わらしべ長者的キャリアの極意 3.食わず嫌いせず、何でも引き受けよ

最後のポイントは、「頼まれた仕事は、まずは全部引き受けること」。

非常にシンプルですが、とても大事なポイントです。

口コミであなたの評判が広がれば、仕事を頼まれる機会は自ずと増えていきます。

「やってみないか」「やってくれないか」と言われた仕事は、損得勘定を考える前に、まずは断らずに全部やってみるようにしましょう。私は、そうしてきました。

食わず嫌いをせずに、何でも引き受けているとどうなるか。

「あの人は、頼めば引き受けてくれる」という評判がまた広がり、さらに頼まれやすくなります。

誰しも経験があるでしょうが、「あの人、引き受けてくれるかなあ」「渋い顔をされたりしないだろうか」などと、心配になる相手には頼みごとをしづらいものです。

これに対して、何を頼んでも「喜んで!」と引き受けてくれる相手には頼みやすいもの。当然ですね。

ですから、最初はできるだけ「頼みやすい人」と評価されるよう、頼まれるハードル自体を普段から下げていくことをおすすめします。

私の経験上、何でも引き受けていると、さらに色々なことを頼まれるようになります。

すると、よりいっそう、多様な経験を蓄積していくことができるようになる。色々なボールを貯めることができるようになる。

現場に触れまくることによって、仕事のクオリティはますます上がっていく……。

先に話した「インプットとアウトプットのサイクル」が、自分でも気づかないうちに「高速化」していくこと、間違いありません。

もちろん、それを続けていると、パンクするまで引き受けることになります。それでも引き受けていると、生産性を高めないと続かないので、どんどん仕事の質が上がっていきます。

それでも引き受けていると本当にパンクするので、そのときはじめて、仕事を取捨選択していけばよいのです。その頃には、その判断がつくくらいにはクオリティが上がっています。

以上、「わらしべ長者的キャリア」の説明をしてきました。

「やりたいこと」や目標、志はあれば素晴らしい。

けれども、なくたって大丈夫。

そのかわり、足元の仕事を120%の力でやる。

これが、私なりのキャリア論のスタート地点です。

目の前の仕事を徹底的にやれば、リアルな経験がどんどん貯まっていく。

経験を貯めていった先で「突き抜ける」ことができるのです。

具体的な努力の仕方としては、「わらしべ長者的キャリア」の3つの極意、「クオリティを徹底的に上げる」「常に人を驚かせる」「食わず嫌いせず、何でも引き受ける」ことを心がけてみてください。

すると、より幅広く、より深い経験を貯めていくことができるはずです。

そして、徹底的に貯めていった経験は、自分では想像もしていなかったキャリアを開いてくれます。私自身、そもそもこうしてキャリア論を語っている自分なんて、想像していませんでした。

やりたいことはなくていい。目標もはっきりしていなくていい。そのせいでモヤモヤすることもあるでしょう。私もさんざんモヤモヤしてきました。

モヤモヤしながらでも全然構いません。目の前の仕事で経験を貯めましょう。まずは、そこからです。

伊藤羊一(いとう・よういち)
ヤフー〔株〕 コーポレートエバンジェリストYahoo! アカデミア学長
〔株〕ウェイウェイ代表取締役。東京大学経済学部卒。グロービス・オリジナル・MBA プログラム(GDBA)修了。1990年に〔株〕日本興業銀行入行、2003年プラス〔株〕に転じ、201年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括。かつてソフトバンクアカデミア(孫正義氏の後継者を見出し、育てる学校)に所属。孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEO コースで年間1位の成績を修めた経験を持つ。2015年4月にヤフー〔株〕に転じ、次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ科目の教壇に立つほか、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務める。著書に、『1分で話せ』『0秒で動け』(ともにSB クリエイティブ)がある。(『THE21オンライン』2019年12月09日 公開)

【関連記事THE21オンラインより】
目の前の仕事に、「徹底的に逃げろ」
「なぜか周りに助けられる人」 が大切にしている働き方
キャリア迷子の現代人に贈る 「自立のススメ」