10月の生産は市場予想を大きく下回る減産

鉱工業生産
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経済産業省が11月29日に公表した鉱工業指数によると、19年10月の鉱工業生産指数は前月比▲4.2%(9月:同1.7%)と2ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲2.1%、当社予想は同▲2.7%)を大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比▲4.3%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比1.2%と4ヵ月ぶりに上昇した。

鉱工業生産
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10月の生産を業種別に見ると、グローバルなITサイクルの底入れを背景に在庫調整が進んでいる電子部品・デバイスが前月比0.9%の上昇となったが、輸出の低迷や台風19号による工場の操業停止の影響で自動車が前月比▲7.8%の大幅減産となったほか、9月に高い伸びとなった生産用機械(前月比▲6.4%)、汎用・業務用機械(前月比▲13.0%)がその反動もあり大幅減産となった。

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は19年7-9月期の前期比2.9%の後、10月は前月比▲11.7%となった。一方、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は19年7-9月期の前期比▲0.4%の後、10月は前月比▲1.8%となった。

19年7-9月期のGDP統計の設備投資は前期比0.9%となった。国内需要の底堅さを背景に非製造業は増加を続けているが、輸出の減少に伴う企業収益の悪化を受けて製造業は減少傾向が鮮明となっている。現時点では10-12月期の設備投資は3四半期ぶりに減少すると予想している。

消費財出荷指数は19年7-9月期の前期比▲0.7%の後、10月は前月比▲4.4%の大幅減産となった。耐久消費財(前月比▲7.1%)、非耐久消費財(前月比▲4.6%)ともに大きく落ち込んだ。

鉱工業生産
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19年7-9月期のGDP統計の民間消費は前期比0.4%の増加となったが、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が含まれていることを考慮すれば、低い伸びにとどまった。駆け込み需要が前回の消費増税前に比べて小さかったことに加えて、もともとの消費の基調の弱さがその背景にある。

10月の消費関連指標は、キャッシュレス決済に対するポイント還元の対象となっているコンビニエンスストアの売上高は前年比で増加したが、それ以外のほとんどの業態は、駆け込み需要の反動、消費税率引き上げによる実質購買力の低下、台風19号の影響が加わったことから、大幅に落ち込んだ。11月は台風19号、駆け込み需要の反動の影響が和らぐことから持ち直すことが見込まれるが、物価上昇に伴う実質購買力低下の影響は残ることから消費の基調が強まることはないだろう。現時点では10-12月期の民間消費は前期比▲2%程度のマイナスを予想している。

10-12月期の減産幅は前回の消費増税後を上回る公算

製造工業生産予測指数は、19年11月が前月比▲1.5%、12月が同1.1%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(10月)、予測修正率(11月)はそれぞれ▲1.5%、▲1.8%であった。これまでは、当月の生産(速報値)が前月比でマイナスとなった場合には、翌月の予測指数が前月比プラスとなることが多かったが、10月の生産が大きく落ち込んだ後にもかかわらず翌月も減産計画となった。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

10月の大幅減産は駆け込み需要の反動と台風19号による被災が重なったことで大きく下押しされているため、過度に悲観する必要はないが、その影響が緩和される11月が減産計画となっていることがより深刻だ。

19年10月の生産指数を11、12月の予測指数で先延ばしすると、19年10-12月期は前期比▲4.1%となる。10-12月期の減産幅が7-9月期の前期比▲0.5%を上回ることは確実で、前回の消費増税後(14年4-6月期の前期比▲2.9%)以上の大幅減産となる可能性が高くなった。

前回の消費増税後の減産は増税前の駆け込み需要の反動による部分が大きかったが、今回は駆け込み需要による増産がなかったにもかかわらず増税後に大きく落ち込んでいる。生産の基調は前回の消費増税後よりかなり弱い。

これまでは輸出、生産の低迷を国内需要の底堅さがカバーしてきたが、消費増税後は個人消費を中心に国内需要が弱い動きとなることは避けられない。製造業の悪化が鮮明となる中で非製造業が弱い動きとなれば、景気後退のリスクは大きく高まるだろう。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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