わらしべ長者的キャリアの極意 2.常に人を驚かせよ
「わらしべ長者的キャリア」の2つ目のポイントは、他人を驚かせること。
仕事のクオリティを上げた上で、今度はそのクオリティによって相手が驚くような「特異点」をつくってアピールしましょう。
自分自身で「これはよくできた」と思う仕事をするだけでなく、他人にインパクトを与えられると、口コミで人に伝わり、そこから次のステップに仕事が広がっていったりするからです。
私が「驚かせること」の重要性を最初に感じたのは、「KDDI∞Labo」というスタートアップ支援プログラムで、プレゼンの稽古をしたときのこと。
このとき頼まれたのは、スタートアップの起業家たちへのプレゼン稽古。私の仕事はデモデー(発表会)1週間前の、講義と個別の稽古です。
ところが、講義と個別の稽古を終えて、デモデーが前々日に迫ったときのことです。彼らに状況を聞いたところ、「全然うまくいかない」と言うのです。みんなそれぞれにプレゼンの練習をして、クオリティを高めようとしてはいるのに、どうにも思うようなプレゼンにならない、と。
そこまで言うなら、と私はデモデーの前日、たしか日曜日だったと思いますが、「本番に向けての練習をやろう」と呼びかけて起業家たちを集めました。
もちろん、事務局からは何も頼まれていません。私の自主的な活動です。
この前日の練習で、彼らのプレゼンのレベルはぐんと上がりました。
その結果、翌日のデモデーは大成功し、プレゼンも好評を得てプログラムを終えることができました。
事務局はびっくりしたようです。講義と個別の稽古を1週間前に頼んだら、デモデーの前日に自主的に練習をしてくれた。しかも、本番を迎えたらプレゼンのレベルが明らかに上がっていたからです。
私からすると、彼らのプレゼンのレベルを上げることが自分の責務なのだから、「なんとかしなくちゃ」と思ってやっただけのこと。
けれども、相手は驚き、喜んでくれたのです。
「100%とか120%の成果を出すだけじゃダメで、200%ぐらい、ドーンと成果を出さなければダメなんだ」
そう気づいた瞬間でした。
これは極端な例かもしれませんが、とにかく、相手が驚くくらいのことをやる。
その意識は今でも私の心に根付いています。
実際、その後、「KDDI∞Labo」でプレゼンのレベルがそれまでより圧倒的に上がったというのが口コミで広がり、他のプログラムでもトレーナーとして呼ばれるようになりました。
「そうか、びっくりすると、人はそのことを誰かに話すんだな」
これも、このとき気づいたことです。
ここまで聞いて、ハードルが高いと思われた方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
基本的には、仕事のクオリティを上げまくっていけば、相手がびっくりするポイントは何かしらできます。そこで突き抜ければいいのです。
つまり、わらしべ長者的キャリアの極意1「クオリティを徹底的に上げよ」を追求していけば、自然と極意2にもつながるのです。
ただ、1つ意識しておかないといけないことがあります。
「自分なりにがんばる」ことだけを考えるのではなく、「他人はどうされると嬉しいか」を考え、きちんと理解することです。
先の例で言えば、事務局は参加者のプレゼンのレベルが上がれば嬉しいわけです。
この意識を持って、どうすれば喜んでもらえるかを徹底的に詰めていく。
すると、相手(ユーザー、顧客など)が喜ぶことがわかってくるので、びっくりするポイント、特異点が自然と生まれます。
そして、仕事のクオリティによって他人を驚かせることは、口コミにつながり、よりいっそうチャンスを増やしてくれる。これがこの経験を通じて私が学んだことです。