輸出入ともに大幅減少

貿易統計
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財務省が11月20日に公表した貿易統計によると、19年10月の貿易収支は173億円の黒字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:3,351億円、当社予想は2,191億円)を下回る結果となった。台風19号の影響もあって輸出入ともに大幅な減少となったが、消費税率引き上げ後の国内需要の落ち込みや原油価格の下落を反映し、輸入の減少幅(9月:前年比▲1.5%→10月:同▲14.8%)が輸出の減少幅(9月:前年比▲5.2%→10月:同▲9.2%)を上回ったため、貿易収支は前年に比べ4,735億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲4.4%(9月:同▲2.3%)、輸出価格が前年比▲5.0%(9月:同▲2.9%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲6.1%(9月:同6.8%)、輸入価格が前年比▲9.3%(9月:同▲7.8%)であった。

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季節調整済の貿易収支は▲347億円と8ヵ月連続の赤字となったが、9月の▲643億円から赤字幅が若干縮小した。輸入の減少幅(前月比▲2.2%)が輸出の減少幅(同▲1.7%)を上回った。

10月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=65.1ドル(当研究所による試算値)となり、9月の64.3ドルから若干上昇した。原油価格(ドバイ)は60ドル台前半で推移しており、通関ベースの原油価格は10月も60ドル台半ばとなることが見込まれる。原油高による輸入金額の増加は一段落している。先行きについては、消費税率引き上げ後の内需低迷を反映した輸入の減少によって貿易収支(季節調整値)が黒字に転じる可能性もあるだろう。

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下げ止まりつつあるIT関連輸出

19年10月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲6.6%(9月:同▲4.0%)、EU向けが前年比▲7.5%(9月:同0.2%)、アジア向けが前年比▲7.1%(9月:同▲6.0%)となった。

19年10月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比0.4%(9月:同▲3.5%)、EU向けが前月比0.9%(9月:同▲4.1%)、アジア向けが前月比1.6%(9月:同▲0.3%)、全体では前月比▲1.0%(9月:同1.9%)となった。10月は主要3地域向けが全て前月比でプラスとなったが、米国、EU向けは9月に大きく落ち込んでおり、戻りは弱い。一方、アジア向けは10月の水準が7-9月期を1.0%上回るなど下げ止まりの兆しが見られる。

グローバルなIT関連財の調整進展を受けて、輸出を大きく押し下げてきた半導体電子部品が3ヵ月連続で前年比プラスになるなど、IT関連品目の輸出が下げ止まりつつあることがアジア向け輸出を下支えしている。

10月の輸出は全体としては弱い動きとなったが、台風19号によって一部の港湾施設が被災した影響で下押しされている可能性がある。海外経済の減速が続いているため、輸出の本格回復は当面期待できないものの、19年度末にかけてIT関連を中心に持ち直しに向かうことが見込まれる。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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