老舗アパレルであるオンワードホールディングスの今期決算が2009年2月以来となる11年ぶりに赤字に転落する見込みとなった。国内外で数百店舗を閉店させ「選択と集中」を進めるという話だ。オンワードの業績悪化には、アパレル市場の厳しい状況やネット通販の台頭などが背景にある。

オンワード、最終赤字240億円を計上へ

オンワード,閉店
(画像=Maksym Azovtsev/Shutterstock.com)

2019年10月に発表されたオンワードホールディングスの2020年2月期第2四半期の連結業績(2019年3~8月)によると売上高は前年同期比4.0%増の約1,184億6,600万円。前年同期から一転、営業利益は約8億6,100万円の損失、経常利益も約8億1,700万円の損失を計上した。決算発表の数字で特に注目したいのが2020年2月期通期(2019年3~2020年2月)の連結業績予測だ。

不採算店舗の閉店などで特別損失を計上することから、最終的に240億円の赤字を出す見込みとなった。最終的な営業損失は12億円、経常損失は11億5,000万円を見込んでいるという。「23区」や「組曲」などの有名ブランドを運営するオンワードは2000年代前半ごろまでは毎期200億円規模の営業利益を計上できていた。

しかしなぜオンワードの業績はいま厳しい状況に置かれているのだろうか。またどのようにこの状況を乗り切ろうとしているのかは注目だ。

厳しさ増すアパレル、店舗整理を断行

「アパレルの消費マーケットの弱含みな状況が続いているのは、ご承知の通りでございます」。オンワードホールディングスの保元道宣社長は、決算発表会の場で厳しい表情でこのように語った。決算短信の資料では国内の消費動向について「将来への不安等を背景とした生活者の節約志向は依然根強く」と指摘している。

またグローバル市場についても米中や日韓の経済摩擦などで先行きの不透明感が広がっていると説明。こうした市場の状況を鑑み、同社は海外と国内の両方における事業構造改革を断行するという。具体的にはアメリカや欧州、アジア、日本国内で不採算事業の撤退や不採算店舗の廃止を実施するというものだ。

復活の鍵は「EC事業」にあり

こうした不採算店舗の閉店などを進めることと並行して同社は成長戦略のEC(電子商取引)事業への投資を強化していくようだ。過去、百貨店とともに成長を果たしてきた経緯があるオンワードだが、ネット販売の台頭に伴う百貨店の集客力の低下は、同社の業績に深刻な影響を与えてきた。そんな中、EC部門は国内でも堅調な推移をみせている。

今後におけるオンワードの復活の鍵はこのデジタル部門が握っているといっても過言ではない。ちなみに今期上期のEC売上実績は前年同期比34%増の153億円となっており、通期では前期比37%増の350億円となる見込みだ。2021年度に関しては数字をさらに積み増して売上500億円を目指す計画を立てている。

試されるオンワードの復活力

オンワードの過去の業績をみると売上高は年々減少傾向だ。2015年2月期は約2,815億円だった売上高が2019年2月期は2,406億円まで低下し約400億円減少している。経済産業省の発表によれば日本国内のアパレル市場規模は減少傾向にあり1991年は15兆3,000億円だったマーケットが2016年には10兆4,000億円まで縮小。

2010年以降はほぼ横ばいの状況にあるが少子化や高齢化なども進む中、さらなる市場の縮小も懸念されている。同社はEC強化や不採算店舗撤退の推進に加え、主力ブランドにおける限定商品の開発や販売促進を強化。さらに中国やベトナムでの一括物流を本格化させることでより円滑な仕入れなどを実現することも目指している。

アパレル業界では、2019年9月にファストファッション大手である米フォーエバー21の経営破綻が世間を驚かせたばかりだ。オンワードの底力、そして復活力がいま試されている。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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