、どれを選択するかでリスクは大きく変わる。

「一部ローン」

頭金や諸経費などの自己資金を用意して、残りの必要額を金融機関から融資してもらう方法だ。

「フルローン」

諸経費のみを自己資金で用意して、頭金なしで必要額を融資してもらう方法だ。

「オーバーローン」

頭金なしで物件購入費と諸経費のすべてを融資してもらうもの。自己資金ゼロということである。手元のお金を使わずに収益物件を運用できるため、投資効率は格段に上がる。

オーバーローンはとくにハイリスクな選択なので要注意

オーバーローンを使うことで、レバレッジが凄まじく効いている状態になるが、同時にハイリスクになっていることも意識したい。

たとえば、3,000万円の区分マンションを購入、初期費用が240万円(物件価格の8%設定)かかると想定してみよう。もし、オーバーローンを選択するのであれば、3,240万円を金融機関から融資してもらうことになる。

つまり、物件価格を240万円上回るローンを組んでいるということだ。もし購入後、比較的早い段階で売却することになったら、「物件価格を上回る分+値落ちした分」を支払わなければならないオーバーローンを実現するスキームにはいくつか方法があるが、物件費用は低金利、諸費用は高金利というダブル融資でオーバーローンを強引に実現していることもある。利払い負担が増える分、リスクは高まる。

他にも、契約書を複雑にする方法、物件価格の値引きで調整する方法などもあるが、いずれにしても強引なやり方なので反動もありうる。

仮に、購入者の属性がよいからオーバーローンで融資するという金融機関があったとしても、物件価格を上回る借り入れをしているため、リスクが高いことに変わりはない。

レバレッジ投資に向いている人 失敗をカバーできる余力があるのが前提

レバレッジ投資を行う上で重要なことは、「失敗したときの損失をカバーできる力があること」だ。不動産投資を考えると、予想外の長期空室が発生しても、給与所得の余力や貯金で補えるということになる。また、売却の場合は損失の穴埋めも必要になるかもしれないことを注意しておこう。

この余力がない状態で不動産投資を始めてしまうと、空室が発生した途端、経営が破綻してしまう。

いくら立地がよくても、家賃保証制度があっても、空室リスクゼロの収益物件はこの世に存在しない。最悪をイメージして、それに対応できる備えをし、レバレッジを上手く使いこなすことが成功するための心構えと言えるだろう。。

文・本間貴志(不動産・税務ライター)/MONEY TIMES

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