住宅ローンを借りるときには必ず審査がある。住宅ローンの審査は、銀行や申込者の属性によって多少の差はあるが共通項も多い。住宅ローンの審査を申し込む前に知っておきたい流れや注意点、審査に落ちた場合対応策を見ていきたい。

過去最低の金利水準で住宅ローンを借りるチャンス

住宅ローン,審査
(画像=Maxx-Studio/Shutterstock.com)

住宅の取得費は年々上昇している。2014年度の全国平均価格は新築マンション、土地付き注文住宅ともに4,000万円を下回っていたが、2018年度では4,000万円超まで上昇している(住宅金融支援機構の2018年度『フラット35利用者調査』より)。この傾向は中古住宅でも同様だ。

そうした環境下でもFPは、「2019年度は買い時か?」という調査に対し、半分以上が買い時と回答している。背景にあるのは消費税率の引き上げやそれに伴う住宅購入支援策、低金利だろう(住宅金融支援機構の2019年度5月の『住宅市場動向調査』より)。

過去最低水準の金利も相まって銀行も住宅ローンの貸し出しに積極的である。住宅価格を除けば、消費者にとっては購入しやすい環境といえよう。

住宅ローンの審査は事前審査と本審査の2段階ある

住宅ローンを申し込むと事前審査と本審査を受けなければならない。金融機関は、事前審査の際に収入などをもとに住宅ローンをどのくらい貸し出せるかを簡易的にチェックする。必要書類は源泉徴収票や本人確認書類などだ。

事前審査を通らなければ住宅ローンが組めないので、事前審査は不動産の売買契約を結ぶ前に実施しなければならない。なお住宅ローンの事前審査は住宅購入の検討初期から申し込める。審査結果は早ければ即日で分かるが、遅くても数日程度で通知される。

住宅ローンの事前審査を通過し購入したい物件が決まったら本審査を申し込む

住宅ローンの本審査では申込者の健康状態から物件の担保性まで細かい項目がチェックされる。事前審査より提出書類も多くなり、審査期間も長くなる。住宅ローンの本審査で必要な主な書類には以下がある。なお物件関係の書類は購入先の不動産会社に伝えれば準備してくれる。

・住民票
・印鑑証明書
・源泉徴収票
・健康保険証
・売買契約書
・重要事項証明書
・物件の間取り図

住宅ローンの本審査期間は、書類が到着してから1~2週間程度とする銀行が多いが、実際には平均3.2営業日で審査結果を通知している。書類不備や借入申込者の状況によって時間がかかることもあるが、全体の40%は2営業日以内に回答している(住宅金融支援機構の『2018年度 民間住宅ローンの貸出動向調査結果』より)。

住宅ローン審査の申し込みから物件引き渡しまでの流れ

住宅ローンの審査は物件購入手続きと同時に進めていくのが一般的だ。

(1)購入物件の決定/住宅ローン事前審査の申し込み(即日~数日)
(2)物件の売買契約を交わす
(3)住宅ローン本審査の申し込み(1~2週間)
(4)住宅ローンの契約手続き
(5)物件の引き渡し(資金決済)

スムーズに進めば2~3週間程度で住宅ローンの契約手続きまで進める。ただ銀行や審査の状況によって時間がかかることもあるため、1~2ヵ月程度の余裕を見て申し込みたい。

住宅ローンの仮審査は3つ程度に絞って申し込む

住宅ローンの審査方針は銀行によって異なる。1つの銀行で審査に通っても違う銀行では通らなかったり借入条件が違ったりすることがある。それを見越してたくさんの銀行に住宅ローンの審査を申し込む人もいるが、審査を申し込む銀行が多いと不利になる可能性がある。

住宅ローンの審査では個人信用情報が必ずチェックされる。個人信用情報とはクレジットカードや住宅ローンの契約内容などのことだ。申し込み情報についても個人信用情報に登録される。その数が多すぎると、審査する銀行に他の銀行で審査に落ちた人なのではないかといった不安を抱かせ、不利になることもある。

住宅ローンの仮審査を一括で申し込めるサイトもあるが、審査に落ちると履歴が残り、その後に別の銀行で申し込む時に不利になることもある。住宅ローンはどこの銀行がよさそうかあらかじめ調べておき、1度に仮審査を出す銀行は3つ程度にしておくほうが安心だろう。

銀行が重視する住宅ローンの審査項目とは

住宅ローンは申込者の属性や物件について審査されるものであり、景気や銀行の経営状況が審査に影響を及ぼすことは少ない。金融機関によっては審査方針を厳しくしているところもある。国土交通省の報告書から、銀行が審査する主な審査項目の上位10項目を見てみよう。

審査項目 回答割合
完済時年齢 97.2%
健康状態 95.7%
借入時年齢 95.6%
担保評価 95.5%
融資可能額(借り換えの場合) 94.4%
年収 93.6%
連帯保証 92.8%
勤続年数 92.7%
金融機関の営業エリア 87.0%
返済負担率 82.6%

(※国土交通省の『平成29年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書』より筆者作成)

主な審査項目を見てみると、完済時年齢や健康状態、年収など申込者に関連した項目が多い。銀行としては長期で資金を貸し付けるため、申込者の属性が重要なのだろう。

重要度が増している住宅ローンの審査項目として返済負担率を意識したい

近年、金融機関の審査において、重要度が増している項目もある。

重要度の増している審査項目 回答割合
返済負担率(毎月返済額/月収) 61.0%
職種、勤務先、雇用形態 41.3%
借入者の社会属性 31.6%
借入比率(借入額/担保価値) 30.6%
返済途上での返済能力の変化 25.8%
預貯金や資産の保有状況 24.8%
担保となる融資物件の時価 12.6%

(※住宅金融支援機構の『2018年度 民間住宅ローンの貸出動向調査結果』より筆者作成)

この結果から、返済能力に関わる項目が重要視されていることが分かる。返済に対する安定性が高いほど審査に通りやすくなるとも言い換えられるだろう。

住宅ローンの返済負担率は年収の20%以内が安心

雇用に関することや資産状況などは自分でコントロールするのは難しいが、返済負担率は比較的操作しやすい。返済負担率とは年収に占める住宅ローン返済額の比率のことである。

一般的に住宅ローンの返済負担率が年収の25%を超えないようにしたほうがいいと言われている。ただし25%ぎりぎりだと転職で給料が下がったり金利上昇で返済額が増えたりするとリスクになる。余裕を持たせて20%程度を目安にしたほうが安心だろう。

ボーナス払いで住宅ローンの返済計画を立てる場合もあるが、可能な限りボーナスに頼らず返済計画を立てたい。会社の業績が悪くなりボーナスが支給されなかったり大幅にカットされたりする可能性もあるからだ。

住宅ローンの審査に落ちる5つの理由

以下に当てはまる人は返済能力に不安があるとして住宅ローンの審査に落ちる可能性が高くなる。

住宅ローンの審査に落ちる理由1……クレジットカードの支払いなどを延滞させて「異動」の記録がある

クレジットカードなどの支払いを延滞させている人は注意だ。すぐに解消すれば問題ないが、支払いや借入返済を61日または3ヵ月以上延滞した場合は個人信用情報に「異動」と記載されてしまう。

銀行が個人信用情報を確認した時に異動の表記があると「返済できない人」となる。異動と表記された人が住宅ローンを組むことは、ほぼ不可能だ。異動が個人信用情報に履歴として残る期間は、少なくとも5年間である。

自分の個人信用情報は、信用情報機関に手数料を500円~1,000円程度支払えば確認できる。気になる人は以下の機関へ開示請求をしてみてはいかがだろうか。

・株式会社CIC
・株式会社日本信用情報機構
・一般社団法人全国銀行協会

住宅ローンの審査に落ちる理由2……消費者金融からの借入や返済遅延がある

アイフルやレイク、アコム、プロミスといった消費者金融から過去に借入がある場合も注意が必要だ。金融機関の中には消費者金融から借りていること自体で審査を厳しくするところもある。

消費者金融からの借入は異動情報のように一発アウトになるものではないが、マイナス要素として働く可能性がある。延滞もなく完済していれば基本的に問題はないが、返済の遅れがあると個人信用情報に残るので、さらに厳しくなると考えたい。

住宅ローンの審査に落ちる理由3……返済負担率が銀行の基準をオーバーしている

住宅ローンの返済負担率は一般的に年収の25%以内と説明したが、この比率はあくまで目安であり仮に超えていても住宅ローンは組める。一般的に銀行の審査で設けている返済負担率は35%以内とされている。この比率がぎりぎりだったり超えてしまったりする場合は、落ちる可能性が高くなる。

返済負担率には車のローンやリボ払いなども含まれる。住宅ローンの審査上は他の借入とトータルで35%以内に収まっているかが重視される。住宅ローンだけで考えるなら、返済負担率25%以内を1つの基準としたい。

住宅ローンの審査に落ちる理由4……勤続年数や雇用形態が銀行の基準を満たしていない

ほとんどの金融機関は、住宅ローンの審査に雇用に関する基準を設けている。よくあるのは勤続年数だ。だいたい1~3年以上としているところが多い。転職後に住宅ローンを組もうとすると銀行によっては勤続年数で引っかかる可能性があるので、転職前に住宅ローンを組むのも1つだ。勤続年数が絶対基準ではないため、短い場合でも事前に銀行に相談してみるといいだろう。

雇用形態が不安定な場合に審査が厳しくなることもある。引っかかりやすいのは契約社員や派遣社員、アルバイトなどだ。正社員と比べると収入の安定性に欠けるため、銀行としては住宅ローンの審査を厳しくせざるを得ない。全く借りられないわけではないが、ハードルは高くなると考えておきたい。

住宅ローンの審査に落ちる理由5……健康状態により団体信用生命保険に加入できない

銀行で住宅ローンを借りる場合、必ず加入しなければならないのが「団体信用生命保険(団信)」だ。団信とは住宅ローン専用の生命保険で、契約者が死亡した時に保険金で住宅ローンをすべて返済してくれる。銀行から借りる場合は団信に加入できることが最低条件になる。

団信は通常の生命保険と比べて告知事項が少なく比較的加入はしやすいが、健康状態が悪いと加入できないこともある。団信に加入できなかった場合は、持病があっても入りやすい引受基準緩和型のワイド団信に加入することができる。通常の団信と比べて0.3%程度金利が上乗せされるが、住宅ローンを組むためには仕方ない点だ。

住宅ローンの審査に落ちた場合の対応策

住宅ローンの審査は1つの銀行で落ちたからといって別の銀行でも落ちるとは限らない。審査が緩いところもあれば厳しいところもある。審査基準が公表されていないので一概には言えないが、都市銀行よりも地方銀行やネット銀行のほうが緩いと言われている。

住宅ローンの審査に落ちてしまったら、居住地域にある地方銀行や申し込み候補になっていた他の銀行にチャレンジしてみるといいだろう。

銀行の住宅ローンより借りやすいフラット35に申し込む

銀行で住宅ローンの審査に落ちたり団信に入れず住宅ローンが組めなかったりしたら、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する「フラット35」を利用する選択肢もある。

民間の金融機関は属性重視の審査をするのに対し、フラット35は物件重視の審査をする。そのため銀行で住宅ローンを組めなかった人でも通りやすいのだ。フラット35では団信の加入が任意であるため、健康状態を理由に断られてしまった人でも利用しやすい。

フラット35はどこの金融機関で申し込んでも同じだが、金利や手数料は異なるので比較検討することをおすすめする。

住宅ローンの審査だけでなくライフプラン全体を考えて検討する

住宅購入は人生に大きく影響を及ぼすので、慎重に検討することが望ましい。ファイナンシャルプランナーのなかには、教育や老後、将来にわたる家計収支などトータルのライフプランの重視を推奨する声も多い。住宅購入を検討するときは、住宅ローンの審査をクリアすることだけに注視せず、他のライフイベントとのバランスも考慮しよう。

文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES

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