11月18日、Yahoo!JAPANなどを運営する情報・通信事業のヤフーなどを傘下に持つZホールディングスと、インターネット関連事業を手掛けるLINEは、2020年10月に経営統合することで基本合意したと発表しました。
公正取引委員会の判断を待つことになりますが、実現すれば、国内最大のネット企業が誕生することになります。
11月18日に発表された「経営統合に関する基本合意書の締結について」によると、Zホールディングスと傘下のヤフー株式会社の顧客基盤は、平均月間利用者数6743万人、アプリ合算MAU(Monthly Active Users)1億4000万人。LINEの顧客基盤は、国内月間アクティブユーザー数8200万人、海外月間アクティブユーザー数1億400万人です。
これによってまず期待できるのは、8200万人のLINEユーザーと、Zホールディングス傘下のサービスであるヤフーショッピング、PayPayモール、PayPayフリマ、ヤフオク!、ZOZOTOWN、ヤフートラベル、一休.comなどが連携することでの集客効果や、LINE公式アカウントを使っての、ほかのサービスのユーザー増などです。
両社は、サービスをシームレスに連携させ、相互送客によるユーザー基盤の最大化を図ると述べています。また近年、両社ともペイメントや金融事業に積極的に進出しています。共同のシステム開発やフィンテック事業の強化、AI基盤開発のさらなる強化、加速も見込んでいます。
新会社が行うM&Aがカギ?
両社は「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーとなることを目指す」としています。Google、Apple、Facebook、Amazonのいわゆる「GAFA(ガーファ)に勝てるのか、という視点での報道も多いようです。
GAFAのみならず、中国のBaidu、Alibaba、Tencentの「BAT(バット)」、日本の楽天も、目指しているのは「経済圏」です。それも、プラットフォーム、Eコマース、キャッシュレスなど、「なんでもできる経済圏」であるほうが望ましいと言えます。
例えば、企業がネット広告を出したいとき、ユーザーの属性がよりはっきりしているプラットフォームのほうが魅力的で、ユーザーの年齢、性別、嗜好、さらには金融データまでが紐づけばデータとして完璧です。ですから各社は金融やペイメントに進出し、ユーザーをできるだけ多く獲得したい、ということになります。
それぞれの「経済圏」は、統合しながら大きくなっていくしかありません。私たちがGAFAのサービスを使うのが当たり前になっていることからも分かるように、もはや国を超えた「仮想的な経済圏」での戦いとなっているのです。
19年11月21日現在のZホールディングスの時価総額は約1兆8300億円、LINEが約1兆2400億円。合計して3兆円を超えますが、米国株ランキングによれば、時価総額1位のApple、2位のMicrosoftはともに100兆円を超え、3位のAmazonが100兆円の手前、4位のAlibaba、5位のFacebookが50兆円前後。このように、規模でかなりの差があありますが、打つ手はあります。
それは、Zホールディングスの親会社のソフトバンクが行ってきているように、株式交換によってM&A(合併・買収)を行い、規模を拡大していく方法です。「経済圏」は統合しながら大きくなっていくしかないことを考えても、新会社の今後の戦略の中に、M&Aは欠かせないはずです。
ただそれが迅速に行えるかについては、私には少し疑問もあります。それが、今回の「対等な経営統合」です。