2019年は、国が主導する「働き方改革」によって、これまで以上に労働時間に対して関心が集まった年だった。だが、2020年は、決められた時間内に一生懸命働くこれまでの仕事法では勝ち組になれない可能性があるという。流通・消費部門の証券アナリストとして活躍後、産業再生機構でダイエーやカネボウの再建に携わった経験を持ち、このほど『時間資本主義の時代』(日本経済新聞出版社)を出版したフロンティア・マネジメントの松岡真宏社長に、2020年に向けて、勝ち組になるための時間の使い方について聞いた。

松岡真宏(まつおか・まさひろ)
野村総合研究所、バークレイズ証券会社を経て、1997年にUBS証券に入社し、99年に株式調査部長兼マネージングディレクターに就任。2003年に産業再生機構に入社し、マネージングディレクターに就任。2007年にフロンティア・マネジメントを設立し、代表取締役に就任。

前近代的な前提に立った働き方改革は間違い

2019年金融テーマ振り返り♯6
(画像=GaudiLab / shutterstock.com,ZUU online)

──2019年は「働き方改革」に関心が集まりました。

そうですねぇ。しかし、議論は残念な方向へと進んでしまいました。働き方の本質を論じるのではなく、労働時間の話ばかり。しかも、前近代的な働き方を前提とした議論なので、2020年を迎えるに当たり本当に残念でなりません。

そういったこともあって、今回、『時間資本主義の時代』(日本経済新聞社)を上梓しました。『時間資本主義の到来』の続編です。続編を書いた理由は、1作目を出版したときにはまだ時間資本主義が“到来”したくらいだったのですが、2020年を迎えるに当たり、いよいよ時代そのものが時間資本主義になってきたからです。

近代以降の経済行動は、「貨幣」による価値判断をベースにしてきました。それが、「時間」による価値判断をベースに行われるようになってきた。それを「時間資本主義」と名付け、まさにその時代となったと考えたからです。

もう一つの理由は、前作で言いたかったことが正しく理解されていないことがありました。簡単に言えば、「すき間時間」をうまく使って「固まり時間」を作り出し、それを有効に活用してほしいというのが趣旨だったのです。

それが2019年は、すきま時間ばかりが注目され、いかにすきま時間を使うかという話になってしまっていると感じたのです。そうではないんだよ、固まり時間こそが大事なんだよということが言いたかったのです。

──確かに、「働き方改革」でも労働時間の改善が議論になり、すきま時間をどう過ごすべきなのかといった点に関心が集まっていますよね。