2019年6月にふるさと納税の制度が変わり、お礼の品のラインアップにも変化が生まれている。「地場産品」の基準が明確になり、「調達価格が寄付金額の3割以下」に抑えられたことで、取り扱い自体がなくなったり、同じ品物でも内容量が減ったり、寄付金額が上がったりしている。その一方で、自治体同士の連携や体験ものの充実など、新たなトレンドも出始めているので、要チェックだ。
「地場産品」が厳格化、広域連携の共通返礼品が増加中
以前は地元とは関係のない家電製品やWebポイント、姉妹都市の特産品なども数多く存在していたが、法改正で「その地域の地場産品」に限定された。具体的には、地域内で生産・収獲された農産物や海産物、製造・加工された製品などが対象で、地域内で販売されていても他地域で生産・製造されたものはNG。これにより、他地域の特産品が次々と姿を消した。
ただし、必ずしも地域内に特産品がある自治体ばかりではないので、「地域」は「その自治体内」には限定されず、近隣地域を含めた広域とされた。そのため、自治体同士が広域的に連携し、共同でお礼の品を開発・提供するケースが増えている。
例えば、高知県で以前から提供しているのが、安芸市、須崎市、土佐清水市など県内11市町の職員が「全国のみなさんにぜひおすすめしたい」と太鼓判を押すお礼の品を集めた、ぜいたくな定期便セットだ。
安芸市の「洋菓子倶楽部のお菓子セットA」や、黒潮町の「熟成黒潮のツナ缶 カツオの旨みを生かした缶詰8缶セット」など、それぞれの市町産の農産物や魚介類、肉、加工品などを各月に配送。クレジットカード限定。
ほかにも、10月には京都府内の3市町(京丹波町、亀岡市、南丹市)それぞれの素材を生かした「京丹波地域にこだわったおせち料理セット」が新登場。今後もこうした動きは各地で広がるとみられる。
復活した真珠製品や特注のオーダー品が人気
姿を消す品がある一方で、これまで「宝飾品」「高額品」として自粛されてきた真珠製品が、制度趣旨に合った「地場産品」として晴れて復活した。三重県の鳥羽市や志摩市では地元産の真珠の取り扱いを19年秋に再開し、人気を集めている。
「世界初の真珠養殖の地」鳥羽市の地元産あこや真珠を使ったアクセサリーセット。9月に取り扱いを再開し、1万〜30万円で計100点以上をラインアップ。
また、大量生産ではなく、自分サイズや名前入りで特注する「世界にひとつだけのオーダー品」も人気だ。例えば、山形県南陽市では、紳士靴のカスタムオーダーを用意。現地に行かなくても、全国100店以上の特約店でサイズ確認やサンプルの試し履きができ、デザイン・素材選びも可能となっている。
「謹製誂靴」オリジナルカスタムメイドシューズシステムにより、全国各地の特約専門店でビジネスシューズ1足の注文が可能。職人の確かな技術による手作りで仕上げて配送。
ほかにも、「お誂え浴衣(岩手県一関市)」や「オーダーメイド枕(愛知県西尾市)」、「名前入りのゴルフボール(岐阜県関市)」など、魅力的なものがたくさんある。
「モノ」から「コト」へシフト、プレミアムな体験が続々登場
近年、現地を訪れる観光・体験型のお礼の品が増え、「モノ」から「コト」へとシフトしつつある。体験型の場合、現地を訪れて地域住民と直接触れ合うことで、寄付者と地域とのつながりが生まれる。人口減少や高齢化に悩む自治体にとって、かかわりを持つ「交流人口」を増やすことは、地域消費拡大や活性化につながることから、力を入れている。
特定の施設の宿泊券や入場券などのほか、地域内の宿泊や食事などに使える旅行券、アクティビティの体験チケットなど、その形態はさまざまだ。スマートフォンで簡単に使える「電子感謝券」を採用する自治体も増えている。
ただ単に観光するだけでなく、ふるさと納税ならではの限定要素を加えたお礼の品も登場している。例えば、石川県穴水町では、のと鉄道の車両を実際に運転できるという趣味性の高いプレミアムな体験チケットを用意。鉄道ファンや子どもたちに人気だ。
「のと鉄道の列車を使用し、片道約200メートルの線路を実走する運転手体験2名分。約30分。ランチ・白手袋付き(オリジナルプレゼント付き)。体験可能期間は4~11月の指定日。
岐阜県飛騨市では、「地元の名物おっちゃんがまち歩きで町を紹介する」というユニークなお礼の品を展開。ありきたりの観光旅行では味わえないレアな体験ができそうだ。
飛騨古川・飛騨神岡エリアを、名物ガイドと一緒にまち歩きができる、おっちゃんレンタルチケット2.5時間。最大4名。実施時期は4~6月、9~11月の春・秋限定。
今年はふるさと納税で「特別な体験」にトライしてみては?