2019年も残すところあとわずかとなった。本特集では新たな年のはじまりを前に、金融業界の各テーマごとに、この一年を振り返っていきたい。
第2回のテーマは「年末年始に読みたい金融本」。エコノミストの崔真淑さんに、この一年を振り返るためにZUU online読者が読んでおくべき金融・ビジネス書5冊を選定理由とともに寄稿いただいた内容をお届けする。
「不適切会計」と「粉飾決算」の違いは?
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企業不正を巡る手法や、地検特捜部が実際にどのような捜査を行うのかに興味がある人におすすめです。その判決や逮捕は適切なのか、大企業には甘いのではなど、上場企業を巡る不祥事のリアルな話が詰まっています。特に日産ゴーン事件、郵便不正事件と直近で話題になった事件で何が起き、そして地検特捜部の課題に対する解説は秀逸です。
近年、上場企業で会計を巡る不祥事が相次いでいます。メディアでは、不適切会計や粉飾決算という言葉で表現されることが多いですが、この2つの違いは、悪意をもって会計不正を行ったかどうかを立証できるかであり、後者は立証ができた場合に使われる言葉です。そこで、立証のために出てくるのが、地検特捜部といわれる組織です。
著者は、会計士として地検特捜部と実際に戦い、有罪判決を受けています。その経験がある著者だからこそ、会計不正がどのように行われることがあり、地検特捜部ににらまれたらどうすべきなのか……。
今、日本では上場企業へのガバナンス改革(経営者が株主利益に資する経営をしているか、私的利益のために行動していないかを監視するために制度)の真っ最中です。今後も、企業不祥事や経営者不祥事は何かのタイミングで露見しやすい環境が続くと予想されます。投資家や経理担当者、経営企画、経営者、経済事件に関心のある人に読んでほしい一冊です。
経済メディアの「通説」をひも解く
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株式を巡っては、配当、自社株買い、公募増資、株式分割など、さまざまな株主還元策や資金調達が存在します。その際、経済メディアでは、それを行った企業側の意思決定の背景や株価の反応を、事実と仮説を交えて報道されることが多いようです。例えば、増配で株価上昇、自社株買いは経営者が株価割安と発するためのサイン、公募増資は1株当たり利益の希薄化懸念で株価下落……など。でも、それって本当なのでしょうか?
じつは、これらの通説や仮説は間違っているケースや、実際には株式と株価を巡る動きについてどういうメカニズムが働いているのかが学術の視点でしっかりと解説されています。また、日本の上場企業の大規模データを用いての検証も行っており、グラフを眺めるだけでも、非常に学びが多いでしょう。
株式投資を行っている人や、経営者が株式を巡る意思決定で困った際に読んでほしい一冊です。特に、日々の経済メディアの通説や報道に違和感を感じることがある人には、絶対に読んでほしいです。これを読めば、株式を巡る通説をうのみにするのではなく、どう考えるべきかの知識も手に入るでしょう。株式の辞書代わりに、一家に一冊は置いてほしい本です。
「データ分析」の根幹を知る
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「仮説ってどう立てるの?」「データ分析がうまくいかない」、そんな疑問を持っている人に読んでほしいのが本書です。
今年に入って、データ分析やビッグデータ、AIなど、データ分析を巡る話題がさらに増えました。しかし、データがあれば本当になんでも解決してくれるのでしょうか?じつは、そんなことはまったくありません。データがビッグになればなるほど、分析に使えないゴミデータが増えるリスクがあるだけでなく、本当に検証したい結果が見えなくなることがあるからです。