企業と消費者の関係の変化に伴い、CSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)などに注目が集まっている。これに伴い社会に与える影響や責任を踏まえ、サステイナブル(持続可能)な経営法を模索する企業が、近年急増している。

フィランソロピー(慈善活動)の概念は、こうした風潮と調和する経営戦略の一環として、「フィランソロピック・ビジネス」という、新たなビジネスモデルを確立しつつある。

誰でもフィランソロピストになれる

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(画像=ITTIGallery/shutterstock.com, ZUU online)

古代ギリシャ語で、「人類への愛」を意味するフィランソロピー。『縛られたプロメテウス』で知られる悲劇作家アイスキュロスが考案者だといわれている。

ボランティア活動や社会貢献を通し、地球上の全ての人々の生活を、より実りの多い幸福なものへと向上させるという概念だ。

近年は、フィランソロピスト=資力を有する富裕層や大企業、というイメージが先行しているが、社会的地位や影響力、所得などは、フィランソロピストの条件ではない。「全世界のコミュニティーの向上を目指す」という志があれば、誰でもフィランソロピストになれる。

チャリティーとの違い

慈善活動というとチャリティーの方が広範囲に浸透しているが、同じ社会貢献活動でも、両者のアプローチは根本的に異なる。 慈善団体のためのリーダーシップ協会、財団評議会(Council on Foundations)の元会長であるスティーブ・ガンダーソン氏は、その違いを以下のように定義している。

「チャリティーが救助と救援に焦点を当てた短期的な解決策であるのに対し、フィランソロピーは長期的かつ戦略的な再建策に焦点を当てている」

例えば、チャリティーは災害や難病、貧困などが原因で苦しんでいる人々に救済の手を差し伸べることを目的とし、フィランソロピーはそれらの人々が永続的に苦難から抜けだせるよう、その原因自体に立ち向かうことを目的とする。

そうした観点から、チャリティーは「ギビング(寄与)」に根差すもの、フィランソロピーは「ドゥーイング(行動)」に根差すものといえるのではないだろうか。

消費者の声に応えるフィランソロピック・ビジネス(慈善的事業)

近年、多くの消費者の間で、利益を追求している企業より、何らかの形で社会やコミュニティーに貢献している企業の商品やサービスを選択する傾向が見られる。

慈善の精神を経営に取り入れるフィランソロピック・ビジネスが、企業や投資家間で急速に広まっている理由は、こうした消費者の意識の変化に根差すところが大きい。

ひと昔前のCSRというと、アートやイベントの展示会開催など、社会的責任の遂行より、社会への還元に焦点を置いたものが多かった。しかし、近年は産業や国を問わず、さまざまな企業が、広範囲な領域における社会的責任の追求を課題としている。

国際企業が市場の意識を変える?