ふるさと納税というと、お礼の品ばかりが注目されがちだが、じつはそれだけではない。最近では社会貢献の有効な手段として認知され、活用されている。災害時の被災地支援や地域の抱える課題の解決に向けたクラウドファンディング型など、さまざまな形で地域を応援する人が増えているのだ。
災害発生直後から、ふるさと納税による被災地への寄付が急増
日本では毎年のように地震や台風などの自然災害に見舞われ、各地で被害が出るが、発災直後から被災自治体へのふるさと納税が急増する現象が起きている。
例えば、2019年7月の台風15号では千葉県を中心とする関東各県に大きな被害が出たが、その直後からふるさと納税による寄付が各自治体に寄せられ、「ふるさとチョイス」調べによると、2万6147件、総額約4億320万円(※19年12月9日時点)となった。さらに、台風19号・21号では3万6836件、約7億1290万円にも上った。これらはいずれも「お礼の品はもらえなくても、少しでも被災地の役に立ちたい」という寄付者の善意の表れだ。
今年は台風が相次ぎ、河川氾濫や家屋損壊など、各地に大きな爪痕を残した。特に、収穫前の農産物や畜産物、海産物などに深刻な被害が出た。
「ふるさとチョイス」では、14年から被災自治体に迅速にお金を届ける方法として、『災害時緊急寄付』の申し込みフォームの無償提供を始め、16年の熊本地震の際には、寄付対応まで手が回らない被災自治体に代わって、別の自治体が寄付を受け付ける「代理寄付受付」もスタートした。その結果、代理寄付を含め、累計約19億円以上の寄付金が熊本県内に届けられ、復興に役立てられたという。
首里城の火災では、わずか2日で寄付金が1億円を突破!
一方、クラウドファンディング型のふるさと納税も注目されている。沖縄県の首里城が19年10月に火災で全焼したのは記憶に新しいが、翌日には、ふるさと納税を活用したガバメントクラウドファンディング「沖縄のシンボル『首里城』再建支援プロジェクト」がスタートした。
ガバメントクラウドファンディング(GCF)とは、ネット上で目標を掲げて資金を広く募る「クラウドファンディング」の自治体版で、「ふるさとチョイス」内で13年から始まった。各地域では過疎化や産業衰退、文化財の老朽化など、それぞれ課題を抱えており、解決したくても予算が確保できないケースも少なくない。
そこで、自治体が目標額や使い道を明確化してプロジェクトを立ち上げ、趣旨や目的に賛同した人たちから寄付を募る。これが課題解決のための資金調達の有効な手段となりつつあるのだ。
首里城のプロジェクトでは、沖縄県那覇市がプロジェクトオーナーとなり、11月1日に「首里城の早期の再建(国または県が実施)に向け、代理で寄付を集め、復旧・復興に取り組む沖縄県などに納付する」として、目標額1億円でスタートした。すると、わずか2日余りで当初目標額を達成。その後も継続され、現在約7億6000万円(2019年12月19日時点)と増え続けている。
◆沖縄県那覇市
世界遺産の首里城跡に復元された首里城が全焼。県内外より、その修復再建に向けた励ましや支援の申し出が多数寄せられている。
寄付を通して、さまざまな地域課題解決や社会貢献に参加できる!
GCFのプロジェクト数は5年前の6件から今年は217件となり、飛躍的に増えているが、目的や目標額はさまざまだ。
◆東京都町田市
経済的に厳しいひとり親家庭に、2週間に1回、お弁当を配達。目標額は200万円で、お礼の品として障がい者施設で作られた乾物やお菓子などが選べる。
◆千葉県南房総市
2度の暴風・大雨被害で育成アワビが全滅。千葉ブランド水産物「房州黒アワビ」を復活させ、未来に残す。目標額は300万円で、お礼の品を海産物などから選べる。
このほか、お礼の品を「自分のため」ではなく、「誰かのため」に選ぶ「思いやり型返礼品」で社会貢献につなげる選択肢もある。群馬県前橋市や岩手県北上市などの自治体と株式会社トラストバンクは、これを広げるプロジェクト「きふと、」を展開。以下のようなお礼の品を通じて、社会的支援を促している。
・障がい者授産施設で作られた品を受け取る「支援型」
・困っている人や施設に商品やサービスを贈る「寄贈型」
・地域で活躍する団体の協賛金に回す「協賛型」
・高齢者に代わって雪かきなどの作業をする「参加型」
・災害時に事業者を直接支援する「災害復旧支援型」
◆千葉県南房総市
お礼の品を発送せず、品代相当分を事業者・生産者への災害復旧支援金に充てる。被災により通常どおりお礼の品を出すことが難しい事業者を直接支援できる。
ふるさと納税でする社会貢献――今年はいつもと少し違った視点で、お礼の品や寄付先を選んでみるのもいいだろう。