2四半期連続の減益
財務省が12月2日に公表した法人企業統計によると、19年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比▲5.3%(4-6月期:同▲12.0%)と2四半期連続の減少となった。非製造業が前年比0.5%(4-6月期:同▲1.5%)と2四半期ぶりに増加したが、製造業が前年比▲15.1%(4-6月期:同▲27.9%)と5四半期連続で減少した。
製造業は、輸出の低迷を主因として売上高が前年比▲1.5%(4-6月期:同▲1.2%)と2四半期連続で減少する中、売上高経常利益率が18年7-9月期の6.6%から5.7%へと悪化したことが収益の押し下げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費、金融費用、減価償却費、変動費ともに利益率の悪化要因となった。原油価格下落の影響で変動費は前年比▲1.3%の減少となったが、売上高の減少幅がそれを上回ったため、売上高変動比率は5四半期連続で悪化した。
非製造業は、売上高が前年比▲3.1%(7-9月期:同1.0%)と12四半期ぶりの減少となったが、売上高経常利益率が18年7-9月期の4.5%から4.7%へと改善したため、かろうじて増益となった。円高、原油安の影響で変動費が前年比▲3.4%と売上高以上に減少したため、売上高変動比率が改善した。
企業収益は消費増税後に一段と悪化へ
季節調整済の経常利益は前期比▲1.1%(4-6月期:同▲6.3%)と2四半期連続で減少した。製造業(4-6月期:前期比▲0.1%→7-9月期:同▲0.8%)、非製造業(4-6月期:前期比▲8.9%→7-9月期:同▲1.3%)ともに2四半期連続で減少した。
経常利益(季節調整値)は20.3兆円となり、過去最高となった18年4-6月期の23.8兆円と比べると15%程度低い水準となった。国内需要の底堅さを反映し製造業に比べて強い動きとなっていた非製造業の経常利益だが、直近2四半期で約10%落ち込んだ。
19年7-9月期は消費増税前の駆け込み需要が一定程度発生したにもかかわらず、企業収益の悪化に歯止めがかからなかった。10-12月期は駆け込み需要の反動と税率引き上げに伴う実質所得の低下から国内需要が弱い動きとなることが見込まれる。低迷が続く輸出はIT関連の持ち直しなど一部で明るい材料があるものの、収益を大きく押し上げるには力不足だろう。企業収益は消費増税後に一段と悪化する可能性が高い。
設備投資は堅調を維持も、先行きは期待できず
設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比7.1%と12四半期連続で増加し、4-6月期の同1.9%から伸びが高まった。非製造業が前年比7.6%(4-6月期:同7.0%)と12四半期連続で増加したことに加え、製造業が前年比6.4%(4-6月期:同▲6.9%)と2四半期ぶりに増加した。
季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比▲0.8%(4-6月期:同2.9%)と2四半期ぶりに減少した。製造業は前期比1.6%(4-6月期:同▲3.6%)と3四半ぶりに増加したが、非製造業が前期比▲2.0%%(4-6月期:同6.5%)と4四半期ぶりに減少した。
7-9月期の設備投資は前期比で小幅なマイナスとなったが、人手不足対応の省力化投資、都市再開発関連やインバウンド対応の建設投資などを中心に均してみれば堅調を維持している。
ただし、これまでの設備投資の回復はあくまでも企業収益の大幅な増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景としたものである。企業収益の悪化によってキャッシュフローの拡大は頭打ちとなっており、消費増税後には水準を切り下げる可能性が高い。景気循環に左右されにくい研究開発投資、省力化投資などが下支えすることは見込まれるものの、企業収益の悪化に遅れる形で設備投資が減速することは避けられないだろう。
なお、7-9月期の設備投資は簡易課税制度を採用する中小企業の駆け込み需要により実勢よりも強めに出ている可能性があることには留意が必要だ。
7-9月期・GDP2次速報は上方修正を予想
本日の法人企業統計の結果等を受けて、12/9公表予定の19年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.2%(前期比年率0.9%)となり、1次速報の前期比0.1%(前期比年率0.2%)から上方修正されると予測する。
設備投資は前期比0.9%から同1.8%へと上方修正されるだろう。設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比7.7%(4-6月期:同▲1.7%)と2四半期ぶりの増加となった。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ前年比で二桁の増加となった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比▲3.3%(4-6月期:同▲13.4%)と5四半期連続で減少したが、減少幅は前期から大きく縮小した。本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。
また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度▲0.3%から変わらないだろう。その他の需要項目では、公的固定資本形成は9月の建設総合統計の結果が反映され、前期比0.8%から同1.1%へ上方修正されると予想する。
なお、12/9の19年7-9月期GDP2次速報では、18年度の年次推計値が併せて公表され、四半期の計数は19年1-3月期までが速報値から年次推計値に改定される。19年7-9月期の成長率は、法人企業統計を中心とした基礎統計の追加に加え、18年度の年次推計に伴う遡及改定の影響を受けるため、不確定要素が多いことを念頭に置いておく必要がある。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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