【個人とお金の関係】クラウドファンディングでは個人の価値がお金で数値化される

新たな資金調達といえば、クラウドファンディングも広がっています。ネットなどを通じて企業や個人が不特定多数から資金調達する仕組みですが、従来の手法と決定的に違うのは、「人」が評価の対象になる点です。

IPOにしろ、ベンチャーキャピタルによる出資にしろ、従来の資金調達で評価されるのは事業計画でした。そのビジネスが儲かると判断されれば、お金を集めることができたのです。

しかしクラウドファンディングでいくら集められるかは、そのプロジェクトを立ち上げようとしている個人やメンバーのパーソナリティに大きく左右されます。

クラウドファンディングに出資する人は、金銭的な見返りを重視せず、「この人を応援したい」という純粋な気持ちから資金提供するケースが少なくありません。

よって、そう思わせるだけの人柄や情熱を持った人物が、より多くのお金を集める。つまり、個人の価値がお金で数値化されるということです。

これはクラウドファンディングに限った話ではありません。キャッシュレス化が進み、スマホを介して個人のお金の使い方や貸し借りの履歴がすベて把握されれば、一般の人も格付けされるようになります。

すでにキャッシュレス化が進んだ中国では、個人のあらゆる行動がAIに追跡され、「あなたは乗客としてふさわしくない」と判断された人が飛行機の搭乗を拒否されるケースが続出しています。

「この人は価値が低い」と評価されれば、消費行動まで制限されてしまう。そんな「個人が値踏みされる時代」が迫っています。

『THE21』2019年6月号

加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家
1969年、宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BPに記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行なう。著書に『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)など。(『THE21オンライン』2019年11月22日 公開)

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