令和を迎えた2019年も暮れようとしています。化学の世界における2019年の節目は、ロシアの化学者であるメンデレーエフが周期表を発表してから150周年を迎えたことです。2019年時点で知られている元素は全部で118種類、各元素の名前には必ず由来があります。それぞれに科学者の名前や地名、神話に出てくる神々の名前などさまざまなものから付けられているのが特徴です。

周期表自体が一つのアートにも見えてくるのではないでしょうか。新しい元素の命名においては、国際団体IUPAC(国際純正・応用化学連合)が元素を発見した者に命名権を付与します。提案があった名前をIUPACが審査し正式に決定するというプロセスです。例えば原子番号101であるメンデレビウムは、メンデレーエフが由来となっています。元素名の中でも特にストーリーを感じるのが、神話に由来するものです。

22番のチタン(Ti)は、1795年にドイツの科学者クラプロートによって発見され、ギリシア神話の巨神の一族である「ティターン」にちなんで命名されました。クラプロートはチタンの前に92番(U)ウランも命名しています。神話のティターン族は、天空の神であるウーラノス(ウラン)と大地の神であるガイアとの間に生まれる12の神々の総称です。

チタンに由来を持つ言葉は元素のほかにもたくさんあります。土星の衛星Titan(タイタン)、タイタニック号などがその一つです。23番のバナジウム(V)は北欧神話における愛と美の女神であるバナジスから41番のニオブ(Nb)はギリシア神話のタンタロスの娘であるニオベ―から来ています。ほかにも73番タンタル(Ta)は主神ゼウスの子であるタンタロスから77番イリジウム(Ir)は虹の女神イリスが由来です。

このようにギリシア神話が元になっているものが多いことに気づかされるのではないでしょうか。

人名に由来するものも多い

チタン,巨人
(画像=isak55/Shutterstock.com)

神話だけでなく人名に由来するものも多い傾向です。99番のアインスタイニウムは、相対性理論を提唱したドイツのアインシュタインにちなんで名付けられました。人工元素の多くは、著名な科学者の名前に由来しています。96番のキュリウム(Cm)は、放射性物質を発見したキュリー夫妻、100番のフェルミウム(Fm)は、核物理学や量子力学に貢献したフェルミが由来です。

ほかにも番号を追っていくと以下のように名前が由来となっている元素が多いことが分かります。

・102番のノーベリウム(No)
ダイナマイトを発明、言わずと知られたノーベル賞の創設者となったアルフレッド・ノーベル

・103番(Lr)ローレンシウム
サイクロトロンを発明したローレンス

・106番シーホージウム(Sg)
10種類の人工元素を合成したアメリカの物理学者シーボーグ

・107番ボーリウム(Bh)
量子力学の確立に貢献したデンマークの物理学者ニールス・ボーア

・111番レントゲニウム(Rg)
X線を発見したドイツの物理学者レントゲン

・112番コペルニシウム(Cn)
地動説を提唱したポーランドの天文学者コペルニクス

ニホニウムは日本の快挙

地名にちなんだものも多くあり近年有名になったのが国としての日本から名前をとっている113番のニホニウム(Nh)です。理化学研究所仁科加速器科学研究センター、超重元素研究グループの森田浩介グループディレクターを中心とする研究グループが提案していた113番元素の元素名と元素記号が2016年11月にIUPACに正式に認められました。

森田グループは、理研の重イオン加速器施設で重イオン線形加速器を用い2003年9月から新元素の合成に挑戦。2004年7月に初めて原子番号113の元素合成に成功しました。それまでは欧米諸国以外の研究グループに命名権が与えられたことすらありません。「元素周期表に日本発の命名をしたい」という日本の科学者の夢が実現した、まさに快挙といえる成果になりました。

元素名の由来にはこのほかラテン語で地球を示す「テラ」にちなんだ52番テルル(Te)など天体名に由来するものもあります。また天然のソーダ灰のラテン語であるナトロンから来ているおなじみのナトリウム(Na)など鉱物名や物質名が採用されているケースもあるのです。「スイヘーリーベボクノフネ(H He Li Be B C N O F Ne)」などと周期表を暗記した記憶もあるかもしれません。

単なる語呂合わせの暗記よりも名前の由来から入るほうがしっかりと知識が定着するのではないでしょうか。元素周期表150年の節目にそんなことを回顧してみるのもよいでしょう。(提供:JPRIME


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