2019年のノーベル化学賞を旭化成の吉野彰・名誉フェローらが受賞しました。リチウムイオン電池を開発した業績が評価されての受賞でした。リチウムイオン電池は既にスマートフォンやデジタルカメラなど幅広い製品に使われていますが、今後、2020年代の10年をみても、ビジネスやファッションなどさまざまな分野で存在感を示しそうです。
スウェーデン王立科学アカデミーは2019年のノーベル化学賞をリチウムイオン電池の開発で功績のあった吉野氏と米テキサス大学オースティン校のジョン・グッドイナフ教授、米ニューヨーク州立大ビンガムトン校のスタンリー・ウィッティンガム教授の3氏に贈りました。軽量で再充電が可能で強力なリチウムイオン電池は、通信から仕事や研究、余暇の楽しみまで、さまざまな分野の携帯用電子機器の動力源として利用されているほか、太陽光や風力など再生可能エネルギーを蓄えることで化石燃料に頼らない社会の実現に貢献しています。
リチウムイオン電池の基礎は1970年代に誕生
リチウムイオン電池の基礎ができたのは1970年代。ウィッティンガム氏が超電導の研究に着手するなかで、非常にエネルギーが豊富な物質を発見。これをもとにリチウムを電極に使った二次電池を生み出しました。ただ金属のリチウムは反応性が高く電池は爆発しやすいなどの欠点を抱えていました。
グッドイナフ氏は正極に金属硫化物ではなく金属酸化物を使うことで、より大きな力を生み出せるのではないかと予測。リチウムイオンを含んだ酸化コバルトを使うことで、出力を4ボルトにまで高めることに成功しました。
これらを基にして、吉野氏が1985年に初めて商用化にも利用可能なリチウムイオン電池の原形を生み出しました。その後は、ソニーが世界で初めてリチウムイオン電池の商用化を行うなど、今ではさまざまな電子機器の動力源として利用されています。
2022年には7.4兆円市場に
調査会社の富士経済の予測によれば、2022年のリチウムイオン二次電池の世界市場は2017年比で2.3倍の7兆3,914億円規模となる見通しです。電気自動車やESS(電力貯蔵システム)、UPS(無停電電源装置)などの分野で需要の増加が見込まれるほか、リチウムイオン二次電池への買い替えも進むとみているようです。
ビジネス分野でリチウムイオン電池の利用が増えそうなのはやはり電気自動車でしょうか。欧州ではフランスや英国などが将来的に環境への負荷の大きいガソリン車について販売を禁止する方針を打ち出しており、今後ますます電気自動車の存在感は高まりそうです。10月に東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「東京モーターショー」でも各社が電気自動車を出品しました。
小型軽量ながらたくさんの電力を蓄えることができるという意味では、ウェアラブル機器の電源としても活用が見込まれそうです。ガートナーの報告書によれば、2020年の一般ユーザーのウェアラブル端末への消費額は全世界で520億ドル規模に達する見通しです。これは前年比27%の増加となります。スマートウォッチへの消費額は34%の増加、センサーを内蔵したり他の電子機器と連携したりできるスマート衣料への支出は52%の増加が見込まれるそうです。
ファッションとは少し違うかもしれませんが、ここ数年で夏場の工事現場などでよく見かけるようになったのはファン付きの作業服でしょうか。作業服の腰のあたりにバッテリーで動くファンが付いているタイプなどがあり熱中症対策として注目を集めていますが、バッテリーにはリチウムイオン電池が使われていることが多いようです。
再生可能エネルギーの利用が拡大して化石燃料依存からの脱却が進むなか、リチウムイオン電池が活躍する分野はますます広がりそうです。(提供:JPRIME)
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