不動産の賃貸契約では一般的に連帯保証人が必要だが、住宅ローンを組む際にも連帯保証人は必要なのだろうか。もし必要だとすれば、多額の借金を負う可能性のある連帯保証人を見つけなければならない。

住宅ローンに連帯保証人は原則不要

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(画像=goodluz/Shutterstock.com)

結論からいえば、原則として住宅ローンに連帯保証人は不要だ。それには以下のような理由がある。

保証会社が保証するため

現在ほとんどの金融機関では保証会社の保証を受けられることが、住宅ローンを利用するための条件となっている。保証会社は住宅ローン利用者(債務者)が住宅ローンの返済ができなくなった場合に、債務者に代わって金融機関に返済を行う。

保証会社が連帯保証人の役割を果たし、金融機関は貸したお金を回収できない(貸し倒れ)リスクを回避できるため、住宅ローンに連帯保証人は必要ないのだ。

保証会社が代わりに住宅ローンを返済した場合には、住宅ローンの債権者が金融機関から保証会社に変わるだけであり、ローン債務がなくなるわけではない。保証会社から残債の一括返済を求められる場合もあり、返済のため家を売らなければならない可能性もある。

住宅が担保となるため

住宅が担保となるため貸し倒れリスクが低いことも、住宅ローンに連帯保証人が不要な理由といえる。

住宅ローンで購入した住宅(土地・建物)には通常、保証会社または借入先金融機関を抵当権者とする抵当権が設定される。金融機関は住宅ローンの返済が滞れば住宅を競売にかけることができ、売却代金から貸付金を回収できる。

住宅ローンで連帯保証人を立てることが条件になる5つのケース

連帯保証人が原則不要の住宅ローンだが、以下のようなケースでは連帯保証人を立てることが条件となる。

収入合算により住宅ローンを組む場合

収入合算とは、本人の収入に配偶者や親などの収入を合算した金額をもとに1本のローンを組む方法をいう。収入合算を行う場合では、収入合算の対象となった配偶者、親が連帯保証人となる。

ペアローンを組む場合

ペアローンとは、同一物件に対して本人と一定の条件を満たす配偶者や親が、自分の収入を基準に各自住宅ローンを組む方法をいう(ローンは2本)。本人と配偶者(または親)のそれぞれが債務者となり、互いに連帯保証人となる。

団体信用生命保険に加入しない(できない)場合

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン返済中に債務者に万一のことがあればローンが免除される保険であり、多くの金融機関で団信に加入することが住宅ローン融資条件のひとつとなっている。

団信に加入しない、あるいは健康上の理由で加入できない人が住宅ローンを利用する場合、法定相続人を連帯保証人とすることが条件となる(担保提供による場合もある)。

共有名義で住宅を購入する場合

土地や建物を共有名義で購入した場合や親の土地に子がローンを組んで家を建てる場合などには、ローン名義人以外の共有者は担保提供者(物上保証人)となる。担保提供者が連帯保証人になることを融資条件としている金融機関も多い。

住宅ローンの融資審査結果により連帯保証人が必要と判断された場合

審査結果により連帯保証人が必要と判断されれば、連帯保証人を立てなければならない。

「連帯保証人」は「保証人」よりも重い責任を負うことになる

そもそも連帯保証人とは何か。連帯保証人とは、お金を借りた本人(主債務者)が返済できなくなった場合に、本人に代わって返済の義務を負う人のことだ。

保証人と連帯保証人の違い

保証人と連帯保証人の違いは具体的に次のようなものだ。

債権者(金融機関等)がいきなり返済を求めてきた場合、保証人はまず主債務者に請求するよう主張できるが、連帯債務者はできない(連帯保証人には「催告の抗弁権」がない)。

主債務者に返済できる資力があるにも関わらず返済しない場合、保証人は債権者からの請求を拒否して主債務者の財産に強制執行するよう主張できるが、連帯保証人は請求に応じなければならない(連帯保証人には「検索の抗弁権」がない)。

保証人が複数いる場合、各保証人は債権額をその人数で割った金額のみに返済義務を負う。連帯保証人は複数いたとしても各連帯保証人が債権額全額に対する返済義務を負う。債権者は連帯債務者の一人に全額を請求できる(連帯保証人には「分別の利益」がない)。

連帯保証人は保証人よりも重い責任を負う

連帯保証人と通常の保証人のいずれも、主債務者が返済できなくなれば代わりに返済する義務を負うのだが、連帯保証人は主債務者とほぼ同じ責任を負うことになり、通常の保証人よりも責任は重いと言える。

住宅ローンにおける連帯債務者と連帯保証人の違い

「連帯債務者」は「連帯保証人」と似ているが、もちろん意味は違う。

連帯債務者とは、ひとつの債権(住宅ローン)を複数人が協力して返済する場合の自分以外の債務者のことをいう。連帯債務者はそれぞれが独立した返済義務を負う。連帯保証人には主債務者が返済ができなくなるまで返済義務はなく、そもそも債務者ではない。

連帯債務者となるのは、夫婦連名で1本の住宅ローンを契約する場合や親子リレーローンを利用する場合など。夫妻(親子)がそれぞれ連帯債務者となる。

同じ住宅を購入するために夫婦(親子)がそれぞれ独立した住宅ローンを組む「ペアローン」では、ローンは2本となる。この場合は夫が債務者となるローンでは妻が連帯保証人、妻が債務者となるローンでは夫が連帯保証人となる。

連帯債務者は自分の持分を取得するために支払う住宅ローン負担分に対して、各自住宅ローン控除を受けられる。連帯保証人は債務者ではないので、当然ながら住宅ローン控除は受けられない。

住宅ローンの連帯保証人の条件

債権者(金融機関)などから連帯保証人を立てることを求められた場合、原則、民法450条に定められている保証人の要件を満たす者を連帯保証人にしなければならない。

例外として債権者が保証人を指定した場合には、民法上保証人要件を満たしていなくとも保証人となれる。ただ、実際には指定する保証人が要件を満たしていなければ住宅ローンの融資を受けられないケースが多い。

【民法450条の保証人の要件】
一 行為能力者であること(未成年者や成年被後見人・被保佐人・被補助人ではない)
二 弁済する資力を有すること(代わりに返済できる財産・経済力がある)

住宅ローンの連帯保証人になると簡単にはやめられない

住宅ローンの連帯保証人をやめるには、別の連帯保証人を立てる、十分な担保を提供するなどして債権者の承諾を得なければならない。夫婦が互いに住宅ローンの連帯保証人となっている場合、離婚を理由に連帯保証人をやめることはできない。

住宅ローンの連帯保証人となってくれる人を見つけることや、十分な担保を提供するのはそう簡単ではない。

債権者の承諾が得られず連帯保証人をやめるには、借り換えにより連帯保証人になっている住宅ローンを完済する方法がある。とはいえ住宅ローンの借り換えには審査があり手数料もかかる。

住宅ローンの連帯保証人が必要=返済できなくなるリスクが高い?

連帯保証人は金融機関が貸し倒れリスクを回避するために立てるものである。そのため、住宅ローンで通常必要のない連帯保証人を立てるよう求められるというのは、その住宅ローンを返済できなくなるリスクが高いということだ。

収入合算やペアローンは本来一人の収入では買えない住宅を購入するための荒技であり、余裕のある住宅購入とはいえない。収入の減少などで計画が狂ってしまえば、せっかく手に入れたマイホームを手放さざるを得なくなるかもしれない。

連帯保証人は立てて終わりではない。連帯保証人が必要となるような住宅ローンの返済計画に無理はないのか、よく考えて住宅ローンの組み方を判断したほうがいいだろう。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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